柳生とが付き合い始めて数年が経とうとしていた・・・・・。
その時、一つのイベントが発生したのである。
そう、ホワイトデーだ。
ホワイトデー〜柳生ver〜
ホワイトデーと言えば、男は三倍返しが当たり前の世の中である。
「柳生、バレンタインのお返しは考えたんか?」
と部活の最中に仁王が柳生に話し掛けてきた。
「俺は、皆にチ○ルチョコ一個ずつやるぜぃ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
一個だけかよ!!ブン太の発言に、全員がツッコミを入れた。
「わしも、飴くばる。」
仁王はブン太に負けじと発言する。
「・・・女性は何をお返しでもらったら喜ぶのでしょうか?」
柳生は真剣な顔で皆に訪ねた。
「俺もそれは気になっていたんだ。どうすれば良いんだ?」
柳生と真田の共通点・・・それは、彼女がいるが何を渡せばいいのか分からない事。
「・・・・お前等がやりたい物をやったらどうだ?気持ちが大事だろ?」
と、柳は助言する。
「うーむ。」
悩み抜いた結果、柳生は参考書で真田は習字道具だった。
「・・・あかんぜよ。」
仁王は愕然とした。
そんな時だった。
「なぁ、まだ部活終わらないのか?」
寒さに我慢できず、ズカズカとテニスコートに入ってくる人が約一名。
「・・・・・まぁ、習字道具やら参考書やらやって彼女たちが喜ぶのか想像してみろ。」
と、本人がいる前なので、柳は小声で話した。
「おまたせしました。」
柳生は急いで着替えての元に向かった。
一方、残された真田は、心の隅で“は書道は喜ばないか”と悩んだ。
「なぁ〜んでこんな遅くまで練習するんだか。寒くて仕方がない。」
今度は、先に帰っていようかぁ・・・とは文句を言い出す。
「待たせてすいませんでしたι」
柳生は”一緒に帰りたいので待ってもらえませんか?”と悲しい顔をした。
「・・・・待ってるから、手を繋げ。寒い。」
柳生に悲しい顔をされては嫌とは言えず、手を繋げと命令する。
どうやら、手袋を忘れてしまったらしい。
「喜んでvv」
柳生は嬉しそうに手をつかんだ。回りから観たらバカップルだ。
「なぁ・・・もう少しで付き合って一年になるんだな。」
手を繋ぎ歩き出したと同時に、は言った。
「そうですね」
柳生は少し力を込めて手を握った。そして悩みを打ち明けてみた。
「もうすぐホワイトデーですが、何が欲しいですか?」
やっぱり本人の欲しいものを渡したいと言う柳生の考えだった。
「ホワイトデー・・・比呂士がくれるなら何でも構わないぞ?」
と言う。
「プレゼントはやはり、何を貰えるか分からないから良いんだよ。
分かったらつまらん。」
違うか?と柳生に尋ねる。
「・・・そうですね、すみませんでしたι」
柳生は、何がなんでもに喜んでもらえるようなお返しをしようと決めた。
「楽しみにしているぞ・・しかし、一年も交際が持つとは思わなかったな。」
と意外な発言をした。
「え!?さん、何を・・・。」
柳生は1週間のお試しだったんですか?と今にも泣きそうだ(泣)
「いや、お試しじゃない。お試しだったら、交際初日に身体を触らせるか。」
寧ろ、同棲したい位だ。ずっとお前と居たいとは柳生に言う。
「そうですか・・・ってえぇ!?」
同棲と言う言葉に動揺してしまった柳生。
何やら同棲しているシチュエーションを想像して顔が赤くなる。
「フフン・・・・ホワイトデーのお返しがどうしても決まらない時は
・・・・そうだな、比呂士との子供が欲しいな。」
吃驚している柳生に、ニヤニヤとからかい半分に言った。
「・・・。」
のセリフに目が点の柳生。
しばらく間が空いて、柳生はいきなり早歩きになった。
「比呂士・・・・?」
いきなり早歩きになった柳生を、は不思議そうに見つめた。
「・・・決まってるじゃないですか?愛の営みです。」
今度はが目が点だ。
「との子なら私だって欲しいですし。」
