君は、誰を想う?
In solch
einer N
acht
星空が、綺麗だった。
こんなに綺麗だと、外へ行きたくなる。
だから、家を飛び出して、散歩へと出掛けた。
(良い夜だ。、外に出て来て正解だったかな。)
病院に入院している時は、夜中に抜け出すなんて、ご法度。
こう考えると、自分は退院したんだなと実感が出来る。
本当に、良かった。
自分にとって、大事なテニスも出来る日々。
やりたい事は、沢山ある。
「あれ・・・・?」
俺は、足を止めた。
前方から、月の光によってこちら側に向かってくる影。
そして、その影を追い掛ける様に歩いてくる人物。
俺は、見覚えがあった。
「あ、ゆっきー!」
「やっぱり、だったんだね。どうしたの?こんな時間に。」
「それはこっちの台詞。部長が寝坊したなんて事になったら、示しがつかないんじゃない?」
テニス部のマネージャー、は、俺に人差し指を突き出してきた。
確かに・・・真田に“たるんどるっ!”て怒られちゃうかも。
まぁ、それでも良いんじゃないだろうか。
だって、こんな良い夜に出歩かないなんて、勿体ないから。
「それに、風邪引いたらどうすんのよ。」
「大丈夫だよ。そこまでか弱くないからね。」
心配性だなぁ・・・・本当に。
けれど、心配してくれる人がいるって、良い事だと思うな。
俺は、凄く嬉しい。
「・・・・・は、一人?」
「うん。一人で、散歩。」
「それって・・・・危ないと思うよ。女の子の一人歩きっていうのは・・・・・。」
「そうかな。今は、男だって危ないんじゃない?それに私は、空手習ってるから平気!」
本当かな。
確かに、はかなり強いと思う。
あの真田ですら、彼女を怒らせまいと努力しているまでに。
ファンクラブの女の子達に、襲われた時も、一人で全員倒してたっけな・・・・。
“はさ、女はこうでなければいけないって言われるのが、大嫌いなんだ”
以前が、についてそんな事を言っていた。
だから、女だから____は、禁句らしい。
ファンクラブの女の子も、何か禁句の言葉を口にしたせいで、相当なダメージを受けたとか・・・・。
「ゆっきーはさ、こんな風に良い夜は、誰を想うの?」
二人で歩き出して数分、が口を開いた。
誰を想う・・・・?
「誰だろう。テニス部の皆かな?」
「ふー・・・ん・・・・そっか。あぁ・・・そうだよね・・・・・。」
は、一人でブツブツと何かを呟き始めた。
何を考えているのだろう。
俺の質問の答えには、納得いっていないのだろうか。
「そういうは、誰を想うの?」
「私?私はね・・・ヘヘッ・・・・。」
彼女は、笑った。
その笑顔は、照れている様にも、恥ずかしそうにも受け取れる。
「うーん・・・・私は・・・・・そうだなぁ・・・・・。」
答えを、考えていなかったのかな?
それとも、言う事を躊躇っているのだろうか。
「ゆっきーだよ。」
は、そう言うと“じゃあ此処で”と言って、走って行ってしまった。
俺を・・・・・・想う?
それは一体、どういう事なんだろうか。
答えを聞きたくても、彼女は此処から去ってしまった。
(今夜・・・・眠れるかな?)
この疑問は、今夜俺を眠らせてくれるだろうか。
そんな事を考えながら、俺は自宅へ向かう為に、踵を返した。