「私の事を、忘れないでね?」
彼女は、俺に向かってそういった。
記憶の欠
片
俺が、と出会ったのは、一年前。
調度、季節は夏だった。
あの日も、今日みたいに、蒸し暑かった様な気がする。
そんな時に、出会ったんだ。
といて、楽しかった。とても。
俺達は、知り合ってからというもの、よく会っていた。
それからは、自然と付き合う形になり、現在に至っている。
付き合いは、結構上手く行っている方だと俺は思う。
ある日、は俺に向かってこう言った。
「弦一郎。私の事、忘れないでね?」
突然、何を言い出すのか。
俺は、が言っている意味を理解する事が出来なかった。
彼女も、そう感じとったのか、説明を続けた。
「あのね、私が、死んだら、私が居た事を覚えていて欲しいの。
いつかは、忘れる日が来ると思う。でも、真田には忘れて欲しくない。
真田に忘れられたら、私の存在を全て否定される様な気がするから。」
だから忘れないで・・・・・・・・。
は、そういった。
その時の、の微笑みが忘れられない。
俺は、の存在を忘れはしない。
彼女の、微笑みを。一緒に過ごした時間を。
「忘れない。俺は、絶対に。」
俺は、に誓った。
その時の、の表情は、とても嬉しそうに笑っていた。