君は消えた。僕の見えない処へ































と別れて、何年が経ったのだろう。








僕としては、もう何十年も会っていない気分になっている。



















・・・・・・・僕は、戻ってきましたよ?








あの地獄の様な、深い深い闇の中から、この世界に戻ってきたんです。








それなのに、何故貴女は僕の傍に居ないのでしょう。








ずっとずっと、傍に居て欲しかった君が、隣に居ない。








此れが現実だと人が言うならば、僕は死ぬまで夢の中で生きていきたい。








そうすれば、あの頃と変わらないと一緒に居られるのだから。








ねぇ、そうでしょう?








今、何処にいるか分からない愛しい人よ。








どんなに願ってもこの願いは成就しそうにないけれど、僕はずっと願い続ける。








に、会えるように。








と、また二人で笑える日が来るように。








最後には、貴女と幸せな家庭が築ければ良い。








そう願い続けますよ。








ですから、戻ってきて下さい。




















































「クフフ・・・・・僕も案外女々しい男だったんですね。」














そういえば、千種達は何処にいるんでしょうね?








先程から、捜し回っているものの・・・・・見当たりませんね。








何か、あったんでしょうか。








否、そんな筈は無いでしょう。








昨日まで、何とも無かったのですから。








・・・・・・かといって、今日何も起こらないとは限らないんですけどね。








今までの状況を、きちんと把握しておきたかったのですが、仕方ありませんね。








やはり、役に立たないんですかねぇ・・・・・。








役に立たないならば、捨ててしまった方が良いんでしょうね。








まだ、利用価値は下がっていないと思ったのに、どうやら間違いだったみたいですね。
















































「懐かしい・・・・・。」













ふと、気付いて見回した場所。








そこは、と初めて出逢った場所。








あの時は、お互いの事を全く分かっていなかった。








ただただ、互いに互いを利用できる程度の関心しか無かった。








それが、何時からあんな風に思い始めたのか。








という人間を、一人の女性として認識し始めたのは、何時だったのだろう。








自分の身勝手な気持ちを押し付け、危険だと分かっている領域に引きずり込み、自分の傍に縛り付けていた。








あぁ・・・・・僕はなんて最低な奴なんだろう。








あの時程、後悔した時はなかったし、自分がどれ程最悪な人間なのかを認識させられた時はなかった。








時というのは、何時の時代も待ってはくれないから、思ったならば、直ぐに行動を起こすのが一番良いんじゃないかと思う。









それが、間違いだったのだろうか?









その考えが、過ちを犯した根源なのかもしれない。








かといって、あの時あぁしなければ、彼女は僕から離れていったに違いない。








何処か違う場所に向かい、違う男と恋をする。








そして僕は、幸せそうに過ごす彼女を遠くから見守る事しか出来ない男になる。








そんな関係は、嫌だった。








そんな繋がりになるなら、僕は彼女を縛り付けていた方が、良いに決まっている。








さもないと・・・・・・・僕は、僕がどうなるか解らないから。








自分自身さえ、見失ってしまうから。








最悪、を殺す事になりかねない。








世の中には、未然に対処すれば避けられる事と、予測不可能で対処出来ずに避ける事が困難な出来事がある。








僕の場合、前者に当たる。








だから、対処した。








彼女を、縛り付け・・・・・危険を承知で、招き入れた。








あれしか、無かった。








あれしか、無かったんですよ。








恨まれるのは、僕の方です。








憎まれるのは、僕の方です。








嫌われるのは、僕の方です。








殺されるのは・・・・・僕の方なんですよ。

















































「ん・・・・・・?この臭いは・・・。」














嫌な予感がする。








この臭いは、僕が嗅ぎ慣れた臭い・・・・・。








まさか・・・・・この場所で、何かあった?








気配は、感じられなかった。








昔を懐かしんでいたから、周りに注意を払っていなかったせいもあるけれど、怪我人が何処かにいる事は間違いない。








何故なら、この独特な嫌な臭いは・・・・・血だ。








この臭いに慣れてしまったせいか、別に不快感は無い。








慣れというものは、本当に嫌ですね・・・・・・。








そんな事思いながらも、神経を研ぎ澄ませ血の臭いがする方へと歩き出した。













































「何・・・・ですか・・。」














太陽の逆光で、誰かは認識出来ないけれど・・・・地面に倒れ込んでいるのが二人。








そして・・・・僕に背を向け立っている人物が一人。








地面に倒れている二人の周りは、何故か濡れている。








と、いうことは・・・・・アレが、血?









僕との思い出の場所を汚すとは・・・・・赦せる行為ではありませんね。








ふと、立っている人物は僕の存在に気付いたのか、後ろを振り向いた。

















































「久し振りね。」
















聞き覚えのある、女の声。




















































「犬と千種・・・・・・此処にいるわよ。生きてるか死んでるか知らないけど。」















以前よりも、長くなった黒髪。



















































「そうそう。貴方、ボンゴレの犬になったらしいわね。」















以前、温かく見つめてくれた瞳は、冷たい視線を僕に向けている。


















































「驚いたわよ。貴方がまさか犬になるとは・・・・ね。」















驚いたのは、僕の方だ。
君は、数年も経たない間に、そんなに美しくなったんですね。













































・・・・・・・。」








再会出来たのは嬉しい。



















ですが・・・・・ですがね・・・・・。
















































「君が・・・・二人を殺したんですか?」







「さぁ?貴方は、どう答えて欲しいのかしら?」























からかう様な口調で僕に尋ねる彼女。















地面には、千種と犬の血が交わり既に何処からが千種で、何処からが犬の血なのか解らない程に床を濡らしていた。


















もしも、愛しい人がやった行為なら・・・・・僕はどうしたら良い?


















。貴女を殺すしかないのですか?


















再会の場所。


















再会した、人物。


















僕は、その場に立ち尽くすしかないのでしょうか?


















あぁ、神は意地悪だ。  


















僕に又、試練を与えるというのですか・・・・・・?