「またですか・・・・・。」

















































Was besiegt werden anbetrifft, besiegend


































































「また、負けたのか?」



「えぇ、そうなんですよ。一体誰なんでしょうか・・・“”さんという方は。」













私は、中間・・・期末・・・そして、模試。

全てのテストで、さんに負けています。














三年生になってから、転校して来た方だとは存じているのですが・・・・他の情報は、一切ありません。

何しろ、柳君が知らないと言うのですから、私なんかが知る筈がないのです。


















「何がいけないのでしょうね・・・。」



負けず嫌いな私は、一生懸命勉強をしたのに。




















悔しい。

何か、いけない所がある。

その欠点を、克服しなければ、彼女には勝てないでしょう。

































































「そんなに、勉強は大事なんかのぅ。」



「仁王君、少し黙っていてくれませんか。」



「え、嫌。」



















・・・・・・・・全く、この人は。

















私は、必死なんです。

次回の期末は、絶対に負けたくない。
















「名前しか知らない相手と、対決・・・・ねぇ。」



「何か、問題がありますか?何事も、負けたくない主義ですので、誰だろうと関係ありません。」



仁王君には、分からない事なんでしょうか。








































“俺は、テニスで負けるの以外は・・・・・あ、あったぜよ。女を奪われるのも納得いかんの。”











































彼は、笑いながら、私にそう告げると、去っていってしまった。

全く、嵐が去って良かった。

これで、勉強に集中が出来ますよ。













































































「あら・・・・・。先客がいたんですね。」






















仁王君が去って、間もなく、誰かがこの部屋に入ってきた。












誰かと視線を向けると、そこには女性が立っていた。

彼女は、両腕に包帯を巻いていて、その腕の中には、勉強道具。













一体、誰なのでしょうか。

下級生・・・・ではありませんね。

教科書は、私と同じですから。



































「此処、良いですか?」



「え?あ、はい・・・・どうぞ。」



「有り難う。」



目の前に座った彼女を、思わず見てしまう。


















美しい方・・・・ですね。

美しいだけに、両腕の包帯が、目立ちますが・・・・怪我でもしたのでしょうか。





















































「気になりますか?この包帯。」



「あ・・・・い、いいえ・・・・・。」



「良いんですよ。目立ちますからね・・・・この包帯・・・。」



彼女は、まるで小さな子の頭を撫でるかの様に、優しく自分の腕を摩る。

しかし、腕を見る瞳は、見るに堪えない程、痛々しい気がした。




















「・・・・・・・ちょっとした事故があったんです。」



彼女は、自分の過去について、語り始めました。














彼女は、高校一年生の時に、自宅が火事で炎上。

その時、彼女だけが運悪く自宅の中にいた。

火事の原因は、夕食の支度の最中の事。

燃え上がった炎を見つめて、かなり動揺が激しく、頭の中は真っ白。

助けを呼ぶにも呼べない状態。

そして、動揺のせいで油を自分の腕に掛けてしまい、火傷を負った。

だから、包帯を巻いている____。

























































「・・・・・人に見られたくなくて、教室には一度も行った事がないんです。」



「そうですか・・・・・・・・ん?ちょっ・・・・ちょっと待って下さい。じゃあ、何処で授業を受けているのですか?」



「独学です。それから、時々先生が補習をしてくれるんです。」


























独学?教師が、補習??









































教室には、一度も行っていないと言ってましたね。

そうなると、お知り合いの方は、いない確率が高い。

そして、三年生の教科書。









































































「貴女は、さん・・・?」















私は、恐る恐る彼女に尋ねてみました。

私が負けている女性と、類似する点が見つかったので。






















「えぇ。その通りです。」



「そうですか・・・・。」



この女性が、私が負けていた相手。


















絶対に、勝ちたいと思っていた目標。

まさか、こんな場所でお会いするなんて。





















「それが、何か?」



「いいえ。あぁ・・・私は、柳生比呂士と申します。」



「柳生・・・・?あぁ、学年でトップクラスの柳生さん?」



「貴女には、負けていますけどね・・・。」



思わず、苦笑してしまった。





















何となく、彼女には勝てそうにないと思ってしまう自分が、此処にいるから。






















どうして、そう思ってしまったのか。



ですが、彼女にでしたら、負けを認めるのも良いでしょう。














「今度、一緒に勉強をしませんか?お互いに、教え合うのも面白いと思います。」



「良いですね。是非、お願いします。」



私は、彼女と約束を取り付け、部活をする為に、部屋を後にした。