言ったでしょう?
「なぁ、女がウ゛ァリアーに入ったって聞いたんだけど?」
「あぁ。確かスクアーロもそんな事言ってたね。」
「で?一体、何処にいんの?」
「何?僕に聞くの?なら、お金貰うよ。」
そういうと、マーモンは小さな手を片方俺に出してきた。
こんな時にまで、金の話かよ。
大体、そんな重要な情報でもなさそうだし?
この俺から金を盗るなんて、お前には早すぎだっつーの。
というか、何で王子の俺が探さなくちゃならないんだよ。
別に探す必要なくね?
用があれば、向こうからやってくんだろ。
やめやめ。
こんな馬鹿馬鹿しい事に時間なんて割いている程、オレは暇じゃない。
街に来たら、そこの有名な暗殺者を一人は殺す。
これが、俺にとってのお楽しみ。
だから、折角日本に来たんだし、肩慣らし程度に殺しておこうか・・・・・なんて考えた。
「ま、時間はたっぷりあるし・・・・・俺の楽しみなんだから、探してやるか。」
でも、捜そうと思ったけれど・・・・・・何かめんどくせぇな。
マーモンなら、どんな奴なら楽しめるか知っている筈。
金は払いたくないけど、この際仕方がない・・・・新人同様こんな所でも労力使うよりもマシだろう。
良い考えが浮かんだんだから、さっさと行動に移してしまおう。
思い立ったが吉日ってヤツ?
さぁ・・・・・・・・お楽しみの時間が始まるな。
「此処に居れば会えるって・・・・・本当かよ。」
信じられねぇ・・・・・・絶対に、信じてやりたくなくなる。
アイツ・・・・・・・・本当に術師なんだか疑いたくなってくるぜ。
俺がいる、現在位置。
花畑の、ど真ん中。
見渡す限り、花。
ウザイって思うくらい、花・花・花。
一体、どんな趣味もってんだよ・・・・・この暗殺者。
オレにしてみれば、悪趣味だな。
綺麗な場所で、綺麗に死にたいって願望でもあるのか?
それとも、他に理由があるって?
ばっかみてぇ・・・・・・汚れた奴は、汚れた場所で死ぬのが一番だろ?
今更、綺麗を気取ったって・・・・・・何にもならねぇっての。
「・・・・・・・ねぇ、そこの貴方。花を踏んで悪いと思わないの?」
「はぁ?アンタ何言ってんの?こんな花だらけで踏み場もないのに、どうやって花を踏まずに立てっていうんだよ。いや、そんなよりもオレに命令するなんて、良い度胸じゃん?」
「良い度胸も何も・・・・私は貴方が何者かも知らないし、何の為に此処にいるのかも知らない。そんな私に対して、良い度胸も何もないと思うけれど。」
女は、長く伸びた髪を鬱陶しそうな表情で耳に掛ながら、オレに向かって意見してきた。
確かに、オレの事をこの女は知らないし、逆にこの女の事なんか、オレは全く知らない。
どうして、オレが此処にいるのかも。
どうして、この女が此処に来たのかも。
どうして、この女が花を気にするのかさえ知らない。
そもそも、この女は一体何時からこの場所にいたんだ?
オレが来た時には・・・・・誰も居なかった筈。
だとすると、オレが来た後にやってきた事になる。
このオレが、気付かないなんて・・・・・・・・。
このオレが、後ろを取られるなんて・・・・・・。
「マジで、有り得ないから。」
「有り得ない?あぁ・・・・・女の私に、背後を取られたのが悔しいのね。何故、背後を取られたかって?その理由が、知りたいのかしらね。」
“特別に、教えてあげるわ。私に感謝しなさいよ。”
そう言った女は、“何でこんな簡単な事も分からないのか”と言いたそうな・・・・・いや、オレがバカだって遠回しに言いたいのか?
王子の俺としては、かなりご立腹なんだけど?
何なら、理由なんか聞かずに・・・・・アンタを瞬殺する事だって可能なんだぜ?
それを実行しないで我慢している俺に、感謝くらいして欲しいもんだな。
今だって、血が騒いでいる。
“話なんか聞かずに、さっさとこの女を惨殺してしまえ”
と。
「貴方より先に、この場所に存在していたからに決まっているでしょう?お馬鹿な王子様。」
「はぁ?俺以外の、気配もなかったのに存在していたって・・・・冗談っしょ?」
「貴方、私が冗談を言うように見えるの?それこそ冗談じゃないわ。まぁ、貴方なら冗談を幾らでも言いそうだけれど。」
この女、鼻で笑いやがった。
ムカついたから、もう決定。
コイツは、地獄逝き。
絶対に、楽には逝かせてやらない。
俺を侮辱した事を、後悔させてやる。
「何?私を、殺る気充分って感じね。殺しの天才だったかしら?ベルフェゴール。」
「何で、俺の名前知ってんだよ。テメェに教えた覚えないんだけど?」
「教えなくても、有名でしょう?王子様。」
この女、もしかしたら俺の目的の人物か?
