あの頃は、何も考えていなかった。
あの頃、二人は。
先輩と、付き合って一年。
毎日が、幸せで、幸福に満ちあふれていた。
誰もが、羨む恋人。
それが、俺と先輩。
ちょっとした、自慢。
だけど、ある時、喧嘩をした。
ちょっとした事で。
先輩が、怒ってしまった。
こんなの、初めて。
今まで、先輩が、怒る事はなかった。
俺も、怒るような事はしないと心掛けていたのに。
先輩、俺は何をしたんすか?
心当たりが、全くないんです。
最近、俺を見ない様にしているのは、そのせいだったんですか?
分かりませんよ。
教えて欲しい。納得できないから。
「好きな人が、出来たの。」
話しもしなくなって、数ヶ月。
先輩から、呼び出され、突然告げられた。
俺以外に、好きな人?
そんな馬鹿な・・・・・・。
嘘だ。
俺は、信じない。
この間まで、俺の事を“好きだよ”と、恥ずかしそうに言ってくれた先輩。
その、先輩に、好きな人?
冗談ですよね?
俺を、驚かそうとしているんすよね??
そうでしょ?何とか・・・・何とか、言って下さいよ!!!
こんな、事実。
聞きたくなかった。
あの頃の、俺達は、もう何処にも存在しないんですか?
戻れない?戻るのは、不可能なんですか?
どうして、他に好きな人が?
かなり、堪えた。
先輩に、他に好きな人がいただなんて・・・・・。
「御免ね・・・御免。長太郎・・・・。」
謝らないで下さいよ。
先輩が、悪いんじゃない。
先輩の心を、繋ぎ止められなかった俺が、悪いんですから。
それから、俺達は別れた。
サヨナラ。大好きな、先輩。
好きだったのに。
別れてしまった。
あの頃の俺は、こんな事は、想像していなかった。
先輩だって、そうだろう。
二人とも、考えられなかったんだ。
お互いに、お互いが、必要不可欠だったから。
それ程までに、大事な人同士だったから。
それが、今は、違う。
俺の、一方通行。
俺は、まだ先輩を想っている。
忘れられない。
まだ、忘れたくない。
・・・・・・・・そうじゃない。
俺は、先輩への想いを一生忘れる事はしないだろう。
そして、あの頃の俺達も・・・・・・・・・・・・・・・。