出会うのが、運命だったって思いたい。

































































精一杯の、私の気持ち








































































「こ、此処は・・・どこ・・・?」










迷い込んだのは、一人。













彼女は、この暗闇の中・・・・・戸惑いを、隠せない。













迷える子羊。













今の状況は、その例えが一番相応しく感じる。













ねぇ・・・・ベルゼネフ。













貴方も、そうは思いませんか?













一体、どんな人が迷い込んだのでしょうか。













声を聞く限りでは、女性。













迷い込むのは、きっと新入生。




















「で、電気・・・・電気を・・・・。」




















手探りで、スイッチを捜し始めているのだろう。













出入口の所に行き着くまでに、数回椅子にぶっかってしまう。
























































(でも・・・・・・。)





































































残念。










「つ、点かない・・・どうして・・?」










光が苦手な私は、電気が点かない様に細工をしてあるんです。










「こうなったら・・・あの黒いカーテンを・・・・・。」










(え・・・・カ、カーテン・・・??!)











































しまった!!













カーテン・・・・あの、黒カーテンは・・・・!!!













細工は、していない。













まさか、カーテンを開けられるとは考えていなかった。













カーテンに向かう、女性。













ベルゼネフと私は、彼女を止めに向かう。






























































「これで・・・「ちょっ・・・ちょっとまっ・・・・!!!」













































































追い付いた。













そう、思っていたのに。






























































「え・・・・・・・・・・?」











































































遅かった。













後少し、早ければ良かったのに。















「う、うわぁぁぁぁ・・・・!!に、日光!!」



「きゃぁぁぁぁ!!!!」















私の叫びと、彼女の叫び声が重なる。













もう本当に、同時だった。

























「す、済みません・・・・カーテン・・・カーテンを・・・・・。」










「は?カーテン・・・??」












































まずい・・・・・意識が・・・・。













日光は、私の天敵。


























































「だ、大丈夫ですか!!!」











































意識を、手放すしかない。













恥ずかしいけれど・・・・。













でも、一瞬。













ほんの数秒。













見えた・・・・・彼女の、顔が。






















































(美しい・・・・・。)




























































それが、私のあの時の感想だった。




















































































「あ、あのー・・・・さん・・・。」










あの日以来、私は彼女の元へ脚を運んでいる。













さんに、会う為に。













毎日、毎夜。













頭の中に浮かぶのは、さんの事ばかり。













彼女の事しか、考えられない。













そう・・・・・私は、恋に落ちた。













さんという、美しく可憐な女性に。


















後二年。













後二年、遅く産まれていたら良かったのに。













そうすれば、毎日彼女と顔を合わせて、沢山話しは・・・・・まぁ、無理ですね。













今の状況を見たら、誰だって一目瞭然。






























「ベ、ベルゼネフがですね・・・・一目、貴女にお会いしたいと・・・・。」















今、頼りになるのはベルゼネフ。













彼は、私とさんの仲介者。













ベルゼネフがいなかったら、私はさんに話し掛けることも不可能だった。






























「ベルゼネフが・・・・・?こんにちは、ベルゼネフ。フフ・・・・可愛い。」





「っ・・・・そ・・・そうですか・・・・?」















ベルゼネフが、頭を撫でてもらっている。













それは、直にではないけれど、私の手に触れているという事。













そう考えると、頭が可笑しくなりそうで。



































「あ、忘れていました。さん、これを・・・・・。」










私は、彼女に差し出す。













そう・・・・一輪の華を。













初めて出会った、次の日からずっとさんにプレゼントしている。













紅い紅い、綺麗に咲き誇る薔薇を一輪。













それは、私の気持ちを意味している。













嘘、偽りの無い、真実の愛。













さんは、気付いているのだろうか。













私が、伝えたい言葉を・・・・。













なかなか言えない台詞を、この綺麗な一輪の薔薇に託している事を。















「有り難うございます。」















嬉しそうに微笑む、さん。













笑顔を向けられている薔薇が、羨ましい。













時に、恨めしい。













私は、彼女が好きで。













好きで、スキで。













この感情は、他のモノには変えられないし、変えたくない。

























「私、薔薇が好きなんです。」









「そ、そうですか・・・・好き・・・・なんですか。私を好きになって欲しいんですけど・・・・・ね・・・。










「え?今、何か・・・・。」










「い、いいいいいえ!!何でもないんです!じゃ、じゃあ!!」














































































「また言えなかったんですか?猫澤先輩。」










「は、はい〜・・・・・須王君・・・・私は一体、どうしたら・・・・。」










「こうなったら、デートしかありませんよ!!!」










「・・・・・・・・・・・はい?」















私の耳を、疑うべきなのか。













須王君の、考えを疑えば良いのか。















「デートですよ、デート!!」










「それは・・・・無理ですよ。私は、暗闇でなくては・・・。」















無理だ、そんな事。













私が、デートなんて出来るはずが無い。













もし出来ても、彼女が笑い者にされてしまう。










私は、そんな事・・・・・嫌です。



















































































































次の日。













今日も私は、向かう。













彼女がいる、教室に。













限られた時間の中、話せるのはほんの数分だけ。













その時間を、無駄には出来ない・・・・・・。















































さん・・・・こんにちは。」










私は、会いに来た。













また、一輪の薔薇を持って。










「あ、有り難う・・・ございます。あの・・・・気になったのですが、何故毎日薔薇を・・・・?」














































































“何か、意味があるのですか?”












































































