流れに逆らってみようかと思って
「・・・・・・・・・・で?」
だから、何だと言うのだろう。
だから、どうしたっていうのだろうか。
逆らったって、良いんじゃない?
僕と、一緒になるというのなら・・・・・早くても、遅くても構わない。
この僕に出会ってくれるなら、どうだっていい。
「逆らったら、こうなっただけよ。全く・・・・・逆らい方が甘かったみたいね。」
「わぉ。君、それは遠回しに僕に会いたくなかったって言っている訳?」
「わお、勘が鋭くて助かるわ。一度だけ尊敬してあげましょうか?」
「尊敬なんて、しなくて良いよ。そんな事より・・・・・にとって一番の僕に、何か頂戴。」
「物をねだるなんて・・・・・男として、どうなのかしらね。」
男として、どうなのかなんて知ったこっちゃない。
僕は、欲しい物は手に入れる。
草食動物の群れは、潰していく。
自分の思った通りに行動して、欲しかったら、手に入れる。
それが、僕だから。
だから、も手に入れたいんだけど・・・・・これが、なかなか上手く行かない。
「もうさ、認めちゃいなよ。僕が好きだって。君にとって、必要不可欠なんだって。」
「煩いわね・・・・坊や。」
呆れた顔をしたまま、が僕に近付いてくる。
どんどんどんどん、近付いてくる。
近付いて来たと思ったら、机に両手を付き、上体を僕の方へと更に近付けた。
一体、何をするつもりなのだろう。
キスでも、してくれるのだろうか?・・・・・・・・・・・・・なんて。
そう思った自分が、甘かったのだろうか・・・・・・・・。
「大嫌いよ。」
そういった。
至近距離から、笑顔でそう告げられた。
「・・・・・・。僕だって、傷付くときは傷付くんだよ。君、分かって言ってるの?」
「・・・・・どうかしら。」
「それに・・・・僕にだって、限界があるんだ。」
立ち上がり、彼女の腕を引っ張った。
引っ張って、自分の顔と、の顔を近付ける。
こうなったら、キス位・・・・・君の唇を奪わせてもらうよ。
モガッ
唇とは、違う感触が自分の口にあった。
よく見ると、は笑顔を作っていて。
よく見ると、の手が、僕の口に当たっている。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「風紀委員長の僕は、私の手とキスをしたかったのね。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・の方が一枚上手なのかな。
「キス位、良いじゃん。僕に君の唇を頂戴。」
「駄目よ。」
「頂戴。」
「駄目。」
「頂戴。」
「絶対に、駄目よ。」
「・・・・・・・咬み殺すよ。」
「いつも言っているけれど、咬み殺せるなら、やってみなさい。」
それならそれで、私は構わないわ−−−−−−。
気に食わなかった。
腹が立った。
ムカついたから、草食動物の群れを潰してやった。
それでも足りないから、他の群れも一掃してやろうかと考えついた。
そうすれば、スッキリすると思うから。
「坊や・・・・・八つ当たりは止めたらどう?」
「煩いよ・・・・全部、君が悪いんだ。僕を喜ばせたり、悲しませたり、嬉しくさせたり、変だよ。変な気分さ。
こんな風にしたのは、君なんだよ。君が悪い。責任取ってくれないなら・・・・・全部潰してやる。全部・・・・ぜん・・っ・・。」
あれ以上、言葉に出来なかった。
僕の口は、完全に塞がれていたから。
勿論、の手じゃなくて・・・・・・唇に・・・。
「・・・・・これで満足かしら。恭弥。」
「・・・・っ・・・な・・・まえ・・・。」
「あら、名前は嫌?ならば、一生風紀委員の坊やにしましょうか?」
「ちがっ・・・・だ、駄目に決まってるでしょ?名前で呼んでよ。」
「あらそう。で?苛々は治まったかしら。」
「・・・・・・・・・・?」
ふと気付いたら、苛々した気持ちが失くなっていた。
あんなに気持ち悪い気持ちは、吹っ飛んでいた。
「君、何したの?」
「キスをしただけよ。」
「・・・・・・・・それだけ?」
「他に、何かしたかしら?あぁ・・・・・・名前を呼んであげたわね。」
「本当に、それしかしていないわけ?ねぇ、嘘付いてない?」
疑っているわけじゃないけど・・・・・いや、何度も聞いている時点で、既に疑っているのかな。
あぁ、どうでもいいや。
は、凄い魔法でも持っている気がしてならないよ。
実際、持っているんだけど・・・・ね・・・僕限定で。
「、その魔法は僕だけに使ってよね。」
「仕方ないわね・・・・逆らいたいけれど、そうしてあげるわ。あぁ・・・・それから。」
それから。
それから、は言った。
僕に、嬉しくなる様な言葉を言ってくれた。
「流れに逆らって言わなかったけれど、大好きだから。忘れないで。」
・・・・・・・決めたよ。明日からは、恋人としてを迎えに行こう。
それが、明日から僕の日課に決まった瞬間。
・・・・・・絶対に逃がさないからね。