「好きです。」
「悪いが、好きになれない。」
好きになれない。君だけしか・・・。
告白された。
俺は、断った。
好きになれないから。
好きになれない人間と、付き合う気はないから。
遊ぶ気にも、なれない。
そんな事をする位なら・・・・テニスをしていた方が良いに決まっている。
「まーた、振ったんかよ。」
「あぁ。」
「やっぱり、好きになれないん?」
「あぁ。」
「跡部って、一途だよなぁ。もう何年経ったと思ってんの?」
「・・・・・うるせぇ。」
何年だと?
そんなもの、関係ない。
俺の場合、時間が経てば経つほど、想いは募る。
彼女に、会いたいと願ってしまう。
今まで、何度携帯のディスプレイを見たか。
何度、彼女が好きな曲が、携帯から流れるのを待ったのだろうか。
「ふん・・・・時が経てば忘れる事が出来るなんて、嘘だな。結局、本当に好きな人間ってのは、頭の隅に残ってんだよ。」
“私の事は、忘れて下さい”
あの日、俺に向かって言った彼女。
“他の人と・・・・幸せになって下さいね”
何で、そんな事を言うんだろうか。
俺は、お前が好きで好きで・・・・他の女なんか、どうでも良くて。
それなのに、どうしてそんなに悲しい事を、言われなくちゃいけないんだ。
“じゃあ・・・・・私は、これで。”
“俺は・・・・俺は、忘れないからな!ずっと、ずっと待ってる。帰って来る時には、連絡しろ!!!”
俺は、忘れない。
そう叫んだのに、振り向いてはくれなかった。
路は、前にしかない・・・・。
彼女の背中が、そう言っているみたいだった。
だが、後ろにだって路があるんだぜ?
俺が、待っている限り。
「そろそろ、諦めたら?だって・・・・・・。」
「アイツの名前を呼んでいいのは、俺だけだ。気安く呼んでんじゃねぇよ。」
は、俺だけ。
俺しかいない・・・・・そう、信じたい。
俺が、そうであるように・・・・・・。
「跡部、携帯のバイブ・・・・さっきから煩いんだけど。」
「あ?あぁ・・・・俺のか。」
誰からなのだろうか。
まぁ、どうせ両・・・・・・・・・・。
「!!!!!!!!」
「跡部?どうした?」
「悪い・・・・帰る!!」
咆驚した。
ディスプレイを見て、本当に驚いた。
まさか・・・・・・まさか・・・・。
「・・・・?」
「・・・・お・お久し・・・ぶりですね・・・・。」
俺は、空港に来ていた。
勿論、外国から帰って来たを迎える為に。
別れたあの日から、毎日、パソコンのメールで“帰る時には連絡しろ”と言っておいたから。
返事はなかったが、は連絡をくれると知っていたから。
だから、信じて待った。
「お前、この俺を何年も待たせるなんて・・・やっぱり、スゲェよ。」
「ご、御免なさい・・・。」
「構わねぇよ。戻って来てくれたんだから、それで良い。ま、もう後ろに路はないから・・・・覚悟しとけよ?」
俺は、もう待たない。
後ろには、路を敷いてやらない。
これからは、前だけに路を敷いていく。
俺達、二人だけの路を・・・・・。