ショックだった。













本当に。













私の気持ちは、伝わっていなかった。













沢山、沢山。













願いを込めて、手渡していた薔薇の華。










「猫澤先輩・・・・・?」










「あ・・・・の・・・ですね。これには・・・・。」











































































意味が、ある。





























































とても、意味深な。
































































言ってしまおうか?









































































でも、もしも・・・・嫌われてしまったら?














































































「そ、そうなんですよ!!ベルゼネフが・・・・貴女に・・・・・・貴女に・・・・・・・です・・・・・ね・・・・・。」




























































最悪だ。













こんな自分、最低だ。















いなくなってしまえ。













消えてしまえ。













誰か・・・・削除してくれないだろうか?














































「・・・・・・済み・・・ません。」
















































私は、逃げ出した。













さんの、目の前から。

























































































(なんて、馬鹿なのだろうか。)















あの日から、私は、さんに会っていない。













気持ちは、募っていくばかりで。














食事だって、まともに受け付けやしない。








































さん・・・・・。」















































手帳に挟まれている、彼女の写真。













私は、それを見つめる。













届きそうなのに、それは幻で。













届いた所は、空振り。













さんは、今頃何をしているだろう。













私の事を、考えてくれるだろうか。














想って・・・・くれていますか?





























































「好き・・・・なんです。貴女が。」






























































「初めて出会った・・・あの日から・・・・。」






































































「なら、伝えれば良いじゃないですか。」



「!!!!!」










後ろにいたのは、須王君。













彼は、窓から入ってくる。










「ど・・・・どうして此処が・・・・。」










「先輩がいる場所は、たいてい暗いですからね。すぐに分かりましたよ。」




















・・・・・・あぁ・・・そうですか・・・・。




















「猫澤先輩、言うべきですよ。俺は・・・・・さんは、待っていると思いますよ。」










「気休めなんて、言わないで下さいよ。須王君。ますます悲しくなってきます。」










「俺は、気休めなんか言いませんよ?だって・・・・・・。」






































































“だって・・・・・”と、須王君は言った。













その時の私は、どんな表情をしていたんだろう。













きっと、変な表情をしていたに違いない。






















































































「・・・・・・・・・よし。」










数日後。













天気は、快晴。













午後も、天候は変わらない。













私の心は、曇り。













この曇りが、雨になるのか晴れになるのかは、分からない。













今日は、ベルゼネフはいない。














黒いマントも、脱いである。













教室の中は、暗闇のまま。













周りを照らす光は、蝋燭の炎。



























































「猫澤先輩?」










私の名前を呼ぶのは、女性の声。













その声の主は、さん。










「こ、こんにちは・・・・・さん。」










貴女の顔を、もうどの位見ていなかったのだろうか。













感情が、高ぶる。


























(落ち着け・・・・落ち着くしかない・・・・・。)

























自分自身に、言い聞かせる暗示。













深呼吸を、数回。














もう・・・・・大丈夫だと思う。































「この間は、済みませんでした。突然、逃げてしまって。」










「いいえ。気にしていませんから、謝らないで下さい。」




















さんは、微笑んでくれた。













あぁ・・・・・貴女の微笑みは、どうしてそんなに優しいんだろう。













まるで、聖母マリアの様な・・・・・温かい微笑み。




















































「今日は・・・・さんに、どうしても伝えたい事があるんです。」















まさか、この時がくるなんて。













自分は予想していなかったし、他の人だって、きっとそうだろう。














































「あの・・・・・・・・。」










手が、震える。













今、手の中にあるのは、彼女に渡したいモノ。













落とさない様にしないと・・・・・・。






































































「この間・・・・尋ねてきましたよね・・・・何故、薔薇を渡すのかと。」










一歩、さんに近付く。














































































「あれには・・・・・意味が、あるんです。」










そう、大事な大事な意味が。













































































「今日、意味を教えます。」










逃げちゃいけない。













私は、彼女に差し出す。













そう・・・・・薔薇の花束を・・・・。





















































「その・・・・・私・・・私は・・・・貴女を・・・・貴女のことを・・・・!!!」































































“愛しています_____。”





























































言った。













遂に、言えた。













後は、さん次第。













貴女は・・・・・私を光で照らしてくれますか?





















































それとも・・・・・。





























































































「その言葉・・・・・本当ですか・・・・?」










「え・・・・?う・・・・うわ・・・っ・・・!!!!!」















危うく、転んでしまうかと思った。













これは、本当に突然で。













まさか、さんが抱き付いてくるだなんて、予想しなかった。






































・・・・さん・・・?」










「わ、私・・・・私も・・・・好きです!!!!」















































今、彼女は何て言ったのだろう。
























































私・・・・・。
























































私を・・・・・。





























































好き?














































































「え・・・・・えぇぇぇぇぇ・・・・・・!!!!!」


























嘘だ。













彼女が、私を好きだなんて。













私みたいな人間を、好きになってくれるなんて・・・・・。








































「し、信じて・・・・良いんですか?私、信じてしまいますよ?」










「構いません。だって・・・・本当の事ですから・・・・・。」










「・・っ・・・・さん・・・!!!!」













































離さない。













私は、貴女を絶対に離したくない。













須王君が言ってくれたのは、真実だった。













ちょっとでも疑ってしまった事に、懺悔を。










謝りに、行かなくてはいけないだろう。

































































でも・・・・・・。









































































さん・・・・・・。」






今だけは、二人だけの時間にさせて下さい。









彼女と、二人だけでいたいんです。












私は、頬にキスをする。














今はまだ、唇にする勇気がないから。













どうやら神は、私にそこまでの勇気をくれなかったらしいです・・・・ね・・・。












いつか、貴女の唇に口付けが出来る日が来ます様に・・・・・。