ねぇ、先輩。
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You do not understand? |
「先輩って、何が好きなんすか?」
「うん?何かな。急に・・・・・。」
俺は、先輩と二人だけの昼食の最中に、質問をした。
よくよく考えてみたら、俺って、先輩の事を良く知らなかった。
だからせめて、好きな食べ物位は知っておきたいと思った。
好きな人の事だし、恋人の事だしね。
「ねぇ、教えてよ。先輩。」
「そんなに知りたいなら、少し考えてみたらどうかな?聞く前に、頭を使いなさい。」
「ぐっ・・・・何だよ、それ。俺、考えてるじゃん。どうして教えてくんないんだよ。」
まるで、俺が何も考えてないみたいじゃん。
先輩にだけは、そういう事を言って欲しくない。
物凄く、悲しくなってくる。
「俺・・・・そんなに馬鹿?」
「君、自分で自分を卑下してどうするんだい?」
あぁ・・・・・俺、泣きそう。
先輩、分かってよ。
ねぇ、全てを分かってなんて言わないから、少しは理解して。
「切原赤也。」
俺が俯くと、先輩が俺の名前を呼んだ。
先輩を見ると、彼女は、俺を見つめて微笑んでいた。
「切原赤也が、好きだ。」
俺を、好きって言ってくれた。
正直、テンションは高くなってしまったけれど、俺の質問と答えが一致していない気がする。
「先輩、俺が聞きたいのは、どの食べ物が好きかって事で・・・・・。」
「君が、好き。これだけ分かれば十分じゃないか?」
“私だって、君の全てを知っている訳じゃ無いんだから。”
そう言った時の先輩の表情は、俺よりも幼い人の様に見えた。
あぁ、分かった。
先輩は、負けず嫌いな人だから、俺が先に多く知ってしまうのが、嫌だったんだろう。
(かっわいい人だなぁ・・・益々好きになっちゃうっすよ。)
ねぇ、先輩。
今日からお互いに、一つずつ教え合わない?
これなら、平等。
不公平な事には、ならないから。
「それなら、良し。」
先輩は、笑顔で承諾してくれた。
「じゃ、先ずは俺からっすね!!」
青く澄んだ空の下。
俺達は、今日も仲良く過ごしている。