あれから。
Schwarzes
温室で、口付けを交わしたあの日。
僕は、の自宅へ泊まりに行く事にした。
それなら、は自宅から出る事もない。
僕が行くなら、何も問題はないと思ったから。
「で、何で皆も来るの?」
「決まっているだろう?お前一人だと、彼女の淋しさは、拭い去らないだろうからな!」
「ふーん・・・・・。」
殿、さんのいる前で、そんな事言っちゃって良いの?
問題は、無いの?
僕が彼女だったら、絶対に嫌がるよ。
「環さん?」
彼女_____さんは、笑っていた。
でも、目は笑っていなかった。
だから、凄く怖い。
だから、言ったのに・・・・殿は、駄目だなぁ。
「お待たせ致しました。」
そんな時、やっとの事で扉が開いた。
こんなに待たされるなんて、初めてかも知れない。
何か、あったかな?
「良い度胸してるよね。僕達を待たせるなんて、一体何考えてんの?」
「ひ、光・・・・・。」
「申し訳ありません。」
光の言葉に、表情一つ変えずに、執事は僕達に頭を下げる。
まぁ、これも仕事みたいなものだけど・・・・だけど、の所の執事だから、出来れば険悪なムードは避けたい。
「・・・・・・・・・・・・・誰。」
「あ、。」
「誰。」
は、それしか言わない。
うーん・・・・・これは・・・・・。
「もしかして、怒ってる?」
「別に。」
は、それだけ言うと、奥へと行ってしまった。
ど、どうしよう!
怒ってるじゃん!
「どうしてくれるのさ!怒っちゃったじゃない。、行っちゃったじゃん・・・!!!」
「そんなに怒る事ないじゃん。彼女って、案外冷たいの?」
「違う。違うよ・・・・・はぁ・・・・・・・・・・。」
駄目だ。
もう、どうしてこうなっちゃうの?
だから、付いてくるなってあれだけ言ったのに。
「済みません、の部屋に案内してくれますか?」
「畏まりました。」
「じゃあ、俺達も・・・「来ないで。」
殿達の話よりも、の方が大事なんだよ。
許してくれるかな。
悪気はないって、分かってくれるかな。
「こちらでございます。」
「どうも有り難う。」
僕が御礼を言うと、執事は頭を下げて去ってしまった。
きっと、此処からは僕達の問題だと思ったんだろう。
「、入るよ。」
もう、ノックなんかしない。
僕は、“入る”と宣言したと同時に、彼女の部屋の中に入る。
部屋の中は、暗かった。
彼女の部屋は、黒で覆われていた。
部屋が、暗いからじゃない。
夜だからじゃない。
全てが、黒。
黒、真っ黒。
黒、黒、黒。
これは、の心も暗闇が広がっているという、現れ?
「馨。」
「ねぇ、怒ってる?」
「違う。」
「じゃあ、皆をこの屋敷に入れても構わないかな・・・・?」
「別に。」
は、もうそれ以外、何も言わなかった。
どうやら、本当に怒っていなかったらしい。
僕の勘違いだったんだね。
「ねぇ、どうして部屋中真っ黒なの?」
「秘密。」
皆を中に入れた後、僕達は二人きりになった。
その時、にあの部屋の事を尋ねてみたけれど、教えてくれなかった。