やっぱり。
目茶苦茶
夜だった。
昼間の筈なのに、夜みたいに暗かった。
一体、この教室はどうしたんだ。
此処だけ、何かが起きたのか?
(おいおい・・・・・一体、何が起こったんだよ。)
俺は、昼休みこの空き教室に呼び出された。
まぁ、付き合ってくれと言われるだけなんだろうが・・・・無視する訳にはいかない。
聞くだけ聞けば、相手も諦めるだろう。
「ったく・・・・何で、こんな変な場所に呼ぶんだよ。」
此処に呼んだ奴は、一体全体どんな神経してるんだか。
まぁ、正常な頭はしていないな。
「おっと・・・・また会ったのか。やっぱり、運が悪いよ。こんな時間に、こんな場所にくるなんて。」
いつの間にか、目の前に女がいた。
ついさっきまで、俺以外の人間は存在しなかった。
扉が開く音も、全くしていない。
それなのに、何故いるんだ。
俺よりも、前にいたのか?
それならそれで、声を掛けてくれればいいものを・・・・・。
「この手紙を俺にくれたのは、お前か?」
「違う。だって、私は手紙を書かないから。」
「じゃあ、何で此処にいるんだよ。」
「此処が、今私のいるべき場所だからだよ。」
何を言っているのか、訳が分からない。
俺に、手紙を書いた女じゃない。
そして、今いるべきだから此処にいる・・・・・・だと?
俺をからかっているのか?
「私は、私のいるべき場所にいるだけであって。私がいなくても良い様な場所にはいかない。」
女は、俺を睨み付ける。
とても、恐ろしい形相だった。
前髪で隠れているが、その隙間から俺を睨む瞳は・・・・憎悪だろうか。
「此処にいるべきじゃないのは・・・・君と、この女。」
女は、いつの間にか・・・・人間を抱き締めていた。
女を、抱き締めていた。
抱き締められていた女は、瞼を閉じていた。
眠っているのだろうか?
全く、動く気配が感じられない。
否・・・・・違う。
正確に言えば、違う。
人間は、首から下がない。
見えないんじゃなくて、全くない。
あるのは、空間。
だから、女が抱き締めているのは・・・・人間の頭部。
「お・・・・お前・・・殺したのか?!」
「は?殺し・・・??おいおいおいおい!!!ちょっと待ってよ。殺した?私が、殺し?
ククッ・・・・あぁ・・・・おかしいよ。可笑しいよ。オカシイヨ。殺さない。殺す価値もない。
殺した方が良かった?殺し、殺せば、コロサレロ?フフッ・・・なんちゃって。なーんちゃって。
嘘嘘ウソうそ。怒らないで。オー、コワッ!!!怖いよ、怖い!!!あ、これも嘘。だから。ハハッ!!!!」
「・・・・・・・・・ふざけてんじゃねぇよ。」
「ふざけてねぇよ。死んでないよ死んでない。生きているよ。酸素吸っているよ。呼吸しているよ?
瞬きもさせたいけど、何となく嫌だったから閉じさせているだけだよ。あぁ、君は怒ると怖い?ねぇ、吃驚?
私は、怖くない。怖いのは、私の方だから。私には、恐いものが、ない。無いって言うのはさ・・・・・・良い様で悪いよね。
だって、上がいないんでしょう?私が、最上位なんでしょう?上がいないって、怖くない?ねぇ。」
笑っている。
面白そうに、笑っている。
絶対に、からかっている。
俺を、欺いている。
何なんだ。
どうして、そんなに楽しそうなんだよ。
「あのさ、価値はない。そんなのに、労力を使いたくないよ。」
「そうかよ・・・・。」
「そうだよ。」
鈍い、音がした。
その瞬間、俺は腹部に痛みを感じた。
何だ?
この痛み・・・・・以前にも、感じた気がする。
何処だ・・・・・思い出せない・・・。
「悪いね。またこうするなんてさ・・・・本当は、面倒なんだよ。」
「テメェ・・・・何者だ・・?」
「知る必要ない。すぐに忘れるんだから。」
女は、笑うのを止めなかった。
俺が倒れても、笑っていた・・・・・。
“安らかに。ねぇ、君は私が怖い?”
「跡部君・・・・跡部君!!」
「・・・ん・・・・此処・・は?」
俺は、空き教室で眠っていたらしい。
外を見ると、もう夕方になっていた。
来たのは、昼休みだった筈なのに・・・・・。
「咆驚した。この教室に来たら寝てたから。」
「悪いな。俺に手紙をくれたのは・・・。」
「私だよ。あのね・・・跡部君が、好きなの。付き合って下さい。」
あぁ、この女だったのか。
だが、俺の返事は・・・・・NOだ。
付き合う気は、全くない。
そういうと、女は笑っていた。
笑っていたとしても、泣きそうな笑いだが・・・・。
“君は、運が悪い”
声がした。
女の声だった。
何処かで聞いたことがあったが・・・・俺は、よく覚えていない。