“千石の事は、嫌いじゃない”
じゃあ・・・・・
は、言った。
俺の事を、嫌いじゃないと言ってくれた。
でも。
でも、彼女はこうも言った。
“好きだけど、付き合えない”
可笑しな、言葉。
変な、台詞。
好きだから、付き合うんじゃないの?
どうして、好きなのに付き合ってくれないの?
の考えが、分からない。
俺だったら、喜んで付き合うのに。
「ねぇ、何で?」
「何でも。」
納得出来ない。
俺は、絶対納得出来ない。
引き下がる事は、したくないな。
「ねぇ、付き合おう?」
「千石は、友達じゃ満足しないのか?」
満足しないから、言っているんだけどな・・・・。
うーん・・・・・・どうやら、分かっていないのかな?
でもなら、分からない筈がない。
彼女は、勘が鋭いから。
「やる気が起きない・・・・・。」
「おいおい・・・しっかりしてくれよ、千石。試合が近いんだぞ?」
絶対、頑張れない。
だって、やる気が起きないんだから。
は、捕え所がない。
捕まえたくても、彼女は捕まらない。
捕まえたって、一瞬だけ。
何度、部屋に閉じ込めておこうかと思っただろうか。
縛り付けて・・・・・縛り付けて、身動きがとれない位に。
そうすれば、は逃げないだろう?
(そんな事が出来たら・・・・苦労はしていないんだけどね・・・。)
駄目。
無理。
出来ない。
そうしたら、嫌われる。
嫌われて、どうしようもなくなる。
「やっぱ、帰る。」
「は?ちょ・・・っ・・・・!!!」
俺は止める声を聞かずに、走った。
あんな・・・・ドロドロした感情を持ち合わせた自分、嫌いだ。
大嫌いで、気分が悪い。
吐き気が、してくる。
どうにかして、取り除いてしまいたい。
綺麗に、洗い流したい。
「千石じゃないか。」
「あれ・・・・・・・・・?」
走っている途中、俺はに会った。
これは、本当に偶然の出来事。
「何だ、ランニングか?練習熱心だな。」
「いや・・・・ちょっと・・違うかな?」
「何だ。違うのか。」
は、どうでもよさそうだった。
俺が何をしていようが、関係ないのは分かっている。
だって、他人だから。
友人だとしても、元を正せば赤の他人。
「ねぇ、俺じゃ駄目なの?」
「お前は、私じゃないと駄目なのか?」
「うん。駄目なんだよ。」
「何故?」
「に、恋しているから。」
決まっている事を、聞かないで。
俺ね、ずっとを想ってきたんだよ。
今までは、怖くて言えなかった。
だって、友達すら辞められたら困るから。
二度と話せないなら、告白しない方がいいだろ?
「俺さ、よく考えたんだよ。凄くよく、考えたんだ。
本当に、それで良いのか・・・・・って。友達のままで、後悔しないのか・・・・・ってね。」
そう・・・・・考えたんだ。
と、このままの関係で良いのか。
それで自分は、満足なのか。
答えは、出たんだ。
案外、簡単だったよ。
「俺は、と恋人になりたい。」
ねぇ、今以上の関係に、君はなってくれますか?