好きな奴?
曖
昧
“ブン太先輩ってー。恋人いなそうっすよね。好きな人とかもいないんじゃないっすか?”
俺が、美味そうに菓子を食べている時、赤也に聞かれた。
女・・・・・女ねぇ・・・・・・・。
お菓子をくれる相手なら、誰でも好き。
皆、平等に大好き。
「好きな奴はいるぜ?」
俺は、そう答えた。
だってそれは、嘘じゃないから。
恋人じゃないけど、俺は大好き。
だけど、違う奴が現れたんだ・・・・・。
「ん・・・・?この匂いは!!!!」
テニスの練習の最中、良い匂いが漂ってきた。
もしかしなくても、これはお菓子だ。
俺の本能が、そう言っている。
何処から・・・・・何処から、匂ってくるんだろうか。
「・・・・・・・・こっちだ!!!」
「は!?お、おい!ブン太!!ダブルスの練習は・・・・・。」
「休憩!!お菓子が俺を呼んでんだよ!!!」
ジャッカルなんかとテニスやるよりも、お菓子を食べる方が楽しいに決まってんじゃん。
・・・・・・・・っと、そんな事言ったら、ジャッカルに怒られちまう。
反省反省。
よし、反省終わり。
三秒くらい反省していたら、人影が見えた。
どうやら、匂いを漂わせているのは、彼女のよう。
でも、何時もお菓子をくれる子達とは全く違う。
話した事もない。
こんな子、いたっけ?
まぁ、良いや。
「なぁなぁ、俺にそのお菓子くんない?」
俺は、取り敢えず話し掛けない限り、お菓子は貰えないという一心で、彼女に話し掛ける。
だけど彼女は、俺の存在なんか無視して、ひたすらお菓子を美味しそうに食べているだけ。
俺・・・・・そのお菓子食いたいんだけどなぁ。
「なぁ、少しだけめ「あげる訳ないだろう。」
丸井ブン太。
初めて、お菓子をくれない人を見た瞬間でした。
うわーうわー・・・・・くれない訳?
この俺に、くれないっての?
何、この女。
なんか・・・・なんか凄く感じ悪い。
「ふぅ・・・・見てたって何も変わらないぞ。やらないって言ったら、やらない。」
「ケチ。少し位くれたって良いじゃんかよ。」
俺がいくら可愛く言っても、結局返ってくる言葉は“NO”。
悔しかった。
彼女の、美味しそうに食べているお菓子が欲しいだけなのに。
「チェッ・・・・此処に来て損した気分。アンタのせいだかんな。」
「そうか。人のせいにしたいなら、勝手にしていろ。それで気が済むなら良いんじゃないか。」
かなり強気な女だな・・・・・あー・・・なんか、本当に嫌になってきた。
「もう良い。ジャッカルん所に戻る。」
「丸井ブン太だったな・・・・お前。」
去ろうとする俺を、女は呼び止めた。
だけど俺は、悔しかったから無視して歩き出す。
こんなんで立ち止まったら、それはそれで嫌だから。
「私の名前は、だ。今度、美味しい店に連れてってやるよ。」
「んなっ・・・・・本気で!!!!」
俺は、振り返ってしまった。
しまった・・・・・やられた・・・・。
もしかして、騙された?
「私は大体この場所にいる。興味があるなら何時でも来ると良い。じゃあな。」
彼女は、笑った。
その笑顔は、凄く・・・・凄く可愛かった。
俺は、夢中になりそう。
そんな予感がしたんだ・・・・・・・・。
「ー!!!!」
「また来たのか。部活はどうした。部活は。」
あの日以来、俺は何かあればの元に行くようになった。
この気持ちは、まだ曖昧だけれど。
明らかに、他の子への気持ちよりは、違うと思う。
いつか、に言えるんだろうか。
俺は、そんな事を考えながら、と二人で、仲良くお菓子を食べた。