ずっと、ずっと。
Le voyant avait bourre'
駅で、出会った。
沢山の人に囲まれて、楽しそうだった。
君は、人気者?
そんな君に、俺は近付けるのだろうか。
_____近付けない。
何故か、そんな気がした。
俺は、相応しくないんじゃないだろうか。
彼女は、人気者で・・・・・俺は、彼女を見つめているだけの、彼女の周りを囲んでいる中の一部に近い。
そんな彼女に、俺は見えていないだろう。
俺は、空気で。
透明人間で。
何処にでも浮かんでいる様な雲。
それに対し、彼女は太陽みたいな存在。
夜になれば、街を照らす月だろう。
「手塚、資格とか・・・相応しくないからとか・・・・関係ないんじゃない?」
「何故だ?」
「フフッ・・・・皆、平等だよ。それにね?彼女___先輩が、人気者だからって相応しくないっていうのは、逆に理解出来ないよ。
そんな事で諦めていたら、きっと手塚はテニスしか残らないよ。相応しくないか、相応しいか・・・・そんなのは、後で考えるんだ。
今は、行動を起こしなよ。駅で見ていれば、気が済むの?学園内で、先輩を見つめるだけで、本当に良いの?」
“僕だったら、そんなの嫌だよ”
不二は、俺に“頑張れ”と応援してくれた。
あいつは、凄い。
俺は、彼女に話し掛けても良いの・・・・・・か?
先輩・・・・・彼女は、もうすぐ卒業してしまう。
そうなったら、話し掛けるチャンスは、無いのと同じだ。
「考えるよりも先に、行動しろ・・・・だな。」
「じゃあ、また。」
「人気者!また明日ね!!」
「アハハ・・・・・。」
放課後、漸く解放された私は、これ以上捕まらない様に、裏庭へと向かうのが日課。
思えば、二年生になってからだった気がする。
一年生の時は、本当に何もなかったのに。
「はぁ・・・・。」
「先輩。」
「ひっっ・・・・!!!!」
咆驚した。
え、誰!?
どうして私が、この場所を使うって分かったの!
「済みません。驚かせる気は全くなかったんですが・・・・。」
「へ?あ、そう??・・・・・・・・ん?貴方、手塚君ね?」
「何故、俺の名を?」
彼は、表情を変えない。
けれど、声からして驚いているのは間違いない。
間近で拝見したのは、初めてだわ。
「何となく、貴方の人気度が高い理由が分かった気がするわ。」
「俺は、人気なんかありませんよ。」
「分かっていないのは、本人だけよ。案外、そんなものなの。」
「・・・・・・・・・・・・?」
あぁ、やっぱり分からないか。
「まぁ、良いよ。それで?私に、何か用かな?」
「好きです。」
・・・・・・・・・・・・・は?
「い、いや・・・・あの・・・・・かなり直球じゃない?」
「事実だけを、述べたんです。回りくどいのは、余り好きではないので。」
いや、それにしたって、かなりのストレートだよ?
私は、そう思うんだけど、彼は違うみたい。
こういう人もいるんだ。
私、こんなに直球勝負で来る人を、初めて見た。
「返事は、急かしません。ですが、先輩が卒業するまでにはください。」
“何も言わずに去るのだけは、止めてください”
「卒業・・・・するまで、ね。」
手塚君。
言うだけ言って、私に何も言わせずに去るなんて・・・・結構狡いね。
そんな風にされると、何も言わずに去ってやろうかと、意地悪な考えが浮かんでくる。
「案外、答えは簡単ねぇ・・・・・。」
明日、駅でまた会えるだろう。
私は、ずっと貴方を見つめていたの。
手塚君、貴方は・・・・気付いていないでしょう?