にっこりと笑顔で言う柳生。
「・・・出来ちゃった結婚するつもりか?」
冗談で言ったんだがな・・・困ったな
・・・と思いながら柳生の自宅へと向かう二人。
「・・・良い声で鳴いて下さいね。」
柳生は家に着くなり、の後ろから抱きついた。
妙に色っぽい柳生。
「フフ・・・今夜も感じさせてくれるんだろう?」
とは、挑発的に柳生に言う。
「・・・クスッ・・・いいですよ。」
柳生は悪魔笑いをしながらのブラウスに手をかけた・・・・・・・・。
一方、真田は・・・。
「うむ・・・。何か和菓子が良いのか?」
とかなり悩んでいるのか、自分の部屋でウロウロしていた。
「さーなーだー?」
部屋の外から恋人の声がした。急いで真田は窓を開ける。
真田は、慌てて二階から駈け降りて彼女の所に向かう。
「ど、どうしたんだ?」
とに尋ねた。
「ん?仁王がね、真田が悩んでるみたいだから助けてやれって」
ニッカリ笑う。
「・・・・・・・・・・・・。」
(仁王め・・・余計なお世話だ!!彼奴に助けられるなんて!!!)
真田は、少し(?)腹が立ちながらも、に何か好きな食べ物はないか?
と聞いた。やはり、菓子を貰ったんだから菓子を返そうと決めたらしい。
「好きなお菓子?」
は、どうしていきなりお菓子なの?と不思議そうに真田の顔を見た。
「そ、それは言えないんだ!兎に角教えてくれ!!」
真田は、どうしても秘密にしたいので理由は言わずに聞いた。
「ふーん?ま、いっか」
は、自分の好きなお菓子を考えている。
「そうだなぁ…あ!!お菓子じゃないけど真田が作った料理がいい☆』
「成る程・・・・助かったぞ!!」
真田は、これで完璧だ!!と言わんばかりに喜んで部屋へと向かっていった。
「え!?私放置かよ〜!!!」
は、真田の部屋に入れるとばっかり思っていた(泣)
「料理だ!!」
真田は、ホワイトデーになるまでずっと料理の研究に没頭するのだった。
そして、待ちに待った(?)ホワイトデー当日。
「柳生、お返しは決まったか?」
まさか、本当に参考書なんじゃ・・・・と柳は不安になりながら
部室でジャージに着替えている柳生に尋ねる。
「決めましたよ☆」
柳生は嬉しそうに小さな包みを出した。
「・・・・・なんだ?これは。」
柳と乱入してきた真田は声がそろった。
「何って…指輪ですが。」
「指輪って・・・・安物か?」
とジャッカルまで乱入してきた。
「そういう思い出に残るモンは、別れた時には邪魔くさいぜよ?」
選択肢間違えたんじゃないのか?と仁王まで・・・何気に酷いことを言い出す。
「失礼ですね!結婚を前提に付き合ってるんです!婚約指輪ですよ。」
柳生は少し冷えた口調で話す。
「今から結婚前提かよ。」
「・・・・・早まるのは良くないと思うがな。もう少しよく考えろ。」
まだ若いんだぞ?柳生・・・・・。
と口々に言い出す。
よく考えろ。本当にそれで良いのか・・・?と。
「よく考えましたよ?私には以外考えられません。」
体の相性も・・・と小声で付け足す柳生。
「・・・・・今、なんて言った?」
小声で言ったのが聞こえなかったのか、皆は聞き返した。
「いいえ?なにも。」
柳生は紳士な笑顔で返した。
「・・・あいつ絶対サドだよな・・・。」
ブン太はぼそりと答えた。
「紳士じゃねぇよ・・・。」
と悪口を次々に言うレギュラー陣。
そんな時だった・・・・。
「比呂士!!!!」
突然、が部室へやって来たのだった。
「どうしたんですか!?」
いきなり入ってきたに、ビックリする柳生とメンバー。
「聞いて驚け!二ヶ月だ!!!」
入ってきた途端に、周りなんぞお構いなしに柳生に抱き付き
やったぞ!と嬉しそうに言う。
「!?」
周りのレギュラー陣は目を丸くする。
「に、二ヶ月とは?」
柳生は恐る恐る聞く。
「いやぁ・・・・産婦人科行ってきたら、二ヶ月だと言われたぞ。
赤ちゃん出来ちゃったよ。」
お前もパパさんだな。比呂士!
