黒と白と灰色と
彼は、色に例えると真っ黒だ。
彼は、色に例えると白だ。
そんな二つの色を持ち合わせる幸村精市は、灰色なんじゃないかって思う。
それを本人に伝えたら、笑顔でバッサリ切られてしまった。
“口は、災いの元・・・・だよ”
と、いう感じに。
正直、あの時の笑顔は真っ黒だった。
口に出したら、大変な事になるのは分かっていたから言わなかったけれど。
言わなかったんだけど・・・・・本人は、察してしまった様で。
物凄い形相で、睨まれてしまった私。
それ以来、普通に会話を出来ていた頃に比べると、全く会話が出来なくなってしまった、現在。
話し掛けても良いけれど、そうしたらそうしたで・・・・かなりの距離を置いた様な会話になる始末。
(あんな事、言うんじゃなかった。どうして言ってしまったんだろう・・・・・あの時の私。)
まぁ、後悔したってどうにもならない訳でして。
引きずっていたって、何かが変わる訳じゃない。
「幸村が・・・・・怖い?」
「うん、怖い。」
「あんな奴が?」
「あんな奴って・・・・・私が好きな人・・・・・・じゃなくて、は怖くないの?」
「怖くない。同じ人間だから。」
親友のは、幸村君を怖くないと言う。
・・・・・・・・・・・うん。
確かに、見ていれば一目瞭然かも知れない。
は、幸村君が、いくら黒いオーラを出していたとしても・・・・全く怖がっていない。
寧ろ、対等にやりあっている。
「幸村が好きなら、慣れる事じゃない?私は、黒さがよく分からないから・・・・何が怖いか不明だけれど。」
「・・・・・・・・アレに、慣れろ・・・・と?」
無理です、サン。
私には、そんな強さがありません。
絶対に、気力・体力・精神力が極限にまで達しそうです。
「・・・・・・・。そんなに怖がっていたら、幸村が可哀相だと思わないか?」
“黒だろうが、白だろうが、灰色だろうが・・・・・幸村は、幸村だ。”
あの時のは、苦笑いをしていた。
どうして、怖がるのだろう。
果たして、怖がる必要なんてあるのだろうか。
「の言う通り・・・・かな。」
「何が?」
「だから・・・・幸村君をこわが・・・・・・って、幸村君?!」
「フフッ・・・・そんなに驚く事はないんじゃないかな?」
「え・・・・あ−・・・・・アハハ。じゃ、私はこれで。」
逃げようと、思いました。
直ぐさま、走って逃げようと試みました。
陸上部の私に、勝てる訳ないと思っていました。
だから、私は全力疾走しました。
「逃がさないよ。」
結果・・・・・・・・・・・・逃げられませんでした。
恐るべし、幸村精市。
この私に、追い付くなんて。
君、本当に・・・・元・病人なんですか?
「人間だよ。それから・・・・・俺を怖がるなんて、酷いな・・・。」
「ジジツ、コワインデス。ユキムラクン。」
思わず、棒読みになってしまった。
悲しそうな声を出していても、顔が全く悲しそうじゃなかったから。
幸村精市。
今の私には、どす黒いとしか思えない。
「俺はね、君が好きなんだよ。」
「・・・・・・・・・・冗談、言ってるの?」
「こんな笑えない冗談いって、何か得する事があるのかな?」
否、信じられない。
こんな状況で、告白されたって。
告白するならば、もう少し場所と状況を配慮して欲しい。
これじゃあ・・・・・。
これじゃあ・・・・・。
「私の想像したのと違う・・・・・。」
「何が?」
「あぁ・・・・・何でもない。何でもないよ。」
「そう。で、返事は・・・・良い返事が貰えるんだよね。」
「あぁ・・・・・もう、御自由に・・・・。」
返事なんか、する気になれない。
脱力感に捕われてしまったから。
今の私に、返事をしろと言う方が可笑しい。
(確実に・・・・・過ったと思う。)
幸村精市。
黒だろうが、白だろうが、灰色だろうが・・・・・今日から、私の恋人になったそうです。