「。」
俺は、一人の女の名前を呼んだ。
愛しい愛しい彼女。
今日、人生の一区切りを付けよう。
そう、決めたんだ。
初めまして。そして・・・・・。
俺の名前は、跡部景吾。
氷帝学園高等部を卒業し、現在は、大学に通っている。
そして、今、俺の目の前にいるのは、 。
高校時代から、付き合っている。
俺が、心の底から、幸せにしたいと思った唯一人の女。
「景吾・・・。」
は、俺の存在に気付き、本から視線を俺に移した。
綺麗な、瞳に俺だけが映っている・・・・・。
そうかんがえると、嬉しくなる。
単純。
そう言う奴もいるだろう。
それは、それで結構だ。全く腹も立たない。
「今日は、少し遅れて悪かったな。変な奴に話し掛けられなかったか?」
以前、デートの時刻に遅れた俺は、酷く後悔した。
何たって、が、変な男共に何処かへ連れて行かれそうになっていたからだ。
こんな事なら、自宅で待っていて貰うべきだったと、自分の浅はかさに嫌になった。
「大丈夫です。景吾は、心配性ですね・・・・。」
は、クスッと笑う。
そんな彼女の笑顔も、俺は、好きで堪らない。
何もかもが、愛しく感じてくる。
「お前だから、心配なんだよ。俺は・・・お前に何かあったら、生きてはいけない・・・。」
そうだ。生きてはいけない。
もう一人では、無理なんだ。
がいるから頑張れる。
がいなかったら、何をやっても無意味なことになる。
他人は、”そんな事はない”と言うだろう。
だが、所詮は他人だ。
気休め程度だろう。
本人が、そう思ってないのに、どうしてそんなことが言える?
「景吾・・・・・。」
は、俺の発言に少々驚いたようだ。
まぁ、それだけ俺は、お前を愛しているって事だ。
「まぁ、いい。行くぞ。」
ここで、ずっと話をして、終わるわけにはいかない。
今日は、お前にとっても、俺にとっても特別な日になる。
絶対に・・・・自信は、”ある”と断言は出来ないが、は喜んでくれるはずだ。
きっと・・・・・・・。
今回は、俺の希望もあり、待ち合わせの時間を夕方にして貰った。
は、いつもと違う時間と言うことを、不思議に感じていたが、それは敢えて教えなかった。
言ったら、つまらないだろう?
これは、お楽しみだ。
「そろそろ・・・だな。」
「何がですか?」
「いや・・・・何でもない。着いてくれば分かる。」
それだけ言うと、俺は、の手を取り目的地に向かって歩き始めた。
きっと、も喜ぶ。
も、好きな場所だから。
俺は、お前の好きなモノも、嫌いなモノも、把握している。
だって、俺のことは殆ど把握していることだろう。
出会って、まだ二年。
俺は、お前に出会えて本当に良かった。
出会い方は、決して良い出会いとは、言い難い。
しかし、俺は、はっきりと言える。
この出会いは”運命”だったんだと。
これは、誰にも否定できない。否定する権利もない。
思えば、この出会いは偶然。
だが俺は、偶然よりも必然だったのではないのかと、最近感じるようになってきている。
こうして、と二人。
喧嘩をすることもなく、交際は続いている。
この現状で、満足する奴もいるかも知れない。
俺は、こんな現状では、満足はしていない。
もっと、欲が出てきてしまう。
が、俺のモノだと、実感したい。
実感したいからこそ、今回、現状から、一歩踏み出そうとしているんだ。
「着いたぞ。」
そうこうしている内に、目的地に辿り着いた。
「此処は・・・・・。」
は、街が見下ろせる場所まで、脚を進める。
そう、此処は、俺達の始まり。
此処で、俺はに告白をした。
夕焼けに、染まる街。
俺の、真っ赤に染まった顔を隠してくれた。
俺が、生まれて初めて告白をした。
そして、が優しく微笑んでくれた。
あの時の光景が、今でも目に浮かぶ。
忘れられない。想い出。
、お前も覚えているだろう?
「何時観ても、綺麗な夕空ですね。」
「あぁ・・・・・・・。」
と、俺は空を見上げる。
あの時のように、太陽は、赤く燃え上がっているかのように見えた。
太陽は、始まりと、終わりを告げてくれているように思える。
一日にとっては、終わりの太陽だとしても。
俺にとっては”始まり”の太陽になってくれる。
なぁ、そうだろう?違うとは、言わせない。
「。」
緊張の瞬間。
全ては、ここから始まった。
だから、俺は、この場所を選んだ。
第一歩は、もう踏み出したんだ。
ここからは、第二歩目を踏み出してやる。
「結婚しよう。」
今、俺は、どんな表情をしているだろうか。
きっと、紅くなっているんだろう。
顔が熱い・・・・・・。
だが、から、視線は外せない。
否、外したくない。
今、この瞬間を、一瞬たりとも見逃したくはないから。
、お前は、俺の想いにどう答えてくれる?
どうして、こんなにも時間の流れが遅く感じるのだろう。
「・・・・・・・・はい。」
どのくらいの時間が経ったのか。
俺には、分からない。
だが、は微笑んでくれた。
俺と、これからも一緒にいてくれると誓ってくれたんだ。
あぁ、一生お前を大事にする。
そして、お前は、俺だけのモノなんだ。
そう、実感が湧いてくる。
、これからも、二人で歩んでいこう。
今日のこの日を、俺は、忘れない。
新しい一歩を踏み出したこの日を。
新たな気持ちで。
「初めまして・・・俺の奥さん。そして・・・・・・・・。」
俺は、の耳元で、愛の言葉をそっと囁いた。
これからも、永遠を・・・・俺の全てをに・・・・・。