君と歩んでいけば、何かが変わるかも知れない。































“一緒に、歩んで貰いたい”















鏡の前で、何度も練習した。








愛する彼女を思い浮かべ。







何十回、何百回と数えるのも解らない位練習を繰り返した。








けれど、本番は一回しかない。








何度練習したからと言って、成功するとは限らない。








失敗か、成功か。








答えは、この二つのどちらかしかない。








そうは言っても、俺が勝手に選択することは不可能で、
結果がどうなるかも、そこら辺に転がっているわけじゃないから解らない。









結局、行動を起こさないと結末がどうか解らない。









かといって、失敗はしたくないと思う。






だから、俺はどうにか成功するように、イメージトレーニングをしながら歩いていた。

































(・・・・・・・駄目じゃ・・・今になって、心臓の心拍音が激しくなってきた。)




































なんて、情けない自分。








テニスでは、この緊張感が心地よく感じるのに、こういう時に限って嫌な方にしかとれない。








俺は、本当は弱いんだ。








強がっている振りをして、解らない様にしているだけ。








だから、今まで付き合ってきた女、部活の連中、クラスメイトや親にまでそういう振りをしてしまうようになってしまった。
























































“何故、何時も強がっているのですか?疲れる事は、ありませんか?”










































驚いた。








会ったことも、話したこともない女に、そう言われた事に対して。








どうして分かった?








俺は、今まで誰にも気付かれた事がないのに。








今まで、上手くやって来たのに。








それは、やってきた“つもり”だけだったのか?























































「そうか・・・・・バレてたんじゃな。騙すのは得意なんじゃけど。アンタは、騙せないってわけじゃの。」







「騙せないと言いますか・・・・私が、鋭いだけです。昔から、敏感なもので・・・・・。」














世の中には、騙せない人間もいたのか。








勉強になった。勉強なったけれど、俺は知りたい事が出来た。














































「名前。それから、会ったことも無いのに、どうして分かった?」














不思議だった。








知りたいと思った。








彼女なら、俺の事を分かってくれるんじゃないだろうか。








そんな期待を、自分の胸に抱きながら。








すると、俺の目の前にいる彼女は、こう言った。

















「名前は、です。それから・・・・
仁王先輩は知らなくても、時々教室からテニスコートを見ていましたから。」




























あの時の笑顔が、俺は忘れる事が出来なかった。








それ以来、彼女がテニスコートを見ていてくれているかが気になって、視線を校舎に向ける日々が続いた。








そんな日々の中、俺は・・・・・あの日から、に会いたくて会いたくてどうしようもなくなってきた。


















俺、どうしたんだろう。


















俺、遂に可笑しくなったのか。



















に、こんなにも会いたいと思ってしまうなんて。


















こんなにも、会って話をしたいだなんて。


















一回しか、会っていない。


















一回しか、話をしていない。


















それでも、彼女の事を想って瞼を閉じると、胸が熱くなっていくのを感じる。


















この気持ちは、何なのかと考え続けた俺は、遂に答えに辿り着くことが出来た。


















だから、言おうと決めたあの日から、ずっと一人で練習し続けた。


















練習したら、次はいつに伝えれば良いのかを考えた。


















そして、決めたんだ。


















今日にしようと。


















今日、彼女に会って、俺の本音を伝えようって。


















ねぇ・・・・・。君は、俺をどんな気持ちで見つめていたの?


















あの時、どうして俺に話し掛けてくれたの?


















君は、勇気を持っていたのだろうか。


















それとも、自然と伝えたくて、話し掛けてきただけなのだろうか。



















それは俺には解らない。


















俺は、君じゃないから・・・・・本当の事は解らないけれど、少し考えてみた。


















あの時、どんな気持ちだったのか。

















俺を、どんな風に見ていたのか。


















知りたい・・・・・知りたいと思う。



















































・・・・・待たせて悪かったの。」







「いいえ。それで・・・・・お話とは?」







「ん・・・・・あぁ・・その・・・・。」














上手く言葉が出てこない。








あんなに練習したのに。








やはり、あの練習は意味を持たなかったらしい。















「俺、やっぱり弱いみたいじゃ・・・・・恥ずかしいけど、こういった本番には弱い。」







「本番・・・・ですか?」







「そう。本番。」














俺が、どれだけを想ったか。








君を想い、どんなに告白を練習したか。








それを、どうしても伝えたくて、此処まで来たと・・・・・。








俺は、君と歩いていきたい。








ずっとずっと、目の前に続いている路を歩んでいきたい。








それが俺の願いで、望みでもあるから。

















































「俺と・・・・この先、何があっても一緒に手を繋いで、歩いてくれんかの・・・・・?」




















































俺は、精一杯伝えられたんじゃないかと思った。








今の気持ちと、これからどうしていきたいかという意思を。








なるべく、最小限に抑えて言ったつもり。








これを、はどう受け止めてくれるのだろう。








俺の願いを、断ってしまうのだろうか。








それは出来ないと、俺に告げるのだろうか?








それだけは・・・・・それだけは、どうか・・・・・。
















































「私で良ければ、一緒に歩ませて下さい。」





















































視線を上げた。








どう反応したら良いのか分からなくて、困ってしまった。








でも、そんな俺を見たは、俺の手を握り歩き出した。








そして、俺にこう言ったんだ。


















今日からは、恋人。


















どうぞ、宜しくお願いします。


















強がっても良いけれど、私の前では出来ればしてほしくありません。


















何故なら、二人で手を繋いで歩いていくのですから。



































今日、実感した。








俺は、君と歩けば何かが変わる。