「どれが良いかなぁ・・・・。」
君と二人で。
今日は、初めてさんとデートをする日。
僕は、何を着たら良いのか、迷っていた。
朝からずっと。
昨日から・・・・・違う、その前から緊張のせいか、そわそわしてしまう日々だった。
「馨、どれでも良いんじゃない?凄くよく似合っているよ。」
「光、駄目だよ。似合ってない・・・・さんは、どんな感じが好みなのかな。」
出来れば、さんが気に入る服装が良い。
こんな事になるなら、事前に聞いておけば良かった。
そうすれば、こんなに迷う事もなかったのに。
「参ったなぁ・・・・待ち合わせまで、一時間しかない。早く決めなきゃいけないのに・・・・。」
よく考えるんだ。
さんは、どんな人?
彼女は、結構大人しいタイプだから、派手な感じは嫌がるだろう。
だから、地味目な感じが良いだろう。
地味・・・・地味っていうと・・・・・どれだろう。
「これかな・・・・・・。」
ようやく決まった。
僕なりに、地味目にしたつもり。
これが、初めてのデートなんだから、失敗しないようにしないといけない。
「行ってきます!!」
僕は、さんを迎えに行く為に、自家用車に乗り込んで、彼女の屋敷へと向かった。
「お待たせ。御免、少し遅くなっちゃったかな。」
「平気。」
さんは、スカートだったけれど、学校で会う感じとはまた違った。
その事が、更に僕を緊張させる。
「素敵。」
さんは、僕を見て一言、そう言った。
これは、褒められたのかな?
そう受け取って良いんだよね?
「さんも、綺麗だよ。よく似合ってる。」
「嘘。」
彼女は、僕の言った事を信じてくれなかった。
どうしてなんだろう。
そんなに、信用がないのかな。
僕は、本当の事を言っただけなのに。
「ねぇ、お世辞って・・・・・嫌い?」
彼女は、一回だけ首を縦を振った。
「嘘は、嫌い?」
僕がそう言うと、二回彼女は首を縦に振る。
「じゃあ、僕の事は・・・・・・嫌い?」
彼女は、首を振らなかった。
何故振らなかったのか、理由は言ってくれなかった。
理由は・・・・何なのだろう。
出来れば、教えてほしかったな。
“今度から、名前で呼び合わない?”
僕は、さんに提案した。
その提案に、彼女は・・・・・。