「ねぇ。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「ねぇってば。」
話し掛けても
「ねぇ、ってば。」
「黙れ。煩い。」
は、不機嫌だった。朝からずっと。
俺が、話し掛けても、無視。どうやっても、俺を見てくれない。
それもその筈。
俺は、昨日とデート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・の、筈だった。
けれど、俺は、それを忘れて、他の女の子と遊んでいたんだ。
気付けば、夜の九時。
携帯には、””の名前が表示されていた。
あぁ、本当。あの時は、かなりパニクった。
その後、何度電話したって、メールを送信したってからの音沙汰は無し。
これは、が完璧に怒っている証拠。
普段ならば、少し怒っているだけなら、何かしら返事はある。
「だからね?悪かったって。」
「あぁ、そうか。悪かったのか。
そういった、感情は持ち合わせているんだな。
それは、素晴らしいな。それで?お前は、何だ。何様だ。
お前は、デートをすっぽかし、他の女と楽しくやっていた訳だ。良かったな。
楽しかったか?楽しかったんだろ?違うか。違わないよな。反論はないよな?
千石。お前、他の女の所に行けよ。邪魔だ。迷惑だ。謝る位ならやるな。
私が必要ないから、したんだよな?ならば、私もお前なんか、必要無いんだよ。」
うわぁ……これって、アンラッキー?最悪じゃん。俺。
「金輪際、私に近付くな。」
あぁ、どうしようか。
これはマズイ。こうなったら、俺はどうにも出来ない。
「あぁ〜!!どうしよう!南ぃ!!」
俺は、切羽詰まり、南に泣き付いた。
「おわっ!いきなり何だよ。また喧嘩か?お前等は、喧嘩が好きだよなぁ。」
何も、溜め息付かなくたって良いじゃないか。
確かに、俺とは、喧嘩をよくする。もうこれでもかって位。
もう、これは周知の事実。
学校の、公の場でも何度も喧嘩した。まぁ、全て俺が、悪いんだけどね。
は、悪くない。
俺は、どうしよう。かなり、困ってしまう。
今回は、本当の本当に終わってしまうかもしれない。俺達の関係が。
真っ白に。綺麗さっぱりに。崩れ落ちていく。
俺に、それは止められないかもしれない。
「お前が、その悪い癖を直せば良い事じゃないか。」
確かに、それはそうだ。南の言う通りだと思う。
でも、でもね?南。
俺は、止められないよ。
だって、癖はなかなか直るものじゃないんだから。
テニスの癖だってそうさ。
何度も何度も何度も。やり直す。頑張ったって、次の日には元通りの事だって。
俺だって、努力している。
は、分かってくれなかったみたいだけど。
「、いい加減許してよ。」
俺は、再度に謝りにいった。
どうしても、と別れたくなかったから。
「お前、何度私を裏切った?」
が、俺を睨み付けてきた。
それは、彼女が、自分の敵だと認識した人物に向ける瞳。
初めて向けられた。
実際、鳥肌が立った。背中を、冷汗が伝い、その視線から目が離す事が出来ない。
まるで、捕らえられた獲物の様に。
「お前、何回裏切ったんだよ。」
は、再度俺に問いかけて来た。
「何回・・・・・・って・・・・言われても・・・・・。」
分からないよ。そんなの。数えたことがないんだから。
「お前は、デートの度に裏切った。
要するに、お前は、三十回以上は裏切ったんだな。あぁ、何と素晴らしい事よ。」
うわ・・・・・・俺って、そんなに裏切った?
「だから、もういい加減諦めてくれ。私は、疲れたんだ。自由が欲しい。」
は、決心がついているみたいだった。
俺には、引き止める事は出来ない。どうしても。
次の日から、俺とはただのクラスメイトに戻った。