どうしよう。私は、困ってしまった。
驚き、そして、喜
び。
手塚国光君。
青学学園高等部の、三年生。
生徒会長も、務めている。
テニス部の、部長さんで、女の子にも、結構人気がある。
私も、その一人。
彼が、大好き。中学生の時から、好きだった。
でも、告白は、出来ずじまい。
そんな私だけど、今回、告白しようと決めた。
今日は、手塚君の誕生日。
だから私は、彼にプレゼントとして、ケーキを作る事にしたのだった。
「参ったなぁ・・・・・。」
私は、困っていた。
どうして、こんな事になったんだろうか。
どうしようどうしよう・・・・。
「困ったよ。」
私は、料理本通りにやったというのに。
どうして、失敗してしまったの?
やっぱり、何かが悪かったのかな・・・・・。
ケーキは、失敗。何故だか、上手くいかなかった。
形は、悪いけれど、何とか飾り付けを頑張ってみた。
あぁ、困っちゃうなぁ。
恋も、失敗なんて事にならなければいいのだけれど。
不安。凄く、不安。
手塚君は、どんな子が好み何だか分からないから。
私にとって、手塚君は、好きな人。
手塚君にとって、私は、ただのクラスメイト・・・・。
もしも、振られてしまったら、この想いは、一体何処にやれば良いんだろう。
分からない。
どうにかして、処理するしかない。
その時は、その時。
暗い気持ちになりながらも、私は、プレゼントを持って、学校に向かった。
手塚君は、早速、プレゼントを貰っていた。
その表情は、変わってはいないものの、何だか、困っている様な雰囲気だった。
欲しくなかったのかな・・・何だか、可愛い包み。
私の何か、あんなに凝っていないよ。
あの位、頑張るべきだった?やっぱり。
今更ながら、後悔している自分が居る。
「手塚く〜ん!!」
そんな事を考えていると、後ろから、二人の女の子がやってきた。
その手には、やっぱり包みが・・・・。
あの子達も、手塚君の事が好きなんだろうか?
まぁ、好きじゃなければあげないよね。プレゼントなんて。
皆、可愛い子ばかり。
何だか、自信なくしちゃう。
「これね、手塚君の為に焼いたの!!絶対に美味しいから、食べて。」
女の子は、そう言うと包みを手塚君に差し出す。
手塚君は、受け取るの?
受け取ったら・・・かなり、あげにくくなっちゃうな。
「済まない。俺は、甘い物は、そんなに好まないんだ。」
うわっ・・・これってば、かなりのダメージだよ。
甘い物、好きじゃないんだ。
それは、知らなかったな。
お煎餅とかの方が良いのかな?そっちの方が、良かったかな?
「で、でも・・・これ、手塚君の為に、心を込めて作ったんだから、受け取ってくれないかな。」
「済まない。それならば、尚更受け取れない。」
な、尚更って言った?心を込めて作ったのを、受け取れないと?
もしかして、手塚君は、好きな人がいるの?
恋人が、もう居るとか?
うわっ。クリティカルヒット!?
これって、私も振られたと同然??
もしかしてもしかしてもしかしなくても、告白する前に、振られた!!!?
「お、落ち着いて・・・自分。そうよ、まだまだそうと決まった訳じゃない!!!」
「何を言っているんだ?」
「うわぁ!!!!!!」
吃驚した。かなり。だって、手塚君がいたから。
何時の間に、此処にいたんだろう。本当に、気が付かなかったよ。
寿命が、縮まった気がする。
「済まない。驚かしてしまったみたいだな。」
本当だよ。驚いたよ。
説明して欲しいよ。どうして此処にいたのか。
もしかして、私に気付いちゃったから?
私は、そんな事を考えながらも、プレゼントを手塚君に見えない様に隠した。
「・・・・・・・・・何を隠した。」
「た、大した物じゃないよ!!うん!!」
渡したくない。これは、自分で食べようって決めたから。
だから、これは、隠しておくの。
告白も、何だかしにくくなっちゃったし。
「今日、誕生日なんだ。俺の。」
手塚君が、いきなり話し始めた。
知っているよ?そんなの。
貴方を好きになった時から、私はずっとずっと知っていたの。
今まで、渡せなかったプレゼント。
全て、私の部屋に置きっぱなし。捨てる事が、出来なかった。
「それでな。お前に、お願いがあるんだ。」
「お、お願い?」
何だろう。お願いって。
好きな子、いるんじゃないの?手塚君は。
それとも、好きな子に、自分の事をどう想っているか、聞いてきて欲しいの?
今日の、手塚君は、何だか可笑しい。
どうしちゃったんだろうか。彼は。
「。お前が欲しい。」
驚いた。
何だか今日は、驚きの連続の様な気がする。
ケーキ作りから始まって、手塚君が、甘い物好きじゃないって知って。
それから、好きの人がいるかも知れないと分かって。
そして、今の状況。
この言葉を、信じても良いの?
手塚君に限って、こんな事は無いかも知れないけれど・・・嘘じゃ・・・ないよね?
信じちゃって良いんだよね?私。
私が、欲しいって事は、私の事を好きだって自惚れて良いの?
私、そうしちゃうよ?
「な、なぁ・・・・返事を貰いたいんだが。」
私が、何も言わない事に不安を覚えたのか、手塚君は、返事を急かしてきた。
そんなに、不安にならなくて大丈夫。
私の心は、決まっているもの。
初めは、自分から告白しようと決めた、彼の誕生日。
それが、彼の方から、告白してくれるなんて思ってもみなかった。
嬉しい。凄く、嬉しいよ。
有り難う、私の事を欲しいって言ってくれて。
これからは、名前で呼ばせてね。
私、頑張るよ。
もっと、美味しいケーキを作るから。
国光は、失敗してくれたケーキを食べてくれた。
そして、“美味しかった”と、笑顔で言ってくれた。
今回は、こうなっちゃったけれど・・・・精進しようと決めた、彼の誕生日。