「何で、僕じゃないのさ!!!」
喧嘩、別れ。のち、仲直り。
怒鳴ってしまった。
つい、感情的になってしまったから。
だけど、だって悪いんだ。
今日は、僕を指名するって言ってくれたのに。
なのに、彼女が指名したのは、鏡夜先輩。
これじゃあ、話が違う。
僕が、どれだけ楽しみにしていたのか分かるの?
分からないだろうね。鏡夜先輩を指名しちゃう位なんだからさ。
あぁ、そうか。
は、鏡夜先輩が好きだったんだ。
僕、馬鹿みたいじゃないか。一人で浮かれちゃって。
「光、そんな怖い顔しないでよ。皆、ビクビクしているよ?」
馨が、ボソボソと小声で話し掛けてくる。
怖い?
そんなの、分かるようにしてるんだから、怖いのは当たり前じゃないか。
今日の僕は、一段と不機嫌だよ。
は、相変わらず、僕を指名しない。
何で?どうして、指名してくれないのさ。いい加減にしてよ。
あんなに、嬉しそうにしちゃってさ。
僕に、見せびらかしたい訳?上等じゃないか。
がその気なら、僕だって、見せびらかしてやる。
もう、知るか。
僕の知ったこっちゃないよ。
悪いのは、僕じゃない。なんだから。
僕に、こんな事をさせた、が悪いんだ。
「君さぁ。可愛いよね。名前教えてよ。僕と、付き合ってみない?」
僕は、僕の隣にいた、女の子に”付き合わないか”と、話を持ち掛けた。
こうなったら、意地だ。
僕を怒らせたら、どうなるか思い知らせてやるんだからね。
チラッとの方に視線を向けると、彼女は、驚いている表情だった。
ふん。
今更、そんな表情したって無駄さ。僕は、付き合うよ。君以外の人と。
君には、反対する資格なんてないよ。
だって、そうだろう?裏切ったんだ。この僕を。
裏切った人間が、どうしてそんなに悲しい表情をするの?
馬鹿馬鹿しい。本当に。
僕が、馬鹿みたいじゃないか。馬鹿じゃないのに。
馨が、僕を困った様に見つめる。
”何もそこまで・・・・・。”
そう言いたそうだった。
馨、どうして?悪いのは、でしょう?僕じゃない。
それなのに、どうして僕を、非難するような瞳で見つめるの?
いつだって、どんな時だって、僕の味方だろう?違うとでも言いたいの?
あぁ、もうどうとでもなれ。
苛々していた僕は、女の子を連れて、部屋を出ていく。
「結局、別れたんだ。」
馨は、苦笑しながら、僕にそう言った。
そう、僕は、三日もしないうちに別れた。
だって、好きじゃないから。
楽しくないから。
嬉しくないから。
幸せじゃ・・・・ないから。
感じない、何も。
感じないんだよ。がいないから。
すっごく後悔。
は、あの日以来、僕に会いに来ない。
勿論、ホスト部にも来ていない。
嫌われたんだろうか。
それは、そうだろうな。僕は、怒りに任せてあんな事したんだから。
でも、だって悪い。
僕を指名してくれたら、こんな事にはならなかったんだから。
「ねぇ、仲直りしてきたら?」
仲直り。仲直りって・・・・僕が、謝るの?
嫌だよ。謝るなんて。
それも、僕から謝るのは、嫌だ。
「ほら、あそこにいるよ。」
「あそこ?あそこって・・・あ・・・・。」
馨が、指差す方向を見ると、そこにはがいた。
「・・・・。」
「ご、御免なさい!!」
は、僕が近付くと、頭を深々と下げて謝った。
僕は、ただただ驚いた。だって、突然、が謝ったんだから。
「光さんが・・・あんなに、怒るなんて・・本当に、御免なさい。嫌いになりましたよね。私の事。」
「き、嫌いになる訳無い。僕の方こそ、御免。その・・・・ムキになっちゃって。
僕、じゃないと駄目なんだよ。
こんな時に分かるなんて・・・・馬鹿だよね。
怒鳴って御免。でも、僕、やっぱりが、他の男と仲良くしているのは、見たくないよ。
には、僕だけを見て欲しい。」
そう、僕だけを。
、これは、我が儘。だけど、そうしてもらいたい。
僕に、が必要な様に、にも、必要とされたい。
は、笑顔で頷いてくれた。嫌な顔一つもせずに。
僕は、そんな彼女を愛しく思う。
教室の前だったけれど、そんな事は関係ない。
皆が、見ていたけれど、そんな事は気にしない。
見せびらかす為。
は、僕のものだって、周りに分からせる為。
僕は、を抱き締めた。
、愛してる。
喧嘩して、一方的に、別れて。
でも、君じゃないと駄目だと自覚した。今日、この日。