そして君は、どうする





















































「また浮気されたんだって?」







と、友達でも無いようなクラスの人間に言われた。





正直、恋人の浮気なんかどうだって良かったから、適当に返事をしてその場は済ませた。





あぁやって人間の不幸(私の場合は別に何とも思わないけれど)を面白そうに、興味津々で聞くのもどうかと思う。





まぁ・・・・・その程度の人間で収まっているなんてある意味可哀想だけど。





話題の的になると、視線が痛いのは確かだわ。






















(恋人の浮気ごときで、こんなになるなんて・・・・他に興味を持たないのかしらね。虚しい。)







そろそろ、あの浮気男にも飽きてきたし・・・・別れるか。





何か、自分に変化が起こると期待して付き合ってみたけれど、期待外れ。





誰か、変化をもたらしてくれるような人間に出会えないものか・・・・。






























































































「別れたそうだぞ。」





「・・・・・・何の事です?」







何も知らないかのような態度をとってみましたが、無駄だった様ですね。





柳君は、“惚けても無駄だ。お前は、分かっているんだろう?”と笑って私に言った。





えぇ、勿論分かっていますよ。





自分の好きな女性の事ですし、調度その光景を目撃してしまいましたから。





そう、彼女は今は誰とも付き合っていない。





しかし、私には彼女に告白する様な勇気は持ち合わせていない。





だから、告白はしないし、する気もありません。



















「他の男の元に行ってしまうぞ?お前は、其れで良いのか?」





「それは仕方ありません。私は、さんに意見を言える様な立場にいませんから。」





「自分から言ってみるのも、大事じゃないのか?お前なら、大丈夫だろう。」





「私は、そんな勇気はありませんよ。」







さんは、私なんか視界に入っていない。





私の事なんかに、興味は持たれないでしょう。





私は、傷付くのが怖い。





確信さえあれば、告白をしますが、現状ではそれがない。





だから・・・・・諦めるしかないんです。






「それは分かるが・・・・行動を起こさなければ、何も始まらないと思うがな・・・・・。」



















































































『本当に好きで、付き合いたいと思うなら、自ら行動に移れ。』












(そんな事、出来るようならやってますよ。はぁ・・・・・。)





教室に居ると煩くなりそうだったので、場所を移し、読書に専念しようと本を開いた。





さん・・・・・か。





恋人になれるならば、なりたい。





なりたいのに、行動に移らない私は、何て愚かなのだろう。





神に願った所で、何もならない。





変わらない現状。





変わらない彼女との距離。





このままで良いのだろうか。





本当に、このまま何もしないままで、諦めてしまって良いのだろうか・・・・。

















































































「・・・・・・こんな所で一人で居て楽しい?」





「・・・・・・?!」





「どうも。良く分からないけど、柳君がこの場所に行かないと、お前の秘密を暴くというから来たのだけど・・・・・。」





「柳君が・・・・ですか。」





「えぇ。・・・・・・隣、良いかしらね。」




「あ、はい。どうぞ・・・・。」







“有り難う”そう言って、彼女・・・・・・さんは、私の隣に腰掛けた。





柳君は、余計な事をしてくれますね・・・・・。





これでは、読書どころじゃないですよ。





緊張し過ぎて、集中出来ません。































「・・・・・・君は、隣に人がいるというのに、本を読むのが優先?それは、私としてはどうかと思うのだけれど・・・・・如何?」





「あ・・・・・あぁ、済みません。失礼を詫びましょう。」





「宜しい。」







こんな風に彼女と話が出来る日が来るなんて、思ってもみなかった。





隣で彼女が、私にだけに笑ってくれているなんて。





まさか、夢なんでしょうか?





それとも、幻・・・・・?





























































そんな事を考えている私に向かって、彼女は、“ねぇ”と話し掛けてきた。








「変化を求めるのは、いけないのかしらね。」





「はい?」





「変化よ。へ・ん・か。変わるに化けると書いて、変化。それを求めるのは、いけないと思う?」





「いえ・・・・そうは思えませんが・・。」







訳も分からぬまま、そう伝えると、彼女はとても満足そうな顔をした。













































変化。











変化が欲しいの。












何も変わらないまま、一日を生きていくのは、どうしても嫌。











確かに、変わらない方が良い事だって沢山ある。











けれど、私は変わっていきたい。











一つでも、日々変化があれば構わないから。










沢山だなんて、欲張ったりしないから変化が欲しいのよ。




































































“だから別れたばかりの人間と付き合ってみたけれど、結局収穫は零。時間を無駄にしてしまったわ”と苦笑いを溢した。





















































変化・・・・・か。





だとしたら、今の状況も変化と言えるのだろうか。





“変化”と、断定してしまっても構わないでしょうか。





変化が欲しくなかった自分と、変化が欲しいと願う彼女。





全くの真逆の立場。





一つでも、変化が欲しいと言うならば。





何でも良いから、変化が欲しいと言うなら・・・・・・。








































































「私と、付き合ってみませんか?」





「は?」



























驚きの余り、目を見開いた彼女を見ながら、私は話を続ける。







「変化が欲しいのでしょう?それならば、これも立派な変化と言えると私は思います。どうです?私と、付き合ってみませんか?後悔は、最低限に抑えてみせますよ。」





「・・・・・貴方、好きでもない人間と付き合えるの?」





「いいえ。それは出来ません。ですが、私は・・・・・その・・さん、貴女が好きなんです。」





「・・・・・・・・・好き?」





「えぇ、好きです。一人の女性として好きです。ずっとずっと、お付き合いをしたいと願っていました。・・・・・こんな状況で告白する事を許してください。」







本当に、こんな時に言うなんて可笑しいと、自分でも思います。





ですが、今此処で言わないと、きっとまたズルズルと先延ばしにしてしまうかも知れません。





ならば、彼女が、変化を望んでいる今しかない。





どうか、どうか、どうか。





私と付き合う事を選択してくれますように。





運が、私に味方をしてくれますように。





お願いします。どうか、良い返事を・・・・・・。























































































「・・・・・・どうする・・か。私は、貴方に恋愛感情を持っていないのよね。」





「・・・・・・・・それは、承知の上です。ですが、付き合って行く内に好きになっていけるように努力しますから。」





「柳生君は、落ち着いていて積極的じゃないと思ったけれど、違ったのね。」





「えぇ。其れについては、自分自身でも驚いていますよ。私は、諦めようとしていた位ですから。」





「そう・・・・変化を求めない事から、変化を求めようとしている訳ね。」





「まぁ・・・・そんな処かと。」







「そう、それは面白いわね。貴方も、変わりたいという事・・・・・。」



























































“御互いに、刺激し合える関係か・・・・・それも、一興ね。”






そう言って、笑顔になった彼女は、話を続けた。

































































『良いわ。付き合いましょう、柳生君。』