アハハと笑いながら、爆弾発言をした。
「「なー!?」」
みんなさすがにビックリである。(当然か)
「何だ?比呂士の子供だぞ?もっと喜べよ。」
そんなに驚くな。驚くならもっと喜べ。
周りの野郎は祝福しろ。私のお腹に子供がいるんだからな。
そうは言った。
「・・・・・・・・はっ!!今すぐのご両親にあいさつに行って、それから・・・。」
柳生は頭がてんぱり中だ。周りも目が点だ。
「お、お前等・・そんな行為していたのかよ。」
仁王なら分かるが・・・柳生がな。
とジャッカルは呆気に取られる。
「それはどういう意味じゃ。このハゲ。」
仁王は、彼の発言に反論する。
彼の睨みには、凄みがあるのでかなり怖いのだ。
「・・・まぁとりあえずはめでたいのだろ?おめでとう、柳生に。」
真田はイマイチ子作りの原理を理解してないご様子。
「おっ、真田。有り難うな!!比呂士と幸せな家庭を築くからな!」
応援してくれよなと、は幸せそうに笑う。
「この間言った事が本当になるとは思わなかったがな。」
妊娠なんて、予想外だ。と付け足す。
皆がいまだに驚いている時にまた一人客人が。
「真田ー?」
「か。」
真田は何かを取り出す。
「・・・・・何だ?それ。」
「お重箱だ!!」
そう、沢山の料理を作りお重箱に入れ、彼女に渡したのだった。
「ま、比呂士。早速お互いの両親に報告だな。」
部活はサボれ。さっさと着替えろよと、柳生に命令した。
「柳、少し部活を遅刻する。行くゾ、。」
真田は重箱を持ち、を連れて部活を後にした。
「・・・・それではすいませんが、私も・・・。」
急いで制服に着替えた柳生は、皆におじぎしてと帰ろうとする。
「・・・・・・・一発や二発は覚悟するんじゃぞ?柳生。」
絶対に殴られる。痛いが、頑張れ。
と仁王は、柳生にエールを送る。
「・・・分かっています。」
柳生は覚悟を決めた顔をする。
「じゃ、殴られに行ってこい。」
別に殴られに行くわけではございません。そこら辺はご了承下さい。
「では、行ってきます。」
柳生はの手を取り、部室を後にした。
「・・・・柳生、やるこたぁやってたんだな。」
ブン太は、感心した(笑)
「なぁ、どっちの親から報告しに行くんだ?」
手を繋ぎ、歩きながらは柳生に尋ねる。
「そうですね・・・まずはの家からですね。」
柳生は、の両親にどう伝えるべきか考えている。
「フフフ・・・・私の名字は”柳生”になるんだろうな。」
凄く楽しみだ。
と悩み続けている柳生とは反対には嬉しそうだった。
「え?・・・柳生ですね。」
柳生は悩みながらも優しく微笑んだ。
「無事、夫婦になれると良いな。」
柳生の両親にも賛成してもらえるよな・・・・と少し不安になる。
ついにの家に到着。緊張する柳生。
「・・・では行きましょうか。」
覚悟を決めた柳生は、一歩前に出た。
「ただいま。」
二人で手を繋ぎながら、玄関に入る。
「お帰り。あら、柳生君いらっしゃい。」
玄関に入ってすぐに、の母親が出迎えてくれた。
「お邪魔します。あの・・・お母さん、お父さんはいらっしゃいますか?」
大切なお話があります。と柳生はの手を強く握った。
「え・いるけど・・・どうしたの?そんな改まって・・・。」
の母親は、いつもと違う雰囲気の柳生に
戸惑いながらも、父親がいるリビングへ案内する。
「お邪魔します。」
リビングに向かうと昌代の父親がいた。
「どうした?」
父親は柳生にいつも礼儀正しいな、と笑って言う。
「実は大切なお話があります。」
柳生は覚悟を決めて言葉を放つ。
「・・・・・・なんだ?」
父親も、二人の雰囲気がいつもと違うと感じ、椅子に座り
話を聞く事になった。
「実は、比呂士との子供が出来た・・・。」
