見てくれるやろか。
振り向いて
どんなに、願ったか。
彼女に、振り向いてもらいたいと。
願いは、どうしても止まなくて。
止む所か、更に強くなっていく。
は、俺を見ない。
彼女が見ているのは、一体誰なんだろうか。
俺は、知るのが怖い。
だから、敢えて知ろうとは思わない。
俺は、弱いから。
だから、ただ黙って、君を遠くから見つめているだけ。
こんな自分に、卒業したい。
「なぁ、跡部。」
「何だ、伊達眼鏡。」
「・・・・・・・・・・・・・そのあだ名、止めてくれへんか?」
「事実を述べているだけだ。」
あぁ、そう。
確かに、事実なんやけど。
それは、言われている俺としては、嫌。
跡部は、その辺を分かってないみたいやな。
「で?何なんだよ。折角、読書の時間を割いてやってんだぜ?早く話せ。ないなら、話し掛けるんじゃねぇ。」
「そんなに冷たいと、に嫌われるで?」
「俺以外の奴は、名前で呼ぶな。は、俺のモンなんだからな。従って、お前もの事は名字で呼びやがれ。それから、は俺の事を嫌いになんかならねぇよ。」
何と言う、自信や。
跡部には、俺みたいな人間の気持ちなんか分からないのかもしれない。
(せやけど、頼りになるんは、跡部だけやしな。他は、どうもあかん。)
「あんな。俺、が好きなんや。けどは、俺の事を何とも思ってへんみたいでな。俺、どないしたらえぇ?」
「本人に、聞け。俺なら、直接聞くぜ?」
「俺は、そんなに強くないんや。」
跡部みたいに、聞けはしない。
良い機会なのかもしれない。
せやけど、聞けないんや。
彼女を目の前にすると、何時もみたいに話せない。
それが、俺。
「バッカみてぇ。」
「・・・・・・・そやなぁ。せやけど、想ってしまうんや。」
「ふ・・・・ん・・・。一生無理だな。」
跡部は、呆れた様な顔をしていた。
「。何やっとるん。」
「忍足君こそ、何やってるの?」
庭園。
そこにいたに、俺は話し掛けてみた。
彼女の名前を言うのも、かなり勇気が必要。
そして、彼女を真っ正面から見つめるのにも、かなり勇気がいる。
「なぁ、。」
「何かな?」
「好きな奴、おるん?」
これは、告白とは言わない。
ただの、質問。
俺は、跡部に言われた様に、聞いてみる事にした。
傷付いても、良い。
それよりも、何もしないままで終わりにしてしまう方が、後悔が大きいと思う。
「いるよ。」
は、ベンチから立ち上がり、俺の方に振り向く。
“いるよ”
その言葉に、胸が痛む。
好きな奴が、いる。
それは、一体誰なんや?
「そ・・・れは・・・・誰なん?」
「知りたいの?忍足君。」
「知りたい。」
知りたい。
知ってしまえば、一歩進めるかもしれないから。
もしかしたら、手を差し延べられるかもしれへん。
「じゃあ、教えてあげる。」
は、俺の前に、手を差し出して来た。
これは、どうとればえぇんやろ。
俺には、理解出来へん事や。
「あのね、忍足君だよ。」
信じられなかった。
頭が、混乱してきた。
けれど、それとは反対に俺は彼女の手を握っていた。
これからは、二人でこうやって過ごせるのだろうか。
今日、彼女に聞いてよかった。
素直にそう感じる。
後で、跡部にお礼を言わないと・・・・・・やな。