「おい。」
こう話し掛けてきたのは、見知らぬ男だった。
興味がなかった
調度、昼休みだった頃。
私は、見知らぬ男に話し掛けられた。
何処かで、会っただろうか?
まぁ、会ったのだろう。
どうやら同じ制服だし、こんな時間に、違う学校の人間はいないだろうし。
「何か?用がないなら、そこをどいて頂きたい。」
「これ・・・・。」
そう言って差し出してきたのは、傘だった。
よく見てみると、それは、私の傘だ。
「・・・・・・何故、他人の中の他人の貴方が、私の傘を持っているんですか?ご説明して貰おうじゃありませんか。」
「は?お前が、貸したんだろ?何で忘れるんだよ。」
そうだったのだろうか。
私が、そんな事をしただなんて、信じられない。
記憶力は、良いはずなのに。
「あぁ・・・・思い出した。あの時の人間ですか。名前は、忘れましたけど。」
確か、雨が降っていた。
困っている様だったから、傘を貸したんだった。
「わざわざどうも。用件は、これで終わりですか?終わりで構いませんよね?」
「いや。まだだ。」
そう言って、目の前にいる相手は、私の手を掴み、こう言った。
「俺の女になりな。」
公衆の面前で、何て事を言うのだろうか。
もしかして、頭が可笑しいんじゃないか?
「精神科の先生に、診てもらうべきですね。付き合うなんて、御免です。貴方の事を何も知らない。」
「頭は可笑しくなってねぇよ。大体、俺だって知らない。
だがな・・・お前が、此処を可笑しくしたんだ。責任持って、お前が治せよ。一生掛かっても治らねぇかもしれないけどな。」
相手は、自分の心臓の辺りを指差していた。
私が、可笑しくしただなんて、人聞きの悪い。
それに、その余裕な笑み。
何故か、気に食わない。
「これは、決定だ。今日から俺の女になるか、ずっと俺に付き纏われて大変な目に合うか、どちらが良いか決めな。」
「偉そうに・・・・。」
本当に、偉そうだ。
何様のつもりなのだろうか。
私には、拒否権なんか無いと言うのだろうか。
あぁ・・・変な男に傘を貸してしまった。
過去に戻れるなら、戻ってやり直したい。
さて、どうしようか・・・・。
私は、考えた。
どうにかならないかと。
拒否は、出来ないのだろうかと。
「で?答えは?」
不敵な笑みを浮かべ、私に解答を迫ってくる。
「仕方が無い。付き合ってあげますよ。どのみち疲れる事になりそうですが、付き纏われる位ならば付き合う方がマシです。」
「マシってのが気に食わないが、まぁ良いだろう。これから俺様しか見れない様にしてやるよ。。」
「それはどうも。光栄じゃありませんけど。」
この先、思いやられそうな気もするけれど、まぁこれも良いかもしれない。
「で、貴方の名前は?」
「おいおい・・・・あの時名乗ったじゃねぇかよ。」
「仕方ないでしょう。興味無かったから、忘れたんです。」
楽しませてもらうとしましょうか。
しつこいのは好きじゃないんですけど・・・・・・ね。