「海に、行きたい。」

そう、彼女が俺に言った。


















































君が、 いた。































































彼女は、海が、好きだ。

本当に。海が恋人って言っても過言では無い位。




“海が、恋人?”って聞いたら、“かもしれない”と、答えてしまう位。






悔しいけれど、俺は、海に勝てない様な気がする。

海に行くと、彼女・・・・・は、俺の存在を消してしまう。

そう、俺だけじゃない。

他の、存在も消してしまっている気がするんだ。

存在しない。

居るのは、と、海だけ。

そこには、それしか存在しない。









は、海を見つめて。海は、を見つめている。






、俺の居場所は、あるのだろうか。

君の、隣は、空いている?それとも、海に、俺は阻まれて君の近くまで行けない?











は、海を見つめている。

ずっと ずっと ずっと。

時間が、許す限り。見つめている。


俺の居場所は、無い気がする。

だって、君は、俺の声すら聞こえていないんだから。

聞こえていない。俺の、叫び。悲しみ。痛み。

何もかも、海が、飲み込んでしまう。に、届く前に。


だからには、俺の気持ちは、届かない。




どうして、いつも俺を、連れてくるの?

こうやって、悲しんでいる俺を見て、楽しんでいるの?

、教えてよ。

俺は、此処にいたくない。

どうしたって、海に負けてしまうんだ。勝てやしない。




こんなの・・・・・こんな現実は、要らないんだ。必要ない。

俺は、こんなの望んでいない。無くしてしまいたい。無かった事にしたい。

あぁ、だけど俺は、から離れる事は、出来ない。

絶対に。離れられない。

俺は、彼女に夢中だから。











お願いだから、俺からを盗らないで。

海に、そう頼んでも、返事は来ない。

聞こえてくるのは、波の音。それ以外はない。











『海は・・・・好き。何も、言わないから。人間とは、違う。
煩くない。波の音も、耳障りじゃない。安心する。此処にいると。幸せな気分になる。
ねぇ、清純。そうじゃない?君は、そう想わない?私とは、考え方が違うから、そうは思わないか?』








何時の日だったか、そんな事を言っていた、

俺は、そうは思わない。思いたくもない。

幸せ?そんなの、が傍にいれば良いだけの事。


は、俺が傍にいるだけじゃあ満足しないんだ。

していないんだ。俺だけじゃあ、物足りないんだ。そうか、そうだったのか。










「清純。顔が、怖いよ。」


が、海を見ながら、俺を“怖い”と言った。

怖い?見ても居ないのに、そんなのが分かるって言うの?


「・・・・・・・・・・・君には、私の声は聞こえていない?」


聞こえていないって・・・・何を言っているのさ。

俺には、分からないよ。が、何を言いたいのか。


「私はね、清純。ずっとずっと君に囁いていたんだよ?」













囁いてって、一体何を?

ただただ、海を見つめているだけじゃないか。

ずっと、海だけを。

焦点は、海。俺じゃない。

囁いているって言っても、海にじゃないの?






「やっぱり、伝わっていないみたいだな。」





「伝わって・・・ないさ。は、海に恋していて、俺は、単なるお飾りに近い存在じゃないか。

違うって言うの?ただただ、海を見つめて、俺は、居ない人。の、心には、俺はいない。

そんな状況の中、何を俺に分かれって?ねぇ、何を囁いているの?俺には、分からない。分からないんだよ。

、言ってよ。言葉にして。君の、口から、聞きたいんだ。何を、囁いていたの?」












俺は気持ちを伝えた。

は、そんな俺に近付いてくる。海から、離れて。
























「私は、君を誰よりも愛している。勿論、海よりも・・・な。」









は、俺の耳元で囁いた。

その、囁きは、海の波の音に似ていた。






ずっと・・・ずっと、俺の胸の中で、の囁きは、波の音の様に響いていた。