「誕生日ねぇ。・・・それで?」
「お前を、俺にくれんかのぅ?」
俺に、君をください
自分でも、大胆発言だと思う。
だが、俺の誕生日。
どうしても、が欲しかった。
この願が叶えば、最高の誕生日プレゼントになるに違いない。
俺は、どうしてもが欲しい。
「はぁん・・・・?お前、馬鹿だな。私が、プレゼント?私は、高いんだぞ。」
・・・・・・・・・・・やはり、そういう答えが返ってきますか。
思った通り、なかなか手強いお相手。
俺の手に入らないか・・・・・。
「高いのは、承知の上じゃ。」
「じゃ、プレゼントはこれで我慢しろ。」
はそう言うと、俺の掌に何かを置いた。
「え、なしてチ○ルチョコ?」
俺の掌に置かれた物・・・・それは、チ○ルチョコ。
しかも、たった一個。
これが、俺の誕生日プレゼント?
何かの冗談?
俺、泣いても良い?
「何だよ、その顔は。有り難くない?私がやったのに・・・・・あぁ、要らないのか。要らないんだな?じゃあ返せ。」
「わー!わー!!要る要る要る!!有り難く貰うけぇ!!」
俺に手渡したチ○ルチョコを奪い返そうとするから、俺は必死に守った。
困る。
絶対に困る。
折角、から貰ったプレゼント。
確かに、たった一個と言うのは悲しいけれど、プレゼントはプレゼント。
「フン。始めからそうしていればいいものを・・・・・。」
“ま、おめでとうと言ってやるよ。”
は、俺に祝いの言葉を残して、その場から居なくなってしまった。
「最悪じゃ・・・・・。」
「いや、誕生日だからって、本人を“くれ”はないっしょ。」
「うっさい、赤也。欲しいもんは、欲しいんじゃ。」
俺は、赤也を軽く小突いた。
を、彼女にしたい。
誕生日までに・・・・と考えていたのに、見事玉砕。
俺の願いは、彼女にも神様にも届かない始末。
俺は、そんなに悪い事をしたんか?
「でも、あんな人をよく彼女にしたいなんて考えますね。」
「・・・・・・・・・・・赤也、呪われたいか?をけなす奴は、ただじゃおかん。」
赤也は、を知らないから、そんな事を言えるんだ。
俺は、誰にも見せていない筈のを知っている。
これだけは、絶対に誰にも言わない。
俺だけの秘密だから。
「にしても・・・・何とかならないかのぅ。」
俺は、考えた。
を手に入れる為には、何が必要なのか。
は、どうして彼女になってくれないのか。
「何かが足りないんじゃ・・・何かが・・・。」
「仁王、何なんだよ。話しって。」
放課後、俺はを呼び出した。
もう一度、言いたかったから。
俺がどれ位本気なのか、に伝えたかった。
「なぁ、早く帰って見たいドラマがあるんだが。」
「俺と付き合ってくれんか。俺としては、それが最高のプレゼントになるんじゃが。」
「はぁ・・・・お前、まだ諦めてなかったのか。」
「あぁ、諦めん。俺は、振られても振られても、諦める気はなか。お前が、好きじゃ。」
俺は、を見つめる。
今の俺には、しか見えない。
「大体なぁ、誕生日に告白なんかするな!!言っただろ?私は“物”じゃないんだよ!!」
俺を睨み付け、は突然叫んだ。
「いいか?お前、出直して来い!私は絶対に・・・ぜっっっったいに恋人にならない!
今日は、なってやらないぞ!!本当に、馬鹿な奴だ。馬鹿馬鹿しい!良いか?出直してこいよ!!!」
は、身を翻し去ってしまう。
俺は、茫然としたまま、彼女を見送るしか出来なかった。
だが、先程の彼女の言葉を何度も何度も頭の中で繰り返してみる。
“今日はなってやらない”
確かに、そう言っていた。
は、恥ずかしそうにしながら、そう叫んでいた。
「・・・・・・・・って事は・・・。」
俺は、自然と笑みが零れてくるのが分かった。
笑いが、止まらない。
「明日は、良い日になりそうじゃの。」
良い日になる。
それはもう、確実だろう。
そして、俺とにとって記念日になる事も確実だと、俺は思いながら、練習へと向かった。