予報と予
感
「冷てぇ・・・・畜生・・・。」
天気予報とは、嘘つきだ。
まさか、雨が降るなんて思いもしなかった。
朝から、何処のチャンネルを観ても晴れだ。
だから、信じたんだが・・・・・間違えだったらしい。
練習試合が近いってのに、部長が風邪引いて休んだら、笑い者になってしまう。
(予報を信じた俺も、馬鹿か・・・・。)
案外、占いと一緒なのかも知れない。
未だに降り続ける雨を恨みながら、ふと思った。
雨なんか、嫌いだ。
だが、雨が降らなければ、それはそれで困る人だっている。
そう考えると、雨が降るという事は、良いことなんだ。
(ま、俺にとっても必要だけどよ・・・・服が濡れるのは気持ちが悪いぜ。)
これから、どうしようか。
何処か、店にでも行くか・・・・・それとも、この際歩いて帰るか。
「あぁ・・・・ツイテナイ。ん?でもコンナ簡単にツイテナイなんてイッテ良いのかしら。」
ネェ、どうオモウ?
話し掛けてきたのは、知らない女だった。
知らないのに、古い知り合いかの様に、話し掛けてくる女。
しかも、何処か日本語の発音が可笑しい。
外国人か?
いや・・・・・違う。
どう見たって、日本人だ。
「ニホンジンよ。あぁ・・・・ハツオンが悪いトいいタイノネ。・・・・・・・これでどうかしら?通じる?そこの日本人の僕。」
「・・・・・・・・・馬鹿にしてんのか?」
否、喧嘩でも売ってんのか?
まさかな・・・・俺は男だし、女が勝てる筈がねぇ。
どう見たって、あんな細い腕じゃあ力は無いだろう?
「勝てるわよ。どうでも良い様で悪いから言うけれど、貴方、ブツブツ煩いのよ。黙りなさい。」
「は?口に出してないのに・・・・どうやって分かるんだよ。」
「フフッ・・・・秘密よ。教えたらつまらなくなってしまうでしょう?」
変な女。
でも・・・・何だか、面白い。
憎んでいないんだから、まぁまぁ気に入ったって事だな。
「お前、名前は?折角だから覚えてやるよ。」
「偉そうに・・・・よ。僕。」
「“僕”じゃねぇよ。俺の名前は、跡部景吾だ。忘れるんじゃねぇぞ。」
こんな言い方をしてしまったが、本心は、忘れてほしくなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・何となくだが。
こんな言葉さえ言えない俺は、本当に素直じゃない。
一人、苦笑していたその時だった・・・・・・・・。
「止んだわよ。行きなさい。」
横を見た。
いた筈の、女は居なかった。
慌てて、雨宿りしていた場所から出て、辺りを見回しても居なかった。
「嘘・・・・だろ?」
急に、居なくなった?
まさか・・・そんな筈は無い。
今だって、声がしたじゃないか。
“雨が止んだ”と。
「・・・・・・・・・止んだ?」
上を、見上げた。
雨雲の隙間から、太陽の光が射し込んで、眩しかった。
あぁ、止んだのか。
今の内に、家に戻ろう。
また、何時降ってくるか分からないから。
俺は、足速に歩いた。
の事を、考えながら。
また・・・・何時か会えるだろう。
予感は、する。
天気予報は外れたが、自分の心にある予感は、当たってほしい・・・・・。