教室に、戻ってきたら、忍足が泣いていた。
君の、涙。
今朝の忍足は、元気だった。
いつも通りに、話しもしていたし。
忍足が泣くところを初めて見た。
教室で、一人佇み、涙を流している忍足。
一体、何を考えながら泣いているの?
こんな・・・・・こんな、誰もいない教室で。
私は、忍足の涙に見とれてしまった。
不覚。
何となく、そう思った。
「なんや。かいな。」
見つかってしまった。
それも、その筈。
教室の、入り口に立っていたら、嫌でもいつかは分かってしまう。
忍足は、泣いている。
だけど、その顔は、夕日の逆行で見られない。
私は、忍足を抱き締めた。
どうしてかは、分からない。
ただ、何も言わずに抱き締めた。
忍足は、何も言わない。
そして、ひたすら泣きじゃくる。
私は、泣きやむまで、彼の傍にいた。
そう、ずっと・・・ずっと、傍にいた。
私は、何故、彼が泣いているのかを知っている。
何故なら、通り過ぎたから。
貴方の、最愛の人が、最愛だった人が、違う男と仲良く歩いていた横を。
彼女は、嬉しそうに笑っていた。
どうして、笑っていられるの?
貴女は、彼を好きじゃなかったの?
忍足は、繊細で、傷付きやすい。
それを分かっていないの?
あぁ、貴女みたいな人は、いなくなっても良い。
居なくなって。お願いだから。
私なら、忍足の傍に。
「俺、何か悪い事したんやろか・・・。」
忍足は、していない。
あの子しか、居なかったのだから。
貴方が、浮気をした訳じゃない。
だから、そんなに悩まないで。
そんなに、自分を責めないで。
お願いだから。何だか、私まで悲しくなってくる。
この感情は、感染するモノなんだろうか?
きっと、そうなのだろう。
今の私が、忍足から感染したのだから。
忍足、泣いても良い。
泣いても良いけれど、もう責めるのは、止めよう。
それは、してはいけない。
私は、そう思うから。
ねぇ、貴方の世界は、今は何色?
どんな、色になっているの?
私は、知りたい。知ってみたい。
忍足を、少しでも多く知りたいと感じた今日。
そう感じさせたのは、貴方の涙。