「は、運命やて思わん?」
夕暮れの帰り道。彼に言われた最初の一言でした。
言い切れない事も、ある
運命。
侑士は、私達の出会いを、関係を、運命だと言った。
私は、何を言っているのか、理解が出来なかった。
そんな事で、言い切ってしまって良いのだろうか。
運命という、たった二文字で、片付けてしまって良いの?
そんな、簡単な処理で構わないと思う?
私は、嫌だ。
そんなに、簡単に処理しないで。
納得が、いかない。
侑士。一体何が運命なの?
運命って、何よ。
そんなに、二文字だけで、片付けてしまいたいの??
「なぁ、。やっぱり、こうなるって神様は、思ってたんやない?自分も、そう思うやろ?」
「神様?ねぇ、侑士。神様が、分かるって言うの?
私は、そうは思わない。もしそうだとしら、全て、神様が選んで、敷き占めてくれた路を通っているって事じゃない。
だったら、私は、人間を辞めてしまいたい。今すぐに、骨になって、灰になって、土に還ってしまいたい。」
神様が、決めたんじゃない。
私が、私の意志で決めた事なんだから。
進路だって、侑士と付き合う事だって。
「侑士。貴方と私の関係は、運命なんて言葉では、言い切れないと思わないの?」
「・・・・何で、そんなにムキになるん?」
「悔しいんだよ。そんなに簡単に片付けてしまえる様な関係かと思うと。」
だから、そんな風に言わないで_____。
「運命って言葉は、嫌いなんか?」
「嫌い。私達の事に、運命って言葉は、要らないよ。必要ない。」
私は、侑士を見ない。
無意識にではなく、意識的に、彼を見るのを避けた。
今は、見たくなかった。どうしても。
気まずい雰囲気が、私達を包み込む。
やはり、言うべきじゃなかったのだろうか。
でも、思った事は、言うべきだと思う。
隠し事は、したくない。
自分の中に、溜め込みすぎも良くないと、私は思う。
時には、嘘を付くのも必要だけれど、出来れば言いたくない。
少ない方がいい。
好きな人に、嘘は付きたくないし、隠し事はしたくない。
周りの人は、知らないけれど、私はそう思うから。
「。堪忍な・・・・・。」
侑士は、私に謝った。
私は、思わず彼を見る。
まさか、謝られるとは思わなかった。
「そうやな。簡単に言い切れる関係やないな。」
侑士は、苦笑いをしていた。
“本当に、悪かった”
侑士は、再度私に頭を下げた。
「いや、謝らないで。私も、強く言い過ぎたから。」
「せやけど・・・・・。」
侑士は、まだ何か言い足そうだったけれど、私は、自分の唇を彼の唇に重ね、それ以上言う事を制止した。
ねぇ、侑士。
私達の関係は、簡単に言い切れない関係だよね。
私は、そう思っている。
だから、だからね?そんな事、二度と言わないで。
その言葉を聞いたら、哀しくなるから。
今回は、許してあげる。特別に。
確かに、世の中には、言い切れる事もある。
けれど、何もかもが、言い切れるはずがない。
断言も、出来ない。
預言者でも、神様でも何でもないのだから。
私は、そう思う。
「侑士。さ、帰ろう。」
私は、彼の手をとり歩き出した。
明日は、どんな一日になるだろう。
二人で、笑って過ごせるようにと、私は、願った。