怒られるのを覚悟で、は両親に打ち明けた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
二人の発言に目が点になる両親。
「かあさん!!早く式場に電話しなきゃ!」
両親は慌ててタウ○ページを開いた。
「あなた、親戚の方にも連絡しないと!!」
「・・・・・どうやら、大丈夫みたいだな。比呂士。」
両親の行動に吃驚しながらも、柳生に良かったなと、は言った。
「・・・・良かった。」
柳生は自分の両親に話すより、の両親に話す方が緊張すると答えた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫さ。比呂士の事凄く気に入っているみたいだぞ?」
そう言いながら、はクスクス笑う。
後は、柳生の両親に会うだけ。
柳生の父親はお堅いと聞いたのだが、大丈夫だろうか。
柳生は緊張のあまり、顔色が悪い(汗)
「比呂士、かなり顔色悪いぞ?」
一気に二家族に報告するのは、やり過ぎだったかだろうか・・・。
は、心配になった。
「大丈夫ですよ。」
柳生は、”ちゃんと両家に話をしなければなりません。”
と決意を決めた真剣な顔で答えた。
「比呂士は真面目だな・・・絶対に良い父親になるな。」
柳生の台詞を聞いて、ニコッと笑う。
「そうですか?と子供の為にも私は良い父親になりたい。」
柳生は自分のなりたい父親像を語り始めた。
「へぇ・・・私も良い母親にならないとな。」
お互いに頑張ろうな。と歩きながら話をする。
やがて柳生家に到着。
かなり緊張がピークに達しているのか柳生の顔は青ざめている。
「比呂士、自分の両親なんだからそんなに緊張するな。」
ほら、行こうと言って柳生の自宅の中へはいる。
「あら?おかえりなさい。」
柳生の母は普段どおりに息子を迎える。
「今晩は〜・・・・。」
「嫌だ。彼女さんも一緒だったのね。お部屋散らかっているけれど
あがって頂戴。」
オホホ・・・と苦笑しながら、柳生の母親は彼の部屋へ案内する。
「いや、母さん。大切な話があるんだ・・・・。」
柳生は部屋へ案内しようとした母親の肩を掴んだ。
「なぁに?今でなければいけないの?彼女が来ているのだから・・・。」
ねぇ?とに尋ねる。
「いや、あの・・今の方が・・・。」
は、言いづらそうだった。
そんな二人を見た母親は、リビングへと案内した。
「そうなの?」
母はオロオロしながら、おとうさんも一緒に?と聞いて来た。
「一緒の方がありがたいです。」
と付け加えの手を握る。
「わ、分かったわ。」
ちょっと待っててね。と言って、母親は父親を呼びに行った。
数分後、やって来た父親は”どうしたんだ?”と柳生に尋ねた。
「実は大切なお話があります・・・のお腹に私の子が出来ました。」
柳生は真っ直ぐ前を見て両親に話した。
「なっ・・・・。」
「じょ・・冗談でしょう?」
と、両親は顔が引きつってしまう。
「なので結婚する為の許可を下さい。」
柳生は両親にむかって土下座した。
「おま・・・お前!!まだ学生じゃないか!!まだ高校生なんだぞ!!」
父親は、頭の中が真っ白になってしまった。
まさか、自分の息子がこんな事になるなんて・・・。
「分かっています。ですが、本気で愛しているのです」
彼女の両親には許可をいただきました。と柳生は頭を下げる。
両親は顔を見合わせた。
「あ・・・の・・お願いします!!」
は、柳生の隣で土下座をする。
「・・・・子育ては大変なんだぞ。まだ十代だし・・。」
一体どうやって育てる気なんだ?と二人に聞く。
「このままではダメだと分かっています。なので私が学校を辞めて・・・。」
柳生は本当に覚悟を決めていた。
親が例え、勘当してもと自分達の子供は守ると誓っていた。
「ば、馬鹿!!辞めたって良い仕事場が見つかると思うのか!??
