「また泣いていたの?」


























泣いて、泣いて、ナキツヅケテ




























































本日の天気、雨。





雨と言っても、大雨ではなく、静かに静かに降り続ける小雨。





僕の目の前にいる彼女・・・・・は、“自然に流れるのよ”と言いながら、頬を涙の筋で、濡らしている。





そんなを見る度に、僕は雨なんかこの世から無くなってしまえば良いと、勝手なことを考えてしまう。




彼女は、雨の日には必ず涙を流す。





雨の日には、泣かなかった日なんか一度もない。





大抵は、静かに涙を流すけれど、感情が不安定な時は、少し取り乱す事もある。





僕は、そんな彼女を見たくないから、雨なんか要らないと思ってしまうんだ。














「・・・・・でも、僕っていう素晴らしく最高の恋人が側にいるのに、は泣き止むことをしないんだね。」





「・・・・・・仕方無いでしょう?哀しいのだから。それとも貴方は、哀しい気持ちでも、面に出すなと言うの?」







“感情を押し殺せなんて・・・・酷い人ね。自分は、結構短気の癖に。”と、軽く僕を睨んできた。





そんなに短気かな。





此れでも、我慢しているんだけど・・・・僕は、そんなに怒っているのかな。







(でもさ・・・・何時までも、別れた男の為に泣いてほしくないんだよね。僕としては。)





と逢ったのは、半年前。





その時は、既に前の男とは別れていたみたいだけど。





あの日、何故か馨は指名せずに、僕だけを指名してきた。



























































『ねぇ、どうして僕一人なのさ。僕は、馨と二人で何時も接待しているんだけど?こういうのって、結構困るんだよね。』





『そうね・・・・セットより、貴方単体に会ってみたかっただけよ。』





『単体って・・・・・変な事言うね。君。』





『そうかしら。私の基準だと、別に変ではないと思うけれど・・・・・。』





苦笑いしながらそう言った彼女に、少しムッとした。





大体、単体なんて言い方もどうかと思うんだよね。





僕達に失礼だと思わないのかな。







『・・・・・・・雨ね。』




『は?あぁ・・・・そうだね。其れがどうかした?』





『・・・・・・・・・哀しいわ。雨は、嫌いよ。』





『・・・・・何で・・・泣くの?可笑しいんじゃない?雨なんかで、泣くなんて。』





『そうね・・・・・。』







そう言って、無理矢理笑顔を浮かべた彼女を見たら、何だか胸が痛くなったのを感じた。





どうして泣くんだろう。





雨で泣くなんて、何か理由があるわけ?





やっぱり可笑しいよ。





本当にそう思ったから、彼女に“可笑しい人だね”ともう一度告げたら、彼女は話を逸らすように“何か、楽しい話を聞かせて頂戴。”と言ってきた。













































































「今思えば、あんな奴との別れが、雨の日で、それを思い出して泣いていたなんて・・・・・僕だったら、有り得ないね。」





「貴方にとって、有り得ない事でも、私にとっては十分有り得るのよ。」





「ふーん。でもさぁ、今は僕が好きなんでしょ?僕の事を愛しているんでしょう?なら、泣くのは辞めなよ。は、今まで十分あの男の為に泣いたじゃない。」















もう十分泣いたと思う。





相手の男なんか、違う相手と楽しい日々を過ごしているっていうのに。





そんな男の為に、まだ泣こうっていうの?





僕は、そんなの必要ないと思うよ。





だから、いい加減僕だけを見てくれないかな。





僕だって、何時までもそんなに優しく見守ってなんかいられないんだよ。













「・・・・・・そうね。貴方への配慮を忘れていたわ。」





「その言い方、物凄く失礼だと思わないの?」





「本当の事だもの。仕方無いでしょう?御免なさいね。こんな性格だから・・・・嫌になったら、婚約を中止にしても構わないわよ。」





「婚約を中止にする?冗談じゃないよ。僕にそんな気は更々ないからね。君にあったとしても、そんな事させない。」






初めて会った時以来、気になって仕方がなかった君を、やっと自分の手に入れる事が出来たんだ。





それなのに、婚約中止なんて絶対に嫌だよ。







「完全に僕のものになってもらうよ。二人で、幸せな家庭を築きたいって願ってるんだから。」





「・・・・・・何気に恥ずかしいわ。それに、付き合って一ヶ月で婚約っていうのも、やっぱり早くないかしら。」





「そう?僕は早くないと思うんだけどな・・・・・。もっと早くから、婚約してる連中だっているしね。」





「・・・・・そう・・・ね。それに、光なら幸せにしてくれるんだろうし。」





「するよ。絶対にする。」





僕は、を後ろから抱き締めて、“幸せにする”と何度も誓った。































幸せにするよ。































君が、幸せになれるなら、僕はどんな事だってするから。































だからさ、もう泣かないでよ。






























雨の日でも、笑っていて。


























僕の為じゃなく、違う相手を想いながら泣くなんて、見たくないから・・・・・。