「柳生、あの男なんて名前?」

「知りません。知っていたとしても・・・・教えたくありません。」
























































意味。
























































私の名前は、柳生比呂士と申します。

隣に、いらっしゃるのが さん。

私の・・・・恋人です。


しかし、さんには、悪い癖があるのです。


















































それは・・・・・・・・。





















































「あ、あの男格好良くない?」

来ました。

またしても・・・・。

彼女の癖は、デートの時でもなんでも、他の男の方に視線が行ってしまう事です。








その度に、私が何度傷付いたか。

何度、嫉妬した事か。














さん、貴女分かっていますか?

いえ、分かっていないでしょう。

分かっているのならば、既に止めてくれているはずですからね。





「おい、比呂士。」



「何度尋ねられても、知らないものは知りません。」



「ふん。役立たず。」



役立たず?

結構です。

こんな事で、役に立ちたくはありません。

しかし、そろそろ止めて頂きたいのが本音。

いくら、私が温厚篤実な人間だとしても、毎回毎回やられては、困ります。
























さん、私の事どう想っているのですか?」



「愛してる。」





























さんは、何の迷いもなく、私にそう言ってくれた。

正直嬉しい。

私も、さんの事は愛してます。

他の方なんか、要らない位に。





「では、何故他の男に目がいってしまうのです?私は、もう耐えられない。」


「・・・・・・・秘密。」


さんは、悪戯っ子の様な笑みを浮かべた。

秘密。

私には、言ってくれない。

では、他の人達は知っているのでしょうか?

あぁ、柳君辺りならば知っているかもしれませんね。























「私に秘密ですか。分かりました。もう結構です。」

































”他の人は、知っている。”

そう考えると、無性に腹が立ってくる。

さんは、私には、言ってくれない。

確かに、他人なのだから、仕方がないと言えば仕方がない。




しかし、私は、出来れば話して欲しかった。

さんの事ならば、何でも知りたい。

何故ならば、世界で一番好きな方だから・・・・・・・。
























あれ以来、私はさんを避け始めた。

理由は、分からない。

ただ、”会いたくない”という気持ちが私をそうさせている。




「嫌われたかもしれませんね。」

さんに、嫌われるもの程、嫌なモノはない。

彼女との恋は、こんな形で終わってしまうのだろうか?

終わるとしたら、何て嫌な終わり方なんでしょう。

こんな事ってあるのでしょうか?

時間が戻せるならば、楽しかった・・・幸せだった頃に戻して欲しい。



「無駄ですね。考えるだけ。」







「おい、比呂士。」



一瞬、身体が強張った。


「お前、何私を避けているんだよ。」



















さん・・・・。」



逃げたかった。

でも、逃げたくもない。

矛盾しているこの感情。





















































「御免。」





























































突然、さんが謝ってきた。

一体どうしたのだろうか。

これは、”別れる”の御免なのか。

それとも、”あの時は・・・・。”と、言う御免なのか・・・。




「仁王から聞いた。私のせいでお前を苦しめていたんだな。」


「仁王君・・・・ですか。」




一体、何を話したのだろう。彼は。


「あの・・・さ。もうしないから。」


「しない・・・・と、言いますと?」



状況が飲み込めない。



「だ、だから!!他の男に目移りしないって言ってるんだ。」



「・・・・・・あぁ。あれですか。」



止めてくれるのは、嬉しい事。ただ、引っかかるのは、何故そんな事をしたのか。

私は、理由を知りたい。



「序でに、理由も教えて頂けないでしょうか?」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

さんは、困った表情をしたまま、話そうとはしない。

そんなに言いたくない事なのだろうか?






















「・・・・・・・だ。」



「え?申し訳ありません。もう一度おっしゃって下さい。」



「お前が、私だけを見ていてくれる様にやっていただけだ。
そうすれば、お前は、他の女なんか見ないだろ?私の事だけを見て欲しかったから・・・。」































そうだった。

何時だったか、さんはこんな事を言っていた。








































































『私は、強がっていても弱い人間なんだよ。
だから、心配で仕方がない。柳生がいつ違う女の元へ行ってしまうのか・・・。』

























































成る程、あれは、癖なんかではなく、態とやっていたんですね。

そして、意味があった。

私が、さんだけを見ているように・・・・という意味。

愛しい。さんは、私の事を愛してくれている。




「そんな事をしなくても、私は貴女のモノです。離れるなんて事はしません。」



これだけは、断言が出来る。

私は、貴女の側を離れない。

離れたくない。

この先も、離れることなく、傍にいます。

だから、私の隣で笑って・・・・。

















いつまでも、二人で。

助け合い、生きていきましょう。

私の幸せは、貴女が傍にいて微笑んでいてくれる事なのですから・・・・・。