伝えたい。
ありがとうを・・・・・
「これが、良いんじゃないかな?」
「駄目。」
「じゃあ、これはどうだ?」
「駄目。」
「やっぱ、これっすよね!」
「駄目。」
「では、これは如何ですか?」
「駄目。」
「やっぱ、菓子だろぃ?」
「駄目。」
「これは、どうだ?喜ぶ確率は高いぞ。」
「駄目。」
「こちらの、木彫りの熊の方がよかろう!!」
「・・・・・・・・・真田、あの世逝き。」
「何故だ!!!?」
「ねー・・・・・腹減ったんすけど。」
「黙りんしゃい。赤也。」
俺は今、へのプレゼントを選んでいる。
もうすぐ、彼女の誕生日だから。
はきっと、いらないと言う。
でも、俺はやりたい。
だから、こうやって野郎共を連れて来たんだが・・・・・役に立たん。
失敗だ。
俺、何で呼んだんだ。
何を考えていたんだ、野郎共を呼んだ時の俺。
「仕方ないの・・・・帰るか。」
「えぇ?!おごっ「黙れ。」
誰が、奢るか。
役に立ったならば、五百円以下で奢ってやる。
だが、役に立たないのに・・・・奢る奴が、いるか?
「じゃ。」
俺は、奴等を置いて帰った。
もう此処には、用はない。
(何をやるかのぅ・・・・・は、どうじゃろ。)
「。遅くなった。眠ってた?」
「いいえ。」
それを聞いて、安心した。
眠っていたならば、凄く悪いから。
彼女の眠りを、邪魔したくない。
「今日・・・なして一緒に帰れなかった?」
「そ・・・・・それは・・ですね・・。」
は、返事を濁す。
今日、は俺と帰るのを拒否した。
俺としては、泣きたい位悲しかった。
もしかしたら、嫌われたかと不安になる。
俺の不安要素は、。
弱みは、。
少しでも違和感を感じると、不安になる。
男としては、情けないかもしれない。
でも、不安になるものはなるのだから、仕方がない。
ならない時には、ならないのだから。
「俺、寂しい。」
「は、俺の全て。」
「冷たく・・・・しないで。」
悲しい。
寂しい。
虚しい。
君の声は、電話越しで聞こえるけれど。
君が、今どんな表情をして、どんな仕種をして、何を見つめて俺の声を聞いているのだろう。
会いたい・・・・・会いたいよ。
「今から、会いましょうか。」
耳を、疑った。
それもそのはず。
から誘ってくれたのは、初めて。
そして、俺の今の想いと重なったから。
どうして、分かった?
俺、口にはしていない。
君は、人の心の中が読めるの?
「雅治。」
「・・・・。」
俺達は、公園で待ち合わせをした。
何時も、登校の時に待ち合わせをする場所。
「お待たせしました。」
「いや・・・・ありがとう。嬉しい。」
さっきまでの悲しさは、一体何処に行ったんだろうか。
彼女に会っただけで、吹っ飛ぶなんて。
(単純。)
「実は・・・・雅治に、渡したい物がありまして・・・・。」
「俺に?」
まさか、指輪を返すとか?
そんな事になったら、大変だ。
その為に、会う事を提案したのだろうか。
いや、違う。
違うと、思いたい。
最近の自分は、どうも物事を悪い方に捉えすぎている。
「これです。」
が、そういって出したモノ・・・・それは・・・・・・。
「ゆび・・・わ・・・・じゃない・・?」
違った。
俺が嵌めた、指輪じゃなかった。
指輪は、今も薬指に納まっていた。
あぁ・・・・・良かった。
は、指輪を返そうとしたんじゃないんだ。
「貴方が欲しがっていた時計と、交換日記です。」
「交換・・・・日記?」
交換日記・・・・・部誌みたいなモンか?
交換日記なんか、やった事がない。
は“一日の出来事等を書いたりして、一日交代で日記を書きましょう”と言った。
これは、俺の事をもっと知りたいという事?
そう捉えても、良いんだろうか。
・・・・・・・・あ・・・俺が、プレゼントをあげる筈だったのに。
俺が、プレゼントを貰ってどうするよ。
俺、凄い情けないんですけど。
「交換日記なんて、嫌ですか?」
「あ・・・・いや。違う違う。嫌じゃなかよ。」
そうじゃなく、こんな自分自身が嫌だ。
「なーんか・・・・調子狂うんよ。に、恋しとるからかの。」
俺がそう言ったら、は黙ってしまった。
きっと、顔を真っ赤にしているだろう。
俺は、彼女がくれた時計を腕にした。
「サンキュ・・・。」
今伝えられる言葉は、感謝の言葉。
次に伝える言葉は“おめでとう”であって欲しいと願うばかり。