僕
たちには、これしかナカッタ
愛があれば、いい。
君との間に、愛さえあれば。
そう思っていた俺は、間違っていたのだろうか。
何か、思い違いをしていたのだろうか。
何処からか、可笑しくなってしまったのだろうか。
は、どう考えているんだろう。
こんな考えを持つ俺を、どう思うだろう。
言うのが、怖い。
言った後、彼女の反応が、見たくない。
どんな表情を、するのだろうか。
どんな言葉を、俺に伝えるのだろうか。
どの位、俺と距離を取るのだろうか。
もしかしたら、距離が縮まるかも知れない。
でも、でも・・・・・・・・・・。
言えやしないよ。
怖いから。
恐いから、言いたくない。
でも、の考えは聞いてみたい気もする。
(聞けないよなぁ・・・・・俺、そんな勇気持ち合わせていないし。)
俺は今、屋上で寝っ転がっている。
勿論、一人。
隣に、はいない。
彼女は、違う場所にいる。
最近は、美術室に篭り気味。
作品の事ばかり、考えている。
作品、絵、絵画、
恋人である俺よりも、絵の方が、の心を占めている。
朝も、絵。
昼も、絵。
放課後も、絵。
下校する時でさえ、絵。
「・・・・なーんか、絵が彼氏だよね。俺なんか、その他大勢?」
思わず、自嘲。
分かり切った事を、思わず口にしてしまった自分を嘲笑う。
やり切れない。
絵なんか、グチャグチャにしてやりたい。
思う存分、切り刻んでやりたい。
が叫んでも、その行為は止めてあげない。
気が済むまで、メッタ斬り。
あぁ、心地良いだろうな。
・・・・・・・・嫌われる可能性は、大だけれど。
俺は、瞼を閉じる。
ザク・・・・。
ザクリ・・・・と、頭の中で切り刻んでいく。
これが、日課。
が、俺の所に戻ってくるまで、毎日やり続ける。
切り刻まれて、グチャグチャになってしまづた絵。
どんな絵だったか、分からない位になってしまった。
俺の後ろでは、が泣いている。
だけど俺は、振り向かない。
振り返ろうとは、思わない。
「・・・・・・・・・ふぅ。」
毎回、此処で空想は止める。
そうして、瞼を開くと、何だか清々しい。
自分の心も、少なからずスッキリしている。
この空想は、現在、精神安定剤みたいな役割を果たしている。
「そろそろ、帰れるかな。」
「・・・・・・・まだ、帰っていなかったの。」
俺は、美術室まで迎えに来ていた。
の鞄を、持って。
絵と向かい合っている、彼女の元に。
美術室は、暗かった。
俺の、心の中みたいに。
真っ暗な、闇だった。
は、気が付かなかったのだろうか?
こんなに暗かったら、絵だって見えないだろうに。
「もう、帰らない?」
「そうね。」
立ち上がったに、安堵感を覚えた。
これで拒否されたら、どうしようかと思っていたから。
「毎日、御免なさいね。」
歩いている途中、が謝って来た。
最初は、訳が分からなかった。
だって、謝られた事がないから。
“絵ばかりに、夢中になって”なんて、謝罪をされた事がなかったから。
意外の中の、意外。
イガイ過ぎて、咆驚してしまう。
「嫌いになったら、何時でも言って。」
次に、がそう言った。
嫌い?
嫌いに、なったら?
俺は、以外の人なんて考えられないのに?
それなのに、どうして突き放す様な言葉を発するの?
もしかして・・・・・が、俺との付き合いに疲れたんじゃないの?
「他の人の元に行っても、私は、何も文句は言わない。」
“でもね”と、は話しを続ける。
“どうか、これだけは覚えておいて”と、俺に念を押す。
「私は、清純を愛してる。この先、どんな人と出会っても、“愛”は存在しない。存在するのは、貴方との間だけだから。」
真剣だった。
俺を見つめるの瞳は、真剣そのもの。
俺は、彼女の瞳から、視線を逸らす事は不可能だった。
あぁ・・・・・嬉しいよ。
俺との間にしか“愛”は存在しないって言ってくれて。
ありがとう・・・・・。
ありがとう、有り難う、アリガトウ。
俺は、幸せだよ。
俺は、とは離れないよ。
だって・・・・・・だってさ・・・・。
「俺だって、との間にしか、“愛”は生まれないよ。」