何故、あの時仁王は怒鳴ったのか。
遅い、始まり。そして、予感
。
私には、分からない。
彼は、何を想ったのか。
良い迷惑だったのだろうか?
自分で、見つけられると?
いや、あれは違う。
何か・・・・そう。
傷付いた、幼い子供の様。
いつもの、仁王は、そこには居なかった。
何処にも居ない。
あの時、あの場所にいた仁王は・・・・・・・。
あの日から、仁王と会っていない。
同じクラスじゃないから、会う事も滅多にない。
だから、理由が聞けない。
何故、怒鳴ったのか。
何故、泣きそうな表情を浮かべていたのか。
なぁ、仁王。
お前は、私に何を伝えたかったんだ。
教えてくれ。
言ってくれなければ、分からない。
そうだろう?
それとも、仁王は、言わなくても分かってしまうのか?
だとしても、私は、そんな力を持ち合わせていない。
だから、言って。
お前の口から。
私に伝えてくれ。お願いだから。
そう言えば、あの時から、仁王の事ばかりを考えている。
私なりに、考えては見た。
でも、結果的に、何もない。
プラスマイナスゼロ。
後輩には、謝っておいた。
謝っている時、私は、仁王に対して怒っていた。
どうして、怒鳴るんだ。
私は、仁王の為を思って・・・・・・と。
だけど、よく考えてみると。違う。
悪いのは、私。
仁王が、怒鳴る原因を作ってしまったのは、私なんだ。
彼は、そうそう怒らない。
何か、本当に何かがなければ。
苦笑しながらも、許してくれる。
仁王雅治は、そんな人物。
どこか、大人びていた。
だけど、そんな中でも、子供っぽい感じも見え隠れしていた。
「分かるか。馬鹿。」
私は、屋上で呟いた。
こんなにも、寂しいものなのか。
何故、こんなに泣きそうな気分になるんだ。
胸が、締め付けられる。
何なんだ、この気持ち。
こんなにも、切なくて、悲しい。
仁王の気持ちも分からないが、自分の気持ちも分からない。
私は、今何をしたいのだろう。
あぁ、自分の気持ちまで分からないなんて、どうかしている。
しっかりしないと。
「・・・・・・・・・・・・・・・・成る程な。」
私は、一人笑った。
そうか、そうなのか。
あぁ、答えは、分かっていた。
分かり切っていたんだ。
だけど、こういう状態にならないと、分からなかっただけ。
くだらない。実にくだらない。
くだらな過ぎて、自嘲してしまう。
どうして、こんなにくだらないんだ?
本当に、全く持って、くだらない。
遅い。始まりだ。
かなりな。こんなにも、時間を無駄にした。
何をやっていた?
馬鹿馬鹿しい。
こんな自分が、嫌いだ。
仁王、お前。
お前も馬鹿だな。本当に。
二人して、時間を無駄にしていたぞ?
どうしてくれるんだ。
お前にも、責任がある。そうだろう。違うか?
答えて貰おうじゃないか。
私の、一日。
今日は、考え続けるのは、無駄じゃなかった。
さぁ、動き始めた。
これを、止める訳には、いかない。