胸が、痛んだ。
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Quand
vous savez |
“好きな人が、いるんです”
久しぶりに会った俺に、はそう言った。
好きな人。
俺は、その言葉に反応してしまった。
の好きな男、それは誰なのか。
少なくとも、俺じゃないだろう。
もし、俺だとしたら、そんな事を伝えないと思うから。
あの後、彼女と何を話したのか覚えていない。
受け応えが出来たのかも、曖昧だ。
俺は、笑っていられたのか?
何か、不自然じゃなかっただろうか。
「何も言わずに、断られたのか。俺は。」
何と言う事だ。
これでは、計画が台無しになってしまう。
は、最終的に俺の妻になる筈だった。
それがどうだ?
彼女は、俺じゃなく他の男に夢中になっているじゃないか。
(知りたい・・・いや、知ってどうする?を、傷付けて良いのか?だが、そう易々と俺の計画を邪魔されるのは・・・・。)
が好きな男は、何処のどいつだろうか。
知ればきっと、俺は潰しに掛かるだろう。
その時、はどんな反応をするだろうか。
俺の事を、嫌うだろうか。
「・・・・・調べてみるか。」
俺は、の好きな男を見つけ出す様に、命令を下した。
動かないよりは、ましだろう。
こんな所で、悩んでいても何も始まらない。
「鏡夜様。」
「来たか。判明したのか?」
「はい。」
一週間後、漸く結果が判明したらしい。
白い封筒を、手渡される。
この中に、の好きな男が記されている紙が入っている。
そう考えると、開けようとする手が震え出してしまう。
このまま、開けなくても構わない。
しかし、開けなければ、の好きな男が分からない。
開けたら、を悲しませる結果になる可能性が高い。
開けなければ、このまま“仲の良い、友人”としての関係でいられる。
「・・・・・・・・・・。」
手は、依然として震えたまま。
俺は、封筒を開け、中の紙を取り出す。
の好きな男・・・・・。
「こ・・・・れは・・・。」
紙を見て驚いた。
これは、本当なのだろうか。
俺は、夢を観ている訳じゃないだろうな。
「そうか。そうだったのか・・・。」
俺は、椅子に座り、笑い出してしまった。
これが、結果か。
これが、答えだったのか。
紙に書かれた、男の名前。
それは・・・・・。
“鳳鏡夜”