「あーぁ・・・・・。」
Separat
「ねぇ、何処かに行こうよ。」
「お金、ない。」
彼女を、デートに誘った。
一秒で、断られた。
これを、人は即答と言うのだろうか。
俺達は、付き合ってからデートをした事がない。
俺は、テニス。
彼女は、美術。
お互いに、忙しい。
だから、こうやって昼休みに会う事もかなり久しぶり。
本当は、会う予定じゃなかったんだけど、俺が会いたかったから。
は、かなり不服らしい。
彼女の機嫌は、大体声を聞けば分かる。
前は、その判別すら困難だった。
だって、って何を考えているのか分からないから。
でも今は、たいていの事は分かる。
これって、凄い事じゃない?
「じゃあ、まだ描きかけの作品があるから。」
「は?もう行っちゃうの?まだ、5分しか経ってないじゃん。」
「私にとっては、5分“も”経ってしまったんです。」
あぁ、そう。
は、俺よりも作品なんだ。
俺なんか、後回しにするんだ。
へぇ・・・・・その程度だったのか。
「はさ、俺が他の女の子と付き合っても構わないの?キスしたり、していいの?」
「良い。したいなら、しなさい。勝手にどうぞ。そういうので、私が泣きわめく性格じゃないの・・・・知っている筈でしょう?」
・・・・・ごもっとも。
は、そんなに弱くない。
泣いて、周りが見えなくなる様な性格でもない。
「じゃあ。」
は、お昼を食べずに美術室へ向かってしまった。
俺達、付き合ってんのかなぁ・・・・?
「阿久津、どう思う?」
「しらねぇ。興味ねぇ。」
阿久津は、本当に興味がなさそうだった。
まぁ、他人の恋なんか興味ないもんね。
それは、そうだよね。
阿久津は、自分の事で精一杯だよね。
「友達まで・・・・俺って、報われてない。これって、ラッキーじゃないよ。」
「そうかよ。」
阿久津は、何処かへ行ってしまった。
またしても、俺は一人。
(俺は・・・・の何を好きになったんだろう。)
ふと、思い返してみる。
との出会い。
彼女が、絵を書いている場面に遭遇。
とても、綺麗だった。
今にも、動きだそうだった。
一体、どうやったらあんな絵を描けるのだろう。
“絵が、私の全てよ。私は、ただ筆を動かすだけ。”
以前、完成した絵を見ながら言っていた。
俺が、テニスに夢中になっているのと同じ?
いや、違う。
彼女は、それ以上。
俺なんか、比べものにならない位、絵に情熱を捧げている。
あの瞳______。
「参ったなぁ・・・・やっぱり、大好きだよ。」
嫌いになれない。
他の女の子と、遊んでやるだなんて、口だけ。
出来るはずがないじゃないか。
「はぁ・・・・俺って、苦労人?」
思わず、苦笑い。
いつか、デート出来るだろうか。
美術館にでも誘えば、良い返事が聞けるかな?
一応、誘ってみよう。
俺は、歩き出す。
きっと今、新しい物を生み出しているだろう。
彼女は、創造主。
俺は、そんな彼女に恋をした、一人の男。
他の人間に、盗られない様に努力をしよう。
それしか、ないから。