「あれは?」
「シナモンロール。」
無知
「じゃあ、これは?」
「・・・・・・あのなぁ、俺は勉強してんだよ。」
は、何故か毎日毎日俺の家に来る。
一体、何を考えてんだかな。
毎日家に来るって事は、親もの事を知っている事になる。
“あの子、ブン太の恋人?”
この台詞を、どんなに聞いた事か。
俺は、違うって言っているのに。
どうして、分かってくれねぇんだ?
「、お前・・・・もうくんなよ。」
「何故だ?」
「何故って・・・・・・。」
あれ、何でだろう。
よくよく考えると、別に・・・そんなに嫌じゃねぇな。
ただ、恋人って思われるのは・・・・・なぁ?
ウ゛ァンパイアだし?
人間の女じゃ、ないし。
「・・・・・・・貴様は、種族で差別するのか。」
は、怒っていた。
彼女を見ると、全身が怒りで震えていた。
不味い・・・・・怒らせちまった。
今までは、怒ったとしてもそれは演技に過ぎなくて。
直ぐに、何時も通り色々な事を、俺に聞いてくる。
「帰る。」
でも、今日は違った。
これは、完璧だ。
俺、完璧に怒ったを知らないから、対処のしようがねぇ。
「フン・・・・・見損なったぞ。」
は、そう言って去ってしまった。
見損なったって、なんだよ。
俺、お前に優しくしてたじゃん。
分からない事、沢山教えたじゃんか。
「はぁ・・・・良いや。腹減ったし、捜すのだって、面倒だし。」
「ブン太、どうしたの?調子が悪い??」
「んあ・・・・?なーんか・・・・食う気がしねぇ。」
夕食時、食べ物が喉を通らなかった。
飯は、不味くない。
何時も思うけれど、とても美味い。
けど、今日は駄目だ。
御飯茶碗一杯も、食えない。
「育ち盛りなんだから、もっと食べなさいな。」
「いや、いらねぇ。ご馳走様。」
俺は、食べるのを止めて、部屋に戻る事にした。
あんなに美味い料理を残すなんて、罰当たりな事をしてしまった。
あぁ・・・・無理してでも、食べるべきだったか?
部屋に戻り、ベッドに寝転がると、雨の降っている音が聞こえた。
「雨か・・・・・。」
“雨は、嫌いだ”
が、以前そんな事を口にしていた。
彼女は、夜が好きだ。
あの・・・青白く輝く月が、好きだって言っていたな。
そんな綺麗な月を、我がもの顔で、独占されるのが、嫌いだと言っていた。
は、雨に濡れると力が半減するとか・・・・言ってたな。
「・・・・・・・大丈夫・・かな。」
不安になってきた。
今、何処にいるんだろうか。
濡れていないだろうか。
もしかしたら、何処かで倒れてるんじゃ・・・・・。
「・・・・・・・・・あぁ!畜生!!」
俺は、家を飛び出した。
本当なら、放っておけば良いのに。
何やってんだ、俺。
に、“見損なった”なんて言われたばかりなのに。
馬鹿かな・・・・。
「何処にいんだよ・・・あの・・・・馬鹿!!!」
走っても走っても、が見つからない。
やっぱり、いないんだろうか。
俺の、思い違い?
「・・・・・・ははっ。なんか、馬鹿みたいじゃん。」
喧嘩したり、心配したり、不安になったり・・・・・俺ばっかりが、こんな風になっているんだろうか。
に、振り回されてばかりだよ。
「ブン・・・太・・・・・?」
弱々しい声が、聞こえて来た。
この声・・・・かなり弱いけど・・の声だ。
俺が、間違う筈はない。
「おっまえ・・・馬鹿じゃねぇか?何やってんだよ!弱いんだろ?だったら、早く俺ん所に戻ってくりゃあ良いんだよ!」
「フン・・・言った・・・・だろう・・・戻らないって・・・。」
「バーカ。こんな時まで、強がってんじゃねぇよ。どんなに強いウ゛ァンパイアだろうと、頼りたきゃ頼れ。」
「・・・・・・・頼って良いのか?」
は、とても驚いている様だった。
今までだって、俺を頼ってたくせに。
もしかして、自覚ないのか?
「・・・・・私は・・知らない事ばかりだな・・・・。」
全くだぜ。
少しは、自覚を持てっての。
こんなウ゛ァンパイア、見た事ないぜ。
・・・・・・・・いや、ウ゛ァンパイアを見たのは、初めてだけどよ。
「しょうがねぇから、お前の質問に何でも答えてやるよ。」
「これは、何だ。ブン太。」
「それは、ジャッカル!!物じゃねぇ!」
スゲェよ、本当に。
ジャッカルを、“物”として捉えやがったよ。
全く・・・・・本当に、無知な奴だ。