君が、大好き。
伝えてあげる
君が、好きだよ。
初めは、最悪な出会いだったけれど。
“敵”にまわしてやろうかと、思ったけれど。
ならなかった。
何故か、私は、出来なかった。
不思議でならない。
赤也。切原赤也。
立海テニス部の、エース。
顔はしらなかったけれど、名前だけは知っていた。
向こうは、私の存在を知っていたらしい。
まぁ、変だったから。
否、今も変な所があるけれど。
「普通じゃ、ないんだろうな。」
私は、一人呟く。
周りには、誰もいない。
勿論、切原赤也も。
彼は、現在部活の真っ只中。
きっと、真田が厳しくしている事だろう。
私は、屋上からテニスコートを見下ろした。
小さくて、誰が赤也なのかは分からない。
どうして、待たなければいけないのか。
私は、理解しがたい。
恋人同士だから、待つ必要があるというのだろうか。
大体、束縛は嫌いなのに。
しかし、ならば何故、待っているのだろうか。
ふと、自問自答をしてみる事にした。
(可笑しい。私は、一体どうなったのだろう。以前とは、違う。悪い気は、しないし・・・・。)
切原赤也は、不思議な人間だった。
怒っていると思えば、笑い出す。
ある日には、突然泣き出した。
私は、戸惑うしかなかった。
感情の起伏が激しい。
どんな対応をして良いのか、分からない。
“悔しい。悔しいよ・・・・先輩!俺、強くなりたい。強くなりたいんだよ!!”
泣いていた。
泣きながら、私に縋り付いてきた。
“強くなりたい”
彼は、そう言った。
どう強くなりたいのか。
一体、何に向かって、強くなりたいのか。
分からない。全く。
私はただ、頭を撫でてあげるしか出来なかった。
彼は、小さく丸まり、静かに寝息を立てていた。
あの日から、何が出来るのか、考えていた。
ずっとずっと。考え続けていた。
人の為に、考えたのは、久し振りだった。
もう、何年も考えていなかった。
人の事を考えず、独りだけになる様に、心掛けていたから。
極力避けていた。けれど、切原赤也だけは、避けようと思わなかったから。
「先輩〜!!!」
下から、私の名前を呼ぶ声がした。
犯人は、間違いなく切原赤也。
こんな事をするのは、彼以外、考えられない。
「やれやれ。世話の掛かる後輩だ。」
私は立ち上がり、テニスコートを見下ろす。
そこには、元気良く手を振っている人間がいるのが見える。
どうやら、今日は元気らしい。
それなら、良かった。本当に、良かったと思う。
そう思った時、自然と笑みが零れて来たのが分かった。
(これも、心境の変化か。いや、自分の周りの環境が変わったからか。)
まぁ・・・・・それも良いだろう。悪くない。
だから、言ってやろうじゃないか。
切原赤也。
こうなったんだから、責任重大だ。
「切原赤也!!!!」
私は、叫ぶ。
もう、これ以上声が出ないんじゃないかって位に。
二度と、こんなに叫ばない。
これは、特別なんだ。一生に一度の。
「お前が、好きだ!!!!」
さぁ、君は何て反応する?
楽しみだよ。
私は、座り込み、空を見上げた。
清々しい気分だった。とても。
君といるのも悪くない。そう感じた放課後。