まさか・・・・・・女だったのかよ。
嘘だろ?
嘘じゃないのか?
俺・・・・・もしかして夢でも見てるとか?
「大丈夫よ。私は死なないし。貴方に、私が殺せるとは思えないわ。」
「随分強気だな。そういう女は嫌いじゃないぜ?ただ、わっかんないんだよな。どうして、こんな花畑を戦いの場に使うんだ?死ぬ前に教えろよ。」
「だから、死なないって・・・・・まぁ良いわ。どうしてかって?そんな事、私が此処に何時来たかという答えよりも簡単だと思わないの?」
「知らねぇ。オレは、アンタじゃない。アンタの中に入って、思考が詠める能力があるなら分かるかもな。でも、オレにはそんな能力ないから、知らねぇよ。」
「あぁ、そう。それもそうね。じゃあ、教えてあげるわ。」
突然、顔の表情が変化した。
今まで、感情を出さなかった女が、初めて感情を表に出した瞬間だった。
きっと、普通の人間だったら恐怖に陥るだろう。
でも、オレは別。
怖いと思わないし、逆に妖艶なんじゃないかって思ってしまう。
うしし・・・・・・オレ、壊れてるのかもな。
相当、ヤバイかも。
そして、女は口を開いた。
妖しい瞳に俺を映し、表情は変えないままで。
“死体を隠せて、楽でしょう?”
「信じらんねー・・・・・・。」
アジトに戻ったオレは、椅子に座りゆったり寛いでいた。
あの後、どうなったかというと・・・・・勝負にならなかった。
というか、勝敗が決まりそうになかった。
だから、引き分けというよりも闘いを見送る形になった。
このオレが、延長戦?
本当、程々にしてほしいぜ。
さっさと、朽ちれば良かったのに。
“直ぐに、逢うことになるわよ。”
“はぁ?どうして分かるんだよ。”
“貴方に分からなくても、私には分かる。”
“うししし・・・・・・お前、変な女だな。”
「ベル、そろそろ行くらしいよ。」
「あ?あぁ・・・・分かった分かった。」
「今日は、一日目だからね・・・・・ルッスーリアには頑張って貰わないと困るよ。」
「オレにはどーでも良いね。オレは、オレが勝てばそれで良いって感じ?なんつって。うしししし。」
そう、どうでも良い。
今のオレには、オカマの奴が勝とうが負けようがどうなったって気にしない。
オレが気になって仕方ないのは、あの女の事。
直ぐに会えると言っていたけど、あれはどういう意味なんだ?
まさか・・・・・アイツが俺達の仲間なのか?
「な訳ないよな。」
「何言ってんだぁ?ブツブツうっせぇぞぉ!」
「はいはい。っつうか、オレよりアンタの方が煩いぜ?セ・ン・パ・イ。」
「あ゛ぁ?!テメェ・・・・三枚おろしにしてやろうかぁ?!」
「うしししし・・・・それは御免だね。ってか、来たぜ?御相手が。」
視線を向ければ、其処には人影が。
もっとよく見れば、敵の御出座しだ。
しかも、もっともっと良くみ・・・・・・・・・・・・。
「あの女・・な「黙ってろ。かっ殺すぞ・・・・・。」
見たことのある、顔を見た。
だから、声を出したらボスに怒られちまった。
何で怒られるんだよ。
どうして、黙ってろなんて言うんだ?まぁ、黙ってるけどさ。
ボンゴレの、背後の人影。
あの女に、オレは見覚えがあった。
そうだ、あの女・・・・・あの花畑にいた女だ。
どうして、あの場所にいるんだよ。
まさか、敵の方だったとはね。
何が、また会えるだ。
ふざけるなよ・・・・・俺をバカにしやがって。
オレが、どんなに楽しみにしていたのか知らないだろうが。
(気に入ってたのによ。あの女の事・・・・・。)
気になって、気に入って、違う意味でまた会ってみたいと思っていた。
それなのに、此れが再会かよ。
「特別に教えてあげるよ。あの女が、僕達の新しい仲間さ。訳あって向こうにいるだけなんだよ。」
「はぁ?」
何だ?それ。
訳って、なんだよ。
どうして・・・・・向こうに?
そう不思議に思いながら、女の方に視線を向けた。
すると、口の端を吊り上げた女は、声は出さずに口だけを動かしてこう言ったんだ。
“だから言ったでしょう?また直ぐに会えるって”