貴女の近くに、いられるなら。
必
須
先輩の、側にいさせて欲しい。
これが、俺の願い事。
けれど、この願いは、なかなか叶いそうにない。
どうしてなんだろう。
俺の努力が、足りないからなんだろうか。
思い起こせば、失敗ばかり。
上手くやろうと思えば思うほど、空回りしてしまう。
この間も、先輩を映画に誘おうとした時だった。
「あ、あの!!先輩!!!」
「長太郎。何?どうかしたの?」
「あのー・・・・あのー・・・・・・これを!!」
俺は、一週間頑張ってチケットを渡す練習をしてきた。
あの日は、その成果を見せる所だった。
なのに・・・・・・・。
「あ!この映画、一週間前に観たよ。いやぁ、主役の俳優さんが最高でね!!
私、惚れちゃった。でね?何処に惚れたかというと・・・・・。」
その後、延々と映画の内容を説明され、結局映画には誘えず。
俺は、一体何の為にチケットを買ったんだろう。
あんなに、頑張って練習したのは、何の意味があったのだろう。
「はぁぁぁ・・・・・。」
「おい、隣で盛大な溜め息をつくな。不幸が移るだろうが。」
俺より先に、屋上にいた跡部先輩が、俺を睨み付けてくる。
不幸が移るって・・・・・かなり失礼じゃないですか?
俺だって、つきたくないですよ。
だけど、自然に出て来てしまうのだから、不可抗力なんですよ。
「お前、今日もに渡せなかったのか?」
「はい・・・・・。」
「そんなんじゃあ、忍足に先を越されるぜ?それでも良いのか?」
「そんなの・・・っ・・・・・!!」
そんなの・・・・・・。
そんなのは、嫌に決まっている。
「後悔しない様に頑張りやがれ。俺は、どちらの味方もしねぇ。だがな、後悔だけはするな。これは命令だ。」
“頑張れよ”
跡部先輩は、そう言っていなくなった。
屋上に一人残された俺は、空を見上げながら考えていた。
俺は、先輩が必要。
大袈裟だって笑われるかもしれないけれど、俺には、必須。
「・・・・・・・・・もう一度、聞いてみようかな。」
俺は、チケットを握り締めて、先輩の元へと向かう。
今度こそ、貴女を誘います。
だから、良い返事をください。
「あ、先輩。良かった・・・・まだいたんですね。」
「あれ、長太郎。部活行かなくていいの?」
「はい。俺、先輩に用事がありますから。」
神様、お願いです。
俺に、力を貸してください。
何時もみたいに、やれば大丈夫。
きっと、大丈夫だろうから・・・・・。
「先輩、映画・・・・・一緒に観に行きませんか?」
さぁ、先輩。
貴女の答えは?