嫌い。
A
bneigung
私は、彼が嫌い。
あの、不敵な笑みが嫌。
私は、彼が大嫌い。
不敵な笑みを浮かべながら、“好きだ”と言う、彼が。
彼は、本当の事を、言わない。
心の内を、固く閉ざし、鎖でがんじがらめにして、鍵を掛けている様な感じ。
だから、信用出来ない。
私は、しようとも、思わない。
一体、何人、何百人に言ってきたのだろうか。
何故、付き纏われなければいけないのだろうか。
彼は、ずっと私に付き纏ってくる。
(あぁ・・・・・・本当に。一体何を考えて行動しているのだろう。)
学校に来るのが、憂鬱になってくる。
行きたくない。
けれど、行かなくてはならない。
彼の為だけに、学校を休むなんて、そんな事は出来ない。
「おや、お早うございます。嬢。」
「・・・・・・・・・お早うございます。」
朝から、苦手な人の顔を見てしまった。
どうして、私の席の近くに、いるのだろうか。
自分の席に、いれば良いのに。
須王さんと、一緒にいれば良いものを。
「何か言ったかな?嬢。」
「いいえ。何も言っていないでしょう?それとも、幻聴が聞こえたのかしら。」
あぁ・・・・・本当に、嫌。
どうして、こんなに構ってくるの。
だから、嫌いなのに。
この感情を、どうにか出来ないか、私は考えてみた。
(見つからない・・・・はぁ・・・早く卒業したい。)
卒業すれば、離れられる。
時々パーティーで会うかもしれないけれど、毎日の様に、顔を合わせる事は、ない。
「そういえば、嬢。君は、婚約者はいないんだったな。」
「それが、何か?」
「いや、何でもありませんよ。」
そういうと、軽く会釈し、彼は去って行った。
何が、言いたいのだろうか。
本当に、あの人を見下した態度が、好きじゃない。
あぁ、嫌い。
嫌いすぎて、どうにかなってしまいそう。
こんな自分も、嫌い。
「そう。大変ね。でも、もしかしたら・・・・・好き・・・とか?」
「冗談でしょう?誰が、あんな人を好きになるの?」
「彼、かなり人気あるわよ。」
「人気じゃないの。私にとって、人気のあるなしは関係ない事。そんなモノで、人を測ってどうするの?」
「ないよりは、良いと思うけれど・・・・・。」
は、頬を膨らませてしまう。
人気がそんなに必要なのだろうか。
彼女は、環君と公認の仲。
その環君は、人気がある・・・・・らしい。
けれど、はそんな事で選ぶ人じゃ無い。
「、環君の所に行って。彼は、貴女を待っているでしょうから。」
「う、うん・・・・・分かった。」
が去った後、私は静かに本を読み始める。
何処にでもあるような話。
ただ、男女が出会い、恋に落ちる。
やがて、彼等は結婚____。
そんな話。
そんな、日常の話。
けれど、惹かれるものがあった。
だから、私はこの本を、読み返している。
こんな事が、実際にあるけれど・・・・私の周りには、無い気がする。
「・・・・・・・・どういう事です?」
「そのままだ。、鳳家の三男と婚約する事になった。幸い、同じ高校だ。鳳家ならば、我々は文句は無い。」
帰宅した直後、父から聞かされた言葉。
嘘・・・・・嘘と言って。
嫌いな人と、婚約?
そう、あの人の事だから計画だったのね。
私を、品定めしていたと言うの。
だから、近付いて来た。
「やってくれるわね。」
鳳鏡夜。
私は、やっぱり貴方が嫌いだわ。