その感情さえもりだと君は否定するというのか







































































『解らないわよ。大体、私に否定された位でそんな表情しないで。』













































無性に泣きたくなってきた。





好きな相手に信用されていないと、こんなにも悲しくなるものなのだろうか。





確か、骸様も出逢った当初から信用されていなかったと苦笑いしながら言っていた気がする。





骸様は、頑張って頑張って・・・・・まぁ、どうにもならなかったら術を使ってしまうのだろうけれど、頑張る人だ。















逆に俺は、頑張る処か何もしちゃいない気がする。





努力していないなら、哀しいなんて台詞を吐くなと言われるだろうけど、本当に哀しいのだから仕方ない。





大体、好きだという感情さえ否定られてしまったら、誰だって哀しいと思い、傷付くんじゃないだろうか?





此れは俺に限った事じゃなく、他の人間にだってある事なんじゃないだろうか。





其処まで考えて、少し考えるのをやめて椅子に腰掛ける。















今日は、取り敢えずというか・・・・一応というか・・・無理矢理というか・・・・・まぁ、彼女であるとデート(と言って良いのか分からないけれど)の日である。





待ち合わせは、喫茶店。





自宅に迎えに行きたいというのが本音だけれど、彼女に即却下されてしまったので、待ち合わせの場所は何故か喫茶店と決まってしまった。
























そんなに嫌なら、付き合わなければ良いのに。










そんなに嫌なら、会わなければ良いのに。










それなのに何故俺と会ってくれるんだ?










そう問い掛けると、彼女は決まって微笑むだけだった。





笑っているだけじゃ・・・・どう思っているのか分からないじゃないか。
































そんなに焦らして楽しい?










そんなに俺を焦らして愉快?













































「はぁ・・・・憂鬱。」





周りにいる人間は、ギャアギャア煩いし・・・・・空は、嫌っていう程綺麗すぎる。





そんな明るさを俺にくれないのかな。





そんな綺麗な色を俺の心にもくれないだろうか。





(くれるわけないよな。くれるんだったら、とっくにくれているんだから。)





は、一体何時来るのだろうか。





待たされれば待たされる程、面倒な事ばかり考えてしまっている。





早く来てくれれば、こんなに大変なことないのに。





やはり、は意地悪だ。





こっちに向かっている今、俺が色々な事を面倒臭いと思いながら考えてしまっているのをきっと楽しんでいるに違いない。
















































































「遅くなって悪かったわね。」





「・・・・・・別に。」






"別に"なんて嘘だ。





嘘を言っても仕方無いと思うけれど、まぁ良いや。





時間は遅かったけれども、無事に此処に来てくれただけで良いさ。





ぐちぐち言うのも、後々面倒だから俺は言わない。





そんな事よりも、はそろそろ信じてくれたのだろうか。





元マフィアで、人殺しの俺の言葉を。




























































君が"好きだ"というこの感情を。

































































一度目。あっさり否定された。










二度目。まだ信じることが出来ないと言われてしまった。










三度目。飽きたら、私は殺されるの?と信じるのが嫌そうな台詞を俺に言ってきた。










四度目。人殺しに恋なんて出来るのか、とやはり信じてもらえなかった。









・・・・・・・・・・いい加減、信じて欲しいんですけど。






なんか俺、物凄く惨めだ。





















「千種、何も頼んでないの?」





「あぁ・・・・頼んでない。」





「そう。何か頼みなさいよ。どうせ、あのクフフの男に良いものを食べさせて貰ってないでしょう?」





「・・・・・・骸様の事を悪く言わないで欲しいな。あの人は、俺にとって大事な人だ。」





「なら、私になんか逢わなくて良いからその"骸様"の所にずっと居なさい。」






"別に逢わなくても構わないわよ。私と貴方の縁はこれまで。案外アッサリ切れて良かったわね。" と言って立ち上がる。





怒らせたか?否、違う。





怒らせたんじゃない・・・・・愛想を尽かされてしまったんだ。





あぁ・・・・・面倒だ。





大体、骸様は好きというよりも尊敬と言った方が正しい。





それに、ずっと骸様が好きであの人の側にいたいなら、俺はに逢いたいなんて思わないし言ったりしない。





"俺は、君が好きだ。本当に心の底から大好きなんだ。この気持ちに偽りなんかない。"と言ったのに対し、は"そう"と一言だけ言った。





俺を見るの瞳は、信じていない。





そんなに、信じる事が出来ないなら・・・・・・君の方こそ、俺となんか会うなよ。





自分の気持ちを否定される者の気持ちが分かるのか?





分かる訳がない。





否定する者に、否定される者の気持ちなんか分かる訳がないんだ。





あぁ・・・・・もういい。





もういいさ。





俺は俺なりに、珍しく頑張ったつもりだ。





四回も拒否されながらも、こうやってまた気持ちを伝えたんだ。





良くやったじゃないか。





もう・・・・・この掴んだ手を離そう。





離すしか・・・・ないだろう?
























































「・・・・・・・離せるわけ・・・ないじゃないか。いい加減、信じてくれない?俺、本当に怒る。」





「怒れないわよ。貴方は、怒らない。それに・・・・・万が一、信じて裏切られたら私はどうしたら良いのかしらね。
その不安が存在する限り、私は信じたくない。・・・・・・あぁ、言い方が間違った。信じるのが"怖い"。」













"怖い"と言った時のの表情は、とても哀しそうな顔をしていた。





過去に一体何があったのか・・・・・それは俺には分からない。





分からないけれど、それなら信じさせるだけ・・・・・なんだろうけど、面倒な事が嫌いな俺にとっては大変根気がいる事かも知れない。





ただ、一つ疑問がある。





ずっとずっと、思ってきた事。





何度も何度も聞いたのに、答えて貰えなかった質問。





今日ならば、どうにか答えて貰える様な気がする。





そう思った俺は、此れが最後だと決めて、に疑問を問い掛けた。





































「ねぇ、どうして俺と会ってくれるの?」






「どうしてですって?」






"何?それさえも分かっていなかったの?"と冷めた目で見られてしまった。





分からないから、聞いているんだけど?





分かっていたら、人間聞かないと思うんだけど・・・・・俺、何か間違っているんだろうか。





そんな風に考えていた矢先だった。





きっと、この時の俺は拗ねた表情をしていたのだろう。





は、幼い子供をあやすような感じで、"冗談よ"と苦笑しながら俺の頬を優しく撫でてきた。





「馬鹿にしてる?」






「私はしているつもりはないけれど、千種がしていると思ったならそう思えば良いわ。」





「ふぅん・・・・・。」








































"さっきの質問の答えだけど・・・・・。"





話が逸れてしまったと気付いたは、直ぐに軌道修正して元の話題に戻した。














私が、千種と何度も会う理由はね・・・・・・・。







































































「心の何処かでは、何時かは信じさせてくれる人じゃないかと思っているからよ。」





























































そう優しい笑顔で言われて、心が少し晴れた気がする今日この頃。





どうか、が俺の気持ちを肯定してくれる日が来ます様に・・・・と晴れた空を見上げながら願った。