“良いか?は____。”
絶 望 感
血。
人間の血は、紅い。
真紅であり深紅だ。
だが、その綺麗な血の色は、時にどす黒いものへと変化を遂げる。
この場合、どう言ったら良いのだろうか。
壁にへばり付いた“ソレ”は、液体。
室内が暗い為か、液体以外の判別がつかない。
(触れたくねぇな・・・・こんなもんによ。)
『夕方になったら、視聴覚室に行ってみな。』
昼休み、突然に言われた言葉。
何の事だか、分からなかった。
俺が、何故視聴覚室に?
理由が、ない。
理由が無いのに、行く必要なんてあるのか?
『とにかく、行けって。』
『面白いモンが見れるで?』
面白いものだと?
一体、何なのだろうか。
忍足達は、あれ以上の事は、教えてくれなかった。
「ったく・・・・・何だってんだよ。」
結局、来てみたらこんな現状を目の当たりにした。
もしかして、アイツ等の悪戯か?
だとしたら、可愛くない悪戯だぜ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぁ、可愛くても嫌だがな。
「・・・・・何だ。また君だったのか。」
「あん?」
「どうして・・・・君は、運が悪いんだろうね。」
悲しそうな、声だった。
今にも、泣いてしまう位。
かなり、弱っているかの様な・・・・・。
「やっぱり・・・痛いね。今回のは・・痛すぎる・・・。」
「何言っ・・・・お前、怪我してんのか?!」
「んー?うん・・・・どうやら・・何時もより酷い・・・。」
女は、自分の傷口を見て、平然と答えた。
服には、ベッタリと液体が染み付いていた。
まさか・・・・・・・・・・血か?
血が・・・・・ついているのか?
「手当てしなきゃならねぇだろ・・・来いよ。」
「必要ないよ・・・・・跡部景吾君。」
女は、俺の名前を知っていた。
一度も会ったことがないのに、どうして知っているのだろうか。
俺は、自己紹介すらしていない。
じゃあ、どうして分かったんだ?
「君の事はね・・・・・知っているんだよ。何度も・・・何度も・・会っているからね。」
「何だよ・・・・それ。」
意味が、分かるかよ。
この女は、一体何が言いたいんだ?
俺は、お前とは一度も会ったことが無い。
「・・・・・・そろそろ・・良いかな・・・・。」
「何がだよ。」
「傷。」
そう言って、俺に腹部を見せる。
そこを見ると、傷がなかった。
傷痕すら、見えなかった。
さっきまで、痛そうに押さえていたのに・・・・。
「ふぅ・・・・・残念。この服、気に入っていたのに。」
「・・・・・・・・・・・。」
少しだけ、見えた。
暗闇が、失くなりかけた隙間から射した光で。
女の、液体で濡れた服が。
そして、その色が。
人間の血は、紅い。
真っ赤で、綺麗な位、紅くて。
それなのに。
なのに・・・・・。
「どうして、お前の血は・・・・紅くないんだ?」
「うん・・・・?知りたいの??」
女は、笑った。
気味悪く、笑った。
そんな表情を見て、俺は・・・・逃げ出したくなった。
聞くんじゃ・・・・・・ナカッタ。
「私はね、跡部景吾君。」
女は、俺の腕を掴んで離さない。
一体、細腕の何処に、こんな力が宿っているのか。
“跡部、これは忘れるなよ”
この時、宍戸が言っていた言葉を思い出した。
「人間じゃ・・・・ないよ。」
“は_____。”
「私は、不死身であり・・・ 存在。」