「久しぶり。」


















































忘れよう。でも、駄 目だった
































































三年前、俺達は別れた。











全てを、忘れようと決めた。











記憶の隅々まで、綺麗に掃除をしてしまおうと。











そうすれば、きっと新しい女を見つけられると思っていた。














































彼女の、話し声。



























彼女の、笑い声。



























彼女の、俺を見る瞳。



























彼女の、紅い唇。



























彼女の、白い肌。


























彼女の、微笑み。


























彼女の・・・・・黒い闇の様な綺麗な髪。




















































全部全部、忘れようと頑張ったのに。




















































努力を、したのに・・・・。




































































無理だった。




























































どうしても、忘れられなかった。




















逆に、鮮明になっている。




















忘れられない。




















忘れられないよ・・・・・。

































































「久し振りだね。」


















「そうね。」




















彼女は、紅茶を飲む。





とても、上品に。





この三年で、彼女は何が変わったのだろう。





俺は、何も変わっていない。





変化は・・・・・年齢が増えているだけ。





一年一年、一歳ずつ増加している。








































「はさ、変わったよね。」







「そう？」





































“そんな事、ない”








































は、そう言った。






何も、変わっていないと。



















































「・・・・・時間てさ、本当に停まるんだね。」









「何を・・・・・言っているの。」









「時間だよ。実際の時間は、動いているよ。でもさ、問題は・・・・此処なんだよね。」








































俺は、自分の心臓辺りを指差す。















そう、停まっているのは自分の心の時計。















時間は、三年前で停まっている。















完璧に、停まってしまった。































































「それから・・・・・此処・・・かな。」


















































自分の、頭を指差す。







此処の記憶も、殆ど昔の想い出ばかり。







溢れて、溢れて、溢れ続けて・・・・止まってくれない。







命令しているのに、全くの無視。





















































「何で、別れたんだろうね。俺達。」













「・・・・・・有り触れた言葉。」











































余程可笑しかったのか、クスクスと笑い出してしまう。







確かに、有り触れた言葉だ。













俺らしくない。













自分で、別れようって。













もう、付き合えないって。













に“終わりにしよう”って言ったのに。































































「やり直し・・・たい・・な。」

















































その言葉に、彼女を笑うのを止めた。











笑い声が、聞こえなくなる。











俺達の周りを、沈黙が包み込む。

























































「やり直そうよ。。」









「また・・・・・有り触れた言葉を使うのね。」






























































表情が、消えている。















まるで、西洋人形の様に。















感情を無くした瞳で、は俺を見つめていた。
























































（やっぱり・・・・言うべきじゃなかったんだ。）











何を、言ったのだろう。










全く・・・駄目なんだ。











昔には、戻れない。











引き返すなんて、以っての外。












友達に戻れる位しか、ないのにね。














































「・・・・・・・・御免。忘れて。」





















































これ以上、惨めな気持ちになるのは沢山だ。














それなら、忘れてもらった方が、どんなにいいか。




































































「・・・・・・人の話を、聞かないのね。」





































































これ以上、聞きたくなかった。





























































「この場合・・・・・言い逃げ程、酷い話しはないと思わない？」






























































言い逃げは、確かによくないかも知れないけれど。













俺は、これ以上は嫌なんだよ。













出来る事なら、耳を塞いでしまいたい。













今度は、俺がフラれるんだ・・・・・。













これは、昔のやった事に対する・・・・・罰？
































































「奇遇ね。」

































































を、見た。

















耳を塞ぐのも、止めた。

















彼女は、昔の様に笑っていた。

















何だか・・・・懐かしい、感じがする。













































































「私も、そう思っていたの。」


























































俺達は、やり直せるんだろうか。























にそう言ったら、彼女はこう言った・・・・・・。


























































“違うわ。今から、始まるのよ”