大体、お前・・・将来の夢はどうした!!医者になるんだろ!!!」
「・・・・・・。」
(こういう場合・・・堕ろすべきなのか?中絶??)
柳生親子のやり取りを見て、はそんな事を考えていた。
「・・・ちょっといい?」
母親はのお腹を触った。
「・・・・ここにはあなた達の分身がいるの。
ちゃんと育てられる?生半可な気持ちじゃだめよ?」
と柳生に少し強めな発言をする。
「半端な気持ちなら、もうとっくに中絶しています。
比呂士なら・・・・協力して育てる事が出来ると信じています。」
は、柳生の母親の目を見ながら真剣に答える。
半端じゃない、それは・・・それだけは分かって欲しいのだ。
「ふん・・・誰でも言葉には出来るんだ。」
と不満気味な柳生の父親。
「・・・・いいわ、お母さんは認めてあげる。」
3人はビックリして母親を見た。
「・・・・ちゃんも覚悟は決まってるみたいだし。なにより息子を信頼してくれてるもの。」
「あ、有り難うございます!!」
問題は・・・柳生の父親だ。
かなりお堅い人なので、どうなのだろうか。
「比呂士がこんな子供だったなんてな・・信じられない。」父親は溜め息をついた。
「・・・こんな息子ですみません。ですが!!を愛しているんです。
お願いします、認めて下さい!」
柳生は再度父親に土下座した。
「君が息子をこんな風にしたんじゃないだろうな。
今までこんな事無かったのに・・・・・。」
色気でも使ったのか?とを疑い始める。
未だに、信じられない・・・夢でも見ているんじゃないか・・・と。
「とうさん!!なんて事言うんですか!?いくら父さんでも許せません。」
柳生は愛する人がけなされたのが気にいらないのか、激しく反論した。
「そう考えるのが正しいだろう!?今までのお前はこんな事をする子じゃなかったんだ!」
何でこんな事になるんだ・・・お前は騙されているんじゃないのか!?
と必死に自分の息子に目を覚ませと説得する。
「ちゃんと私自身が愛した人なんです!!騙されてなんかいません!!」
柳生は目に涙を溜めて、一生のお願いです。と頭を下げた。
さすがの父親もタジタジだ。
「もう良いじゃありませんか。賛成してあげたら如何です?」
「グッ・・・か、勝手にしろ!!」
柳生の父親は、そう言い残して今を後にした。
「・・・かあさん。」
柳生は父親は本当に賛成してくれたのか不安だった。
「大丈夫よ。あの人だって、あなた達が心配なだけだし。でも本当にしっかりしなさいね?」
母親は柳生の肩を軽く叩いた。
さて、今日はお祝いねvvと、台所で夕飯の支度を始めた。
「あ、あの!私も手伝います!!」
は、慌てて台所に向かい柳生の母親の手伝いをし始める。
「・・・・。」
柳生は急に緊張の糸が解け、その場に座り込んでします。
「情けないですね…。」
「比呂士、お母さん料理上手だな!!」
台所から嬉しそうにお茶を持って、が戻ってきた。
お茶を持ってきたに手を伸ばし、頭を撫でる。
「ん?どした?」
「いや、可愛いなぁと。」
さらっとクサイ台詞を吐く柳生。
「これからは、毎日貴方って呼ぼうか?」
頭を撫でられニコニコと笑いながらは柳生に抱き付く。
「それはいいですね。」
柳生はまだ頭を撫でている。
「ほら!いちゃいちゃはいいからご飯運んで。」
母親はおかずが盛られたお皿をお盆にのせる。
「あ・・・はい。」
柳生から離れては料理を並べていく。
”御馳走”と言っていたが、本当に豪華だった。
「さー!食べましょ☆」
母親は腕によりをかけたから美味しいわよ、と笑って言った。
「頂ま・・・・うっ・・・・。」
夕食を食べようとしたその時だった。
急に吐き気を催し、は洗面所へと走っていった。
柳生も急いで後を追う。
洗面所にうずくまるの背中を摩る。
「大丈夫ですか?」
「・・・・気持ち悪い・・悪いが、今日は帰る。」
はそう言うと、立ち上がりフラフラと玄関に向かっていった。
「大丈夫?歩いて帰るのは無理そうだから泊まっていきなさい。」
母親はのフラフラ加減が心配になり、提案すした。
「あ〜・・・いえ。大丈夫です。帰れますから。」
柳生の母親に元気そうな素振りを見せ、心配掛けないようにと振る舞う。
「だめよ!お腹の子に何かあったら大変でしょう?」
もう家族なんだから甘えて?と母親は微笑んだ。
「・・・じゃあ、お言葉に甘えまして・・。」
結局、この日は泊まる事になってしまった。
夜、柳生の部屋で寝るふたり。
相変わらず、柳生はのお腹を撫でていた。
「ここにいるんですね。」
柳生はしみじみと答えた。
「二人が愛し合った結果出来た子供だから、協力し合って大事に育てような。」
男の子か女の子かまだ分からないけどな・・・。
今から楽しみだとは笑顔で言った。
「私は、に似た可愛い子だと思いますよ。」
笑顔で柳生は言った。
「そうか?比呂士に似てる子かもしれないぞ?あ、名前も決めるんだよな。
なんだか色々楽しみだ。」
は、続けて、一人じゃ寂しいだろうから二人以上は子供が欲しいなと言った。
その晩、二人はベットに横になりながら、子供について語りあった。
そうして、数ヶ月経ったある日。
場所は、テニスの大会会場。
「で?大分お腹は大きくなったんか?」
そろそろなんだろ?と柳生に尋ねる。
「えぇ、元気良くお腹を蹴ったりしますよ。」
すっかり父親のような顔をする柳生。
「お前、父親って感じになってきたよな。」
人間変わろうと思えば変われるモンだ。仁王は、柳生を見てそう思った。
「比呂士〜!!!」
柳生の名前を呼びながら、走ってくる妊婦が一人・・・・・。
「走ったら危ないですよι」
柳生はすかさず、に手を差し出す。
「大丈夫大丈夫。ほら、お昼のお弁当だ!」
は、転びはしないと言い張った。
「お〜お〜・・・本当に大きくなってるな。」
赤ちゃんがおるんか・・・と大きくなったお腹を見る。
「ありがとうございます。」
柳生は笑顔で受け取った。
「比呂士、今日は頑張れよ?お腹の子も見てるんだからな。」
負けたら承知しないぞ!と柳生に渇を入れる。
「はい。」
柳生は力強く返事をするとコートへ向かう。
「比呂士、がんば・・・・いっ・・・いった〜い・・!!!」
は、痛みを訴えるとその場に蹲ってしまった。
「!?」
急に叫びだしたに柳生は駆け寄る。
「・・・もしかして陣痛ですか?」
柳生はの肩を抱き、楽な姿勢になるよう伝える。
「・・・だ、大丈夫。」
比呂士は試合に集中してくれ、とはニコッと笑いながら言った。
「・・・分かりました。かあさん、の事お願いします。」
一緒に試合を見に来ていた母親にを託し、自分は全力で相手を倒そうとする。
「そんじゃま、行きますかね。」
仁王は、立ち上がり”早めに倒さないとだろ?”と柳生に言った。
「えぇ!」
柳生と仁王は、全力で戦い圧勝!!
試合が終るや否や、全力で走り、病院に向かった。
「比呂士、試合は終わったの?」
待合室で、椅子に座っていた柳生の母親は彼が来たのに気付き立ち上がった。
「大丈夫、勝ちました。」
柳生は誇らしそうに言った。
「そう。彼女も今頑張っているから、此処で待っていましょうね。」
お疲れ様。
そう言って母親は柳生に飲み物を手渡した。
「・・・ありがとう。」
渡された飲み物に口をつけて、ただただ無事に産まれる事を祈った。
時刻はもう、夜中の零時を指していた。
「もうそろそろ産まれると思うのだけれど・・・比呂士、少し仮眠を取ったら?」
貴方、試合で疲れているでしょう?と母親は、柳生に寝なさいと言った。
「いえ・・・が頑張ってるのに寝るなんて出来ません。」
と、柳生は言った。
例え自分が疲れていたとしても、自分の妻であるが頑張っているのだ。
休む事は許されない。
「比呂士は立派な父親になるわね。」
子供も立派に育つわ・・・・と母親が言った瞬間だった。
廊下に、響き渡る位の赤ちゃんの産声が聞こえたのだ。
産声からしばらくして、看護婦が出てきた。
「おめでとうございます☆元気に産まれましたよ」
と笑顔で言った。
「やったわね!比呂士!!貴方もパパよ!!!」
看護師の言葉を聞いて、母親は大喜びした。
柳生は力が抜けて床に座り込んだ。
「よ、良かった・・・。」
「元気な男の子ですよ。」
本当におめでとうございます。
そう言い残し、看護師は去って行った。
「良かった・・・本当に良かった・・・・。」
柳生は、床に座りながらも涙を流した。
「比呂士、大丈夫?」
さ、立って・・・と床に座り込んでいる自分の息子を母親は立たせた。
「良かったわね、しばらくしたらちゃんに会いに行きましょ。」
母親は息子にハンカチを渡した。
暫くして、二人はのいる病室に向かう。
「入るわよ。」
ノックをして、病室の中に入っていく。
「、お疲れ様。ありがとうございます。」
病室の入った柳生は、を見るなり、手を握った。
「ん・・・・・。」
男の子なんだな・・・と柳生の手を握りかえしながら
は嬉しそうに笑った。
「・・・本当にありがとうございます・・・。」
柳生は涙を流して喜んだ。
自分は今、本当に幸せだ。幸せすぎてどうにかなってしまいそうだった。
「比呂士は涙もろいんだな・・・。」
苦笑しながらも、柳生の頭をよしよしと撫でて慰める。
「・・・す、すみませんι泣いてばかりで。」
柳生はごしごし目をこすり、産まれたばかりの子に目をやる。
「この子の名前・・・決めないとな。」
”どんな名前が良い?パパ”と、は赤ん坊を見つめる柳生に尋ねた。
「名前ですか・・・。」
柳生はしばらく悩んだのち、笑顔で答えた。
「二人の名前を使って名付けませんか?」
「二人の名前をか?」
う〜ん・・・比呂士と・・私の名前だろ?
良い案あるかな・・・とは悩み始める。
「・・・それかにつけて欲しいです。」
柳生は子供の手を握りながら微笑む。
しかし、柳生の発言にの反応はというと、余り良いものではなかった。
「私に・・・・?こういうのは二人で考えるものなんじゃ・・・・。」
ますます困ってしまったのか、は眉間に皺を寄せた。
子供の名前・・・・かなり、悩んでしまう。
出来る事ならば、この子自身に選んで欲しいが、そうもいかない。
「・・・名前って難しいですね。」
子供に触りながら柳生は悩んでいる。
「ま、ゆっくり決めていこう。まだ時間はあるんだから。」
二人が愛し合った結果、出来た子供なのだから、二人で決めたい。
何時しか、子供に”どうしてこの名前にしたのか”と聞かれてもいいように・・・。
「いいですね☆」
柳生は子供を触りながら言った。
その後の二人の生活は、また次の機会に・・・・・・。
〜END〜