君がいて、僕がいて、ソコ
ニハナニガアル
好きだ。
そう言ってしまえば、楽なのかも知れない。
大好きだ。
そう言ってしまえば、良かったのかも知れない。
君を、愛している。
そう言ってしまえば、簡単なのかも知れない。
でも、俺は言わない。
「私達、一緒にいて・・・・一体どうなるのかしら。」
放課後の音楽室。
まだ早い時間のせいか、俺との二人しかいない。
紅茶を掻き混ぜるスプーンの金属音が、辺りに響き渡っている。
その音しかしない空間に、彼女の声が、入り込んでくる。
「どう・・・・・とは?」
「嫌ね。聞かなくても、貴方ならわかっているでしょう?」
「まぁ・・・・・分かりますがね・・・。」
が言いたい事は、大体分かっている。
分かっているが“大体”だ。
“全て”ではなく、“曖昧”に近い。
だから、百発百中・・・・とはいかない。
「ただの友人が、どうして毎日一緒にいなくてはならないの?」
「さぁ・・・・・。」
それは、俺にも分からない。
どうして、一緒なのか。
どうして、離れようとしないのか。
どうして、一日中・・・二人でいるのか。
そこに、理由があるのだろうか。
「無いでしょう、理由なんて。」
「・・・・・無いな。」
確かに、理由がなかった。
特に利益があるとか、一緒にいて特別な事が起こるとか・・・・考えても、何も出てこない。
だが、俺としては心地良い。
といると、不安よりも安心が勝る。
がいなければ、安心よりも、不安の方が勝ってしまう。
(皮肉なものだな・・・・・。)
だが、一つ疑問が浮かぶ。
何故、そうなってしまうのか。
どうして、そう感じてしまうのか。
答えがあるのか。
応えて、くれるのだろうか。
「あぁ、そうだわ。離れてみれば分かるかも知れないわね。」
「嫌だ。」
そう言った瞬間、思わず口を手で押さえてしまった。
俺は、何を言った?
今、“嫌だ”と言ったのか?
馬鹿な。
俺が、そんな事を言う筈がない。
これこそ本当に、“有り得ない”が当て嵌まるだろう。
「嫌だって・・・変な人ね。一緒にいる理由がないのだから、いなくても構わないでしょう?」
「駄目だ。理由なんか・・・・関係ない。総てのモノに理由があると言うが・・・俺達の関係には、理由なんか別に良いだろう?俺は、必要ないと思うが?」
理由なんか、何処かへ失くなってしまえ。
考えるだけでも、馬鹿馬鹿しい。
俺は、もう考えない。
と俺が、一緒にいる理由を。
「・・・・・・もしかして・・・“愛”なんて言葉では、足りない?」
「足りないな。」
「では、何て?」
「だから______。」
言っただろう?
理由や言葉なんて、必要ない・・・・・と。