泣いた。













































Nous voudrions pleurer




































































泣けて来た。

理由は、分からない。






その日の夜、俺はずっと泣き続けていた。

理由を、ずっと考え続けていた。




















(理由は、分からない・・・何でじゃろ。)




















俺の隣には、がいる。

ベッドの中、彼女は静かに寝息を立てている。















愛しい、

俺が、ずっと傍にいると、誓った相手。






































“此処に、いるから”






































そういった俺に、は何も言ってくれなかった。

あの時、君は何を思っていたのだろうか。






























は、答えてくれんからの。正直、何も言われないのは、辛い。)





“俺は、こんなに想っている”





俺がに対し、言葉や態度で表しても、彼女はなかなか表さない。













どうしてなのだろうか。

俺に対して、愛がないから?
















他に、気になる奴がいる?

それとも、俺の気持ちが負担なのか?





















この不安は、どうやって取り除けば良いのだろう。

その方法を、誰が教えてくれるのだろう。















俺は、ベッドから抜け出し、ベランダへと向かった。

このまま泣き止まないならば、が目覚めてしまう。

どんなに、声を押し殺しても、何時かは目覚める。








































「俺・・・・一人芝居やっとるんか?」



独りで盛り上がり、独りで悲しんでいる。

への愛は、変わらない。





















しかし、不安は相変わらず、溢れ出している。

このまま流れ続けていれば、何時かは枯れるだろうか?

それは、淡い期待だろうか。
















































































「・・・・・・此処にいたのか。」











































































未だに泣き止んでいない俺の前に、がやってきた。

どうやら、ベランダへと続くドアを開けっ放しにしていたらしく、風で気付いたらしい。

俺とした事が、とんだヘマをしたな。
















「また、泣いていたのか?」





「あぁ。」





「雅治は、泣き虫だな。」





「・・・・・・以前は、違ったんだがの。」

























そう。

何時からか、こんなに泣き虫になっていた。

前は、泣く事を数えた方が早かった。

今は、泣かない時を数えた方が、早い位、泣き虫になっている。


















「今日は、何故泣いた。」



「何でもなかよ。」



「嘘だ。」



「俺、嘘付かんぜよ。」



「詐欺師の癖に。私には、分かるんだよ。お前は、嘘を付いた。」



これは、降参するべきなんだろうか。


































俺の・・・・負け?

正直に、言った方が良い?













































































の事を考えていたら、泣けて来た。・・・・俺の事をどう想っているのか、全く言わないじゃろ?俺、不安。だから、泣いてた。」













































































俺は、足元を見ながら、に話した。

今、はどんな表情をしているのだろう。

そして、俺の言葉を聞いて、どう感じたのだろう。





















怖い。























だから、彼女を見る事がどうしても出来ない。




































































「私は、お前が隣にいなければ、眠れない。」













が、沈黙を破った。























































「私は、“仁王雅治”という、一人の人間がいる事に感謝している。」












俺は、視線を下からの方へとゆっくり向ける。





























































「私は、お前の姿が見えなくなってしまうと、凄く不安になる。」













は、泣いていた。

涙は頬を伝い、止まる事なく、今も溢れている。























































「私は、お前に愛の言葉を紡がれると、幸せになれる。」
























幸せ・・・・・俺が、君の傍にいると、幸せになれる?




































































「私は・・・・・私は、雅治を愛している。」















初めて、の口から聞いた。





























































「済まなかった。お前が泣いていた原因は、私の行動にあったんだな。お前は、こんな私の傍に・・・・ずっといてくれるのか?」



















は、何度も何度も、俺に謝罪の詞を伝える。



・・・・自分を責めるのは、止めんしゃい。」



俺は、そんな彼女を抱き締めた。















もう、良いんだ。

の口から、聞きたかった言葉が聞けたから。

だから・・・・だから、

泣かないで。
























俺は、傍にいる。

これからも、ずっと。
























































「愛しとる。」






俺は、にキスをした。




優しく・・・・壊さない様に。




重ねた瞬間、彼女の涙の味が、口の中に広がった。