泊まりに、来て。
Mon sentiment
「駄目。」
「えー・・・・・駄目なの?」
僕のお願いに、は首を縦に振ってくれなかった。
今日、彼女の両親はいないと言っていた。
には、兄弟がいない。
執事とか、メイドとかはいるんだろうけれど。
それだけじゃあ、つまらないと思ったのに。
「嫌。」
結局、は拒否し続けた。
だけど、僕は納得行かない。
放課後になって、部活をやっている今も、どうにかして彼女を泊まらせようと目論んでいる。
「それは、彼女にとっては良い迷惑なんじゃないか?」
「どうして?」
「嫌だと、拒否しているじゃないか。間違っているか?必要の無い良心は、断ち切れ。」
「だって、悲しいじゃないか。一人なんだよ?」
「それは、お前の考え方であって、彼女の考え方は違うんだ。」
“それよりも、沢山の客人がいるんだ。早く対応しろ”
鏡夜先輩の意見は、間違っていないと思う。
押し付けるのは、確かに良くないから。
「僕だって・・・・・そんなの分かってるよ。」
そう、分かっているんだ。
心の中の、隅っこにいる自分が、そう警告しているから。
実は、淋しいだろうから、泊まりに___って言うのは、建前。
本音は、少しでも多く、彼女といたい。
結局、僕は自分の感情を最優先しているに過ぎない。
狡い。
酷いって言われても、文句は言えない。
だって、自分でもそう思うから。
「なぁ、その嬢は、此処には来ないのか?」
「あのね、殿。はこういう場所を好まないんだよ。だから、来ないよ。」
「そうか?だっているんだから、仲良くなれるんじゃないか?」
無理だよ。
彼女は、不特定多数の人間と仲良くなろうとはしない。
本当に、少数。
極僅か。
僕だって、どうして仲良くなれたのか・・・・そんな感じ。
光だって、そんなに仲良くない。
と言うより、話すらしない。
僕が、仲介をする様な形。
彼女は、頷くか、視線を僕に向けるだけ。
光は、質問攻め。
そんな彼女は、友達を作らない。
「僕は、連れて来たいんだけどね・・・・・。」
「そうか。ならば、無理矢理連れて来たらどうだ?」
「馬鹿言わないでよ!そんな事したら、この先一生話をしてくれなくなっちゃうよ!!」
殿は、時々恐ろしい事を言う。
嫌われてしまったら、は顔を合わせてくれないかもしれない。
僕は、そんなの嫌だ。
絶対に、嫌なんだよ。
「嫌われるって・・・・そんな状況なら、パーティーにすら出席できないじゃないか。馴らすには、この場所は打ってつけだろう?」
「・・・・・・・・・・・そうだけどさ、それで嫌われたら、誰が責任取るのさ。」
少し、外の空気を吸ってこようかな。
此処だと、どうも空気が悪い気がしてならない。
は、まだいるかな。
この時間は・・・・・温室にいるかもしれない。
「あれ・・・・可笑しい・・な。」
僕、かなりに依存している?
「あ、いたいた。」
「馨。」
は、僕の予想通り、温室にいた。
彼女は、毎日此処で薔薇を見つめている。
ベンチに座り、ただただ見つめるだけ。
他の物は、一切視界にいれようとしない。
「あのね、邪魔だった?」
「別に。」
「そっか。なら良かった。」
僕は、の隣に座る。
は、再び薔薇の花に魅入っていた。
「、僕・・・・君が大切なんだよ。」
は、答えない。
「がいないと、駄目なんだ。」
は、僕の方を向こうとはしない。
「僕、君が好きだよ。」
「好き?」
「うん・・・・好き。一人の女の子として、好きなんだ。恋愛感情・・・ってやつだね。」
僕は、やっと振り向いてくれたに、顔を近付けていく。
逃げないで・・・・お願いだから。
僕を、受け入れて下さい。
「ん・・・・っ・・・・・。」
は、僕を拒む事はなかった。
夕暮れ時、僕達は、花に囲まれた中で、口付けを交わした。
・・・・僕は、君に依存しても良いかな・・・・・。