何も分からなかった。
自分の気持ちが・・・
手紙が、置かれていた。
シンプルな、白い封筒だった。
一体、誰が置いたのだろうか。
もしかしすると、間違えて俺の机に置いてしまったなんて事も考えられるだろう。
しかし、よく見ると俺の名前が書かれていた。
(俺宛て・・・・・差出人の名前は、ないな。)
悪戯かもしれない。
赤也か?いや・・・・丸井だろうか。
「全く。新手の悪戯とは・・・・・。」
破こうと思ったその時だった。
「破くのは、まだ早いと思うがな。真田。」
聞いた事がある声が聞こえた。
確か・・・だったか?
仁王の恋人だったな。
「これは、お前が置いたのか?もしかして、仁王の席と間違えているんじゃないか?」
「ハッ。馬鹿言うなよ。私は、手紙で言うよりも、本人を目の前にして言うからな。」
“とにかく、読め。読まなかったら、ぶっ飛ばすぞ。”
そう言い残して、は去って行った。
「全く、一体どうなっているんだ。」
俺は、封筒を開け、中の便箋を開く。
中身は、綺麗な便箋。
そして、その便箋の上には、綺麗な文字が彩られていた。
(綺麗な文字だな・・・・とても読みやすい。)
差出人は、隣のクラスのからだった。
一体、俺に何の用だろうか。
特別に親しい訳じゃない。
話も、頻繁にしている訳でもない。
分かる事は、俺が、彼女を気になっているということだ。
初めて見たときから、気になっていた。
彼女の存在が。
誰にも相談をした事がない。
この気持ちが、何なのか、自分でも分からないから。
(放課後・・・・?俺に用が??)
内容を読むと、どうやら俺に用事があるらしい。
どんな用事かは、此処には書かれていない。
放課後までは、詳しい事は教えてくれないらしい。
「真田君、御免。待たせちゃったね。ちょっと委員会の用事あって・・・・。」
放課後、俺は自分のクラスで待っていた。
が来たのは、二十分後だった。
「それで、話というのは・・・・何だ?」
「う、うん・・・・あの・・・あのね。」
は、恥ずかしそうにしている。
よく見ると、頬が微かに朱くなっている。
彼女は、俺に何を伝えたいのだろう。
「さ、真田君が好きなの!!」
は、教室中に響く位の声で叫んだ。
い、いや・・・・・それよりも、俺の事が好き?
好きだと?
「何だと?!」
が、好きだと?
俺を・・・・こんな俺を、好きだと言うのか?
「え?あ、嫌だった?うわ・・・私、玉砕?ハハハ・・・振られちゃったって事だよね。」
「い、いや!違う!!俺も好きだ!」
・・・・・・・・・・。
俺は、今何を言った。
好きと言ったのか?
俺が?を?
「う・・・わ・・・・・。俺は・・何を・・・・・。」
思わず、口元を押さえる。
恥ずかしい。
本当に、恥ずかしい。
「真田君・・・・それ、本当?」
が、顔を覗き込んでくる。
そんな事をされると、益々恥ずかしくなってきてしまう。
「ね、どうなの?真田弦一郎君。」
は、もっと俺の方へと顔を近付けてくる。
「答えて。私は、真剣なの。冗談じゃなく、本音。だから、答えてよ。」
彼女は、視線を外す事はなかった。
真っ直ぐに、俺の瞳を見つめてくる。
「好きだ・・・・。」
俺は、分かった気がした。
以前からあった、感情。
それは、の事が、好きだと言う感情だという事が。
自分の気持ちが分からなかった。
しかし、今日。
が教えてくれたんだ。
俺に、気付かせてくれた。
「弦一郎。こっちこっち!!」
「か。済まない。どうも慣れていない場所でな・・・。」
数日後。
恋人になった俺達は、初めてのデートをする事なった。
この関係が、ずっと続くと良いと願う。
“好き”という感情に気付かせてくれた彼女だから、ずっと・・・大切にしたい。
そう願いながら、俺はの手を取り歩き出した。