君は、何を見ている?
知りたい、ただそれだけ
外を見つめていた。
一体、何を見ているのだろうか。
俺は、何故か気になって仕方なかった。理由は、特にない。
彼女を見つめるのに、理由なんか要らないだろう?
視線の先が、気になる。
そんな風に感じたのは、何時の頃だっただろうか。
。
彼女は、同じクラスメイト。
今は、俺の前の席にいる。
は、休み時間には、外を見つめる癖があるのか、友人の話しを聞きながらも、視線はいつも外。
一体、何があるのだろうか。
毎日、同じ景色を見つめるという、行動に。
俺には、意味が無い様に感じる。
そんなに見ていて、飽きないのだろうか。
「遅くなっちまった・・・・。」
放課後、女に呼び出された俺は、やっとの事で解放され、教室に戻って来た。
教室の扉を開けると、人影が見えた。
下校時間は、とっくに過ぎている筈だ。
一体、誰が残っているのだろうか。あの席は確か・・・・・・・・。
「、こんな時間まで何やってんだよ。もう、下校時間過ぎてるぞ。」
そう、教室には、がいた。
たった一人。自分の席から、いつもみたいに、外の景色を見つめていた。
まるで、愛しい恋人を見つめている様な瞳で。
「あぁ、跡部か。お前に言われるまで、気付かなかった。
そんなに時間が経っていたのか。時間が経つのは、早いな。」
はそういうと、立ち上がり、帰る支度をし始める。
「なぁ、。お前さ、何時も外を見ているよな。飽きたりしないのか?」
「ん?飽きる。おい、跡部。何で飽きるんだよ。
お前も、見てみたら分かる。日々、景色は変化しているんだ。
まるで、人の気持ちが変化するように、景色も変わっていく。だから私は、飽きる事はない。」
は、嬉しそうに話をした。
本当に、飽きていないらしい。彼女は、嘘を付いていない。
好きみたいだな、ここから見える景色が。
「・・・・・・お前、また告白されたのか。人気があるな。
流石は”跡部様”と呼ばれるだけの事はあるな。」
「馬鹿言うな。奴等は、俺を見ちゃいない。
見ていたって、上辺だけなんだよ。どうせ欲しいのは、金だろうしな。
そんなんで、何が”好き”だよ。何が”恋人になりたい”だよ。嫌になる。」
何を言っているんだ、俺は。
に話したって、仕方が無い事を。
「そうか。それは、悪かったな。お前、案外純情だったりしてな。
ハハッ・・・跡部って、恋多き男だと思っていたが、私の勘違いだったか。
あぁ・・・・気を悪くしたら、済まない。
お前、とても優しい奴だから、きっと本当のお前を分かってくれる女が現れるさ。
お前みたいな奴を、神が見捨てる筈が・・・・・あ、神を信じていないな。お前。
じゃあどうするかな。よし、私を信じろ。お前の弱さも受け止めてくれる女が現れる。
願っていてやるよ。感謝しろよ?私は、滅多にこんな事はしないんだからな。」
何だよ・・・・それ。
願ってるって・・・・感謝しろって・・・。
「そんなもん、いらねぇよ。」
気が付けば、俺は、そう言っていた。
は、驚いた顔で見つめている。
それはそうだろう。言った俺だって、驚いているのだから。
「何だ、迷惑だったか。まぁ、良いさ。良い女に会えると良いな。」
なんか、苛々する。
胸が、痛い。
呼吸が、しにくくなる。
何なんだ?
「じゃあな、跡部。また明日。」
「待てよ。。」
俺は、引き止める。を。
腕を引き寄せて、力強く抱き締めて。
こうしたかった気がする。ずっと前から。
「お、おい。跡部。」
「うるせぇ。黙ってろ。」
俺は、に顔が見えない様に、彼女の顔を胸元に押しやった。
今は、顔を見せたくない。きっと、顔が朱くなっているだろうから。
「お前、私の事好きなんだろう。」
「ば・・・・・馬鹿!!!自惚れるなよ!?」
の一言に、何故か慌ててしまう。
脈が、速くなるのが分かる。
心臓の、鼓動が凄い。絶対に、にだって、聞こえている筈だ。
「何だ。違うのか。その割には、顔が赤いぞ。跡部け・・・ん・・・・っ・・。」
俺は、の口を塞いだ。自分の唇で。
もう、何も言えない様に。
これから、どうなるかは分からない。
だが、なら・・・・なら、と信じたい。そう思った。
なぁ、願わなくて良いから。
そんな女、現れなくたって良いんだ。
、お前が傍にいてくれないか。
「仕方ねぇから、傍にいさせてやるよ。、俺の女になれよ。」
俺は、目を見開いているに言った。
心臓は、相変わらず。脈も、同じ。
これは、俺の精一杯の告白。これ以上も、これ以下の台詞も、思い浮かばなかった。
次の瞬間、は、笑った。意地悪く。
の返事は、こうだった。
「仕方ねぇから、傍にいてやるよ。跡